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2018年07月17日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 7-1)海外ツーリングは、お気軽な時代

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瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第7章:目指せ!海外ツーリング

7-1)海外ツーリングは、お気軽な時代

 

海外ツーリングというと敷居が高そうに思う人がいるかもしれないが、自分で海外旅行ができて、ある程度自転車ツーリングの経験と意欲があれば、誰でも楽しむことができる。
異国を知り楽しむには、交通機関を利用した点を結ぶ旅行ではなく、自分の足で移動しながら、線となり面となって、その土地の雰囲気、におい、気候、空気感、そして人々の営みや文化の移り変わりなどを、肌で感じることのできる自転車が旅を感慨深く広めてくれる。お気軽に海外ツーリングを満喫しよう!

 

<海外ツーリングの楽しみ>

輪行に慣れて日本国内をあちこち走り、いろんなサイクリングイベントなどを経験すれば、次のステップとして海外を走ってみたいという意欲が湧いてくる人も多いだろう。昨今、一般の海外旅行はとても簡単に行けて経験者も多いが、サイクリストなら海外を自転車で走りたく思うのは自然なことだ。海外の国には自転車環境が急速に整備されているところが増えている。ビギナーでも海外ツーリングは夢ではなく、簡単に手が届くところにあるのだ。

はじめはやはり治安の良い国、英語の通じる国、もしくは言葉が通じなくても観光客受け入れのインフラが整っている国、友人や知人が居る国といった中から候補を選ぶのが安心できるかもしれない。しかし旅に求めるものは人それぞれである。やはり自分の行きたいところへ行くのが一番だ。本や映画、ネットやTV、人から見聞きするなどして興味の湧いている場所があればそこへ行くことを目標にすれば良い。ツーリングの原点は人間の好奇心にあり、素直にそれに従うのが本能的に最も満足できるのである。

いきなり大陸横断や大山脈縦断、世界一周などの壮大な冒険旅行を目指すのではなく、海外ツーリングの手始めとして、休みの取れる数日間で、海外の都市やインフラの良いサイクリングルートなどを快適に走り、楽しむノウハウを考えて見たい。

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サイクリングロードの整備された国はたくさんある。思いきって海外に飛び出してみれば、とびっきりの非日常感を味わえるはずだ(写真/いより 淳一郎)

 

<言葉が解らなくてもコミュニケーションできる>

海外を旅するに際し、まず不安になるのが言葉の問題である。もちろん英語が話せれば先進国ならば何とかなる。しかし日本語以外の言葉が全くわからなくても、世界中どこへ行っても何とかなるのである。英語もロクに話せなかった筆者は、カラコルム山脈やヒンドゥークシュ山脈といった世界の屋根の僻地をツーリングしたが、自転車そのものがコミュニケーションツールとなって意思の疎通ができ、言葉にはさほど苦労しなかった。

交通機関を利用した海外旅行の場合、観光地や都会の人々は旅行者への対応に慣れているため、コミュニケーションにはあまり苦労しない。しかし自転車で郊外や田舎道を走る場合は、観光客慣れしていない、ある意味純粋な土地の人とのコミュニケーションが必要となる。クルマやバスで移動している旅行者に比べ、自分の力だけで移動しているサイクリストには土地の人々も優しくなる傾向があり、道を尋ねても親切に一生懸命に対応してくれることが多い。

身振り手振りと、日本語とカタコト英語交じりで必死で説明すると、相手も一生懸命に伝えようとしてくれる。気持ちが通じれば、尋ねた道だけでなく、他のいろんな情報を教えてくれたり、飲食物やおみやげをくれたりすることもある。そんな出会いが旅の思い出を深めてくれるのである。筆者はそんなきっかけで出会った方のご自宅などに泊めてもらったことも何度もある。

 

<必要最小限のコミュニケーション技術>

今やスマホを活用すれば、グーグル翻訳などで主要な国の言葉はほとんどが対応でき、スマホに日本語で話しかければ現地語に翻訳して喋ってくれたりもする。しかし訪問国の言葉は、基本的な挨拶などをある程度覚えておいたほうが良い。「ありがとう」「こんにちは」「さようなら」「すみません」「1,2,3,4、…」くらいのことは現地語で喋れば相手もグッと親近感を持ってくれる。

コミュニケーションのきっかけであり、これに身振り手振りのボディランゲージを加えて続ければ、相手もフレンドリーに接してくれるだろう。ボディランゲージは繰り返し行い学習すればどんどん上達するのであり、立派な世界共通の言語なのである!?

そして一番の武器は「笑顔」である。こちらが笑顔で接すれば相手も笑顔になり、好感を持ってくれるだろう。
少し込み入った話になり、ボディランゲージでは無理があれば、不足分をスマホの翻訳アプリで補えば良い。
自転車の旅は、現地の人々との交流を通じて異国の文化や生活に触れることに醍醐味がある。言葉の壁を乗り越えて、積極的にフレンドリーにコミュニケーションを図りたい。

中川 智宏
現地の人々とのコミュニケーションでは「笑顔」が最大の武器となる (写真/中川智宏)

 

<予算と安全の確保で、安心して行きたい>

海外ツーリングを目指すに際し、先立つものはどれくらい必要なのか? 自転車や装備、旅行用品などは別として、航空券や宿泊費、食費といった費用は通常のパッケージ海外旅行と大きくは変わらない。自転車ツーリングだからといってメチャメチャ高くなることはないのだ。かつては無銭旅行者がその手段として自転車旅を選んでいたのであり、貧乏自転車旅行者が多かったのである。
初めての海外ツーリングにはお隣の台湾や、ホノルルセンチュリーライドなどの海外イベントへの参加をお勧めする。費用は数日間で、台湾ならば数万~十数万円、ホノルルセンチュリーライドでも十数万~二十数万円である。

先立つものの次に気になるのは、安全と安心かもしれない。世界中どこへ行っても感じるのは日本の治安の良さである。つまり日本という国は旅をするにも、治安面では世界で最も安全な場所のひとつなのである。また世界的に見ても日本人は裕福であり、リスクへの構えも緩いため、狙われやすい存在である。それを良く認識して海外ツーリングに臨む必要がある。
いきなり治安の良くない、アフリカや南米などにサイクリングに行く人はいないと思うが、安全と安心の観点からも、初めての海外ツーリングにはホノルルセンチュリーライドなどの海外イベントへの参加や台湾ツアーなどがお勧めである。
リスクが小さくない地域での危機管理については、別途後日に詳しく述べるが、まずはリスクが小さく安心して行ける海外ツーリングを紹介したい。

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 海外ツーリングというとアフリカや南米などでの大冒険をイメージする人も多いかもしれないが、あくまで上級者向けだ。まずは、治安の良い国や海外のサイクルイベントに参加してみるのがおすすめ (写真/辰巳しずか)

<ホノルルセンチュリーライド>

海外ツーリングと言うと特別に大変だと思う人もいるが、参加する自転車イベントがたまたま海外で行われるとすれば、とても気が楽である。
このイベントへはJALをはじめ、多くの旅行会社からパッケージツアーが出ており、選択肢も豊富だ。
走行ルートはオアフ島の東海岸を北上してダイヤモンドヘッド、マウナルア湾、ワイマナロ湾等をはじめとする風光明媚な海岸線を走り、設定された地点で折り返すコース。設定距離は、25マイル(約40km)、50マイル(約80km)、75マイル(約120km)、100マイル(約160km)と、自分の経験や体力、当日の体調などに合わせて自由に選べる。
初心者や家族連れ、女性グループなど誰でも楽しめるファンライドイベントで、日本からの参加者が非常に多く、国内のイベント感覚で参加できる海外ライドだ。

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日本人参加者も多いホノルルセンチュリーライドは海外ツーリングデビューにもってこいだ(写真/ いより 淳一郎)

 

  • 事前の講習会

パッケージツアーの多くは海外ツーリング初心者を想定した、様々な参加者向けサポートを準備している。
日本出発前には基本的な自転車の乗り方から、走行コースのポイントやペース配分、大会当日までの練習・体力作り、ウェアやグッズの選び方などの講習会などを行っているツアーも多い。
現地に到着してからも、ハワイでは日本とは異なる環境、交通ルールでの走行となるため、セーフティー・ブリーフィングが行われ、日本語でわかりやすく解説していただける。
ツアー参加者にはこれらの講習は無料で受けられるのが一般的だ。
また、日本語オフィシャルサイトもあり、日本語ガイドブック、コースマップなどをダウンロードすることもできる。

 

  • 現地でのサポート

初心者でも安心して楽しめるよう様々なサービスがあり、ツアーによって内容に違いはあるが、無料や追加オプションで対応してくれるケースが多い。

・日本~ホノルルの往復フライトの自転車運搬サービス

・到着時の自転車組み立てと帰国前の自転車梱包サービス

・ホノルル空港と宿泊ホテル間の運搬サービス

・バスでのコース下見

・交通ルールやグループでの走り方を学べる試走会

・ホノルルでのメインテナンスサービス

・現地での自転車レンタルサービス

・イベントでの専用テント

・伴走サポートカー

・イベント前後の日程でのサイクリングツアー

・イベント終了後のパーティー

などなど、ツアーによっては様々なサービスやサポートがあり、初心者でも安心して参加しやすくなっている。
仲間同士で参加する人たちも多く、リピーターもたくさんいて、いろんなアドバイスをもらえたりもする。
また自転車ならば、観光旅行では訪れる機会が少ない、ハワイの風光明媚な風景の中を走れる。オプショナルツアーでも、自分でも仲間同士で企画してでもライドを楽しむことができる。
ホノルルセンチュリーライドは自転車初心者でも安心して参加でき、初めての海外ツーリングにはちょうど良いかもしれない。
ちなみに2018年は09月30日(日)開催で、8月末まで申し込みを受け付けているツアーが多いので、思い切って海外ツーリングにトライしてみては?

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ツアーに参加すれば、限定のサイクリングツアーなどにも参加できる(写真/ いより 淳一郎)

参考:ホノルルセンチュリーライド2018ツアー
http://plus.toptour.jp/bicycle/hcr/index.html (東武トップツアー)

 

<お手軽台湾ツアー>

海外のライドイベントへの参加は日程が縛られるが、自分の好きなときに自由にツーリングを楽しみたいのなら、最初は台湾がお勧めである。親日国であり年配の方や観光地のスタッフなどは日本語を話す人も多い。中国語は筆談でも通じるので、コミュニケーションも比較的容易である。

・日本から数時間のフライトで近く、LCCも充実していて安い。

・日本から毎年百数十万人以上が台湾を訪れており、日本人の受け入れ態勢は良く整っている。

・台湾全土でサイクリングロードの整備が急速に進められており、自転車インフラがドンドン良くなっている。

・台湾全周に鉄道網があり、普通電車は自転車をそのまま持ち込める。

・もちろん輪行なら、新幹線を含めすべての鉄道に乗せることが可能。

・日本と同様にコンビニがたくさんあり、値段も品揃えも日本に近い。

・イートインスペースのあるところが多く、サイクリングの休憩に丁度良い。

・スポーツバイクを含めレンタルバイクが充実している。

世界最大の自転車メーカー「GIANT」がレンタルバイクやサイクリングツアー事業に力を入れており、急速に整備拡充している。
サイクリストもとても多く、社会に自転車が浸透している感が高い。つまりどこへ行っても自転車が受け入れられて、ますますサイクリストが増えるという好循環になっている国だ。ちなみに、お勧めのツーリングエリアは次のとおり。

 

  • 日月潭

日本のしまなみ海道と並んで、アメリカCNNの旅行情報サイトにおいて、世界で最も美しいサイクリングコースベスト 10に選ばれた景勝地。
日月潭は台湾南投県にある深緑色の淡水湖で、「台湾のへそ」と呼ばれている。台湾3大観光地の1つで「国立風景区」に指定されている。周囲には文武廟、慈恩塔など名所旧跡も点在していて、約40km弱の周回道路は快適なサイクリングコースだ。
観光中心地である水社にはGIANTを始め多くのレンタルバイクショップがあり、手軽に借りてサイクリングを楽しむことができる。
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レンタルバイクショップも多いので、ぜひ一度は足を運んでみてほしい(写真/ 澤田 裕)

 

  • 淡水金色水岸

「金色水岸自行車道」は台北市周辺にある7つのサイクリングロードのひとつで、關渡宮を起点として淡水へ続く約7kmのコース。淡水は台湾のベニスとも言われており、サイクリングロードは台北市内からこの淡水河沿いに整備されている。川の河口部は淡水と海水とが混じり合い、マングローブ自然保護区の林が広がる。周辺は高層マンション群もあって人工物と自然の対比が美しく目を楽しませてくれる。
淡水付近の川幅は海のように広く、その風景は雄大で「金色水岸」の名にふさわしい景観をつくりだしている。磺港渓一帯は大都会の台北の近隣でも水田が残され、かつての日本の農村で見られたような素朴な風情に触れられる。

 

  • 標高3275m!台湾の国道最高地点である「武嶺」を目指す。

日本には無い3000m以上の峠にチャレンジできる。
台湾は九州と同じくらいの国土で3000m級の山が200座以上(日本は21座)あり最高峰の「玉山」は標高3,952mと富士山よりも高い。
標高3,275mの合歓山・武嶺を目指すルートは、世界的にも有名なヒルクライムレース「台湾KOMチャレンジ(Taiwan KOM Challenge)」も行われるコース。
ビギナーにはお勧めできないが、ヒルクライマーや坂バカサイクリストは是非挑戦してみては。

 

  • 「環島」台湾一周サイクリング

アワイチやビワイチなど一周が好きなサイクリストは、台湾一周サイクリングに挑戦することもできる。総距離は約1000kmほどなので、経験や体力にもよるが、10日から2週間あれば一周できる。鉄道利用などを組み合わせれば、数日から一週間程度でも可能だ。
1回の訪台で完走しなくても、何度かに分割してルートをつないで「環島」を達成することもできる。
ルート上の道路には、しっかりと「環島」の表示があって迷いにくく、インフラは整っている。

台湾交通部観光局が「台湾一周サイクリングガイド」という日本語ハンドブックも発行しているので、参考にしたい。

https://jp.taiwan.net.tw/att/files/%E8%87%AA%E8%A1%8C%E8%BB%8A%E7%92%B0%E5%B3%B6%E6%8C%87%E5%8D%97-%E6%97%A5%E6%96%87%E7%89%88.pdf

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台湾国内でも人気の「環島」。しっかりと道路標識があるので、安心して挑戦できる。ビワイチやアワイチを完走した方は次のステップにいかが?(写真/ 澤田 裕)

 

<自転車を持っていくか現地手配か>

初めての海外ツーリングでの悩みのひとつは、自転車をどうするかである。もちろん自分の愛車を持っていきたい気持ちは誰にでもあるだろう。しかし飛行機輪行は、航空会社や行き先の空港での荷物の扱いが粗雑な可能性があるため、通常の鉄道用の輪行対応では自転車を壊されるリスクがある。飛行機輪行については別途詳しく述べるが、空港までのアクセスや帰路の対応などを含め、慣れないうちは結構大変な作業になる。
ただし、JALとANAの日本の航空会社や国内の空港は、自転車の扱いは丁寧であり、壊されるリスクは小さい。しかし到着先の現地空港での扱いはその限りではない。

ホノルルセンチュリーライドや台湾ツアーならば、現地でスポーツバイクのレンタルは容易だ。しっかりとしたロードバイクがレンタルできることもあり、一週間以上続けてのレンタルができる場合もある。旅先のコンディションに合わせた仕様になっており、ポジショニングやフィッティングをきちっとすれば、快適なライドを楽しめるだろう。

またレンタルバイクとセットで自転車ツーリングを扱っている専門の会社もある。
現地での宿や食事の手配、コースガイド、荷物搬送サービスなどがパッケージになっているツアーもあり、初心者にはお勧めである。
ただし、まともなスポーツバイクがレンタルできる国は限られており、行きたい国のレンタルバイク事情は事前に良く調べておく必要がある。評判が芳しくなければ、自分の使い慣れている自転車をしっかりと輪行し、持って行くことをお勧めする。

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まずは普通に海外旅行に行った際にシェアサイクルを利用して、海外の道路事情を知るというのも良いかもしれない(写真/橘田旦)

 

昨今の自転車ブームにより、海外ツーリングを楽しむ人は増えている。受け入れる側も増加するサイクリストのニーズに合わせ、インフラの整備が進んでいるところが多い。
航空路線の充実やLCCなどの増加により、行きやすさも価格の手ごろさも一昔前からはずいぶん改善された。3連休が増えてそれに年休を加えれば、数日の海外ツーリングもしやすい時代になってきた。

元気なうちに行きたいところへドンドン行って、お気軽に海外ツーリングを楽しもう。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は7月31日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(トップ写真/橘田旦)


第7章:目指せ!海外ツーリング

1)海外ツーリングは、お気軽な時代

2)情報収集が成功の秘訣

3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

6)自分で自分の身を守る、危機管理が重要

7)ツーリング先進国、欧州を楽しむ

8)快適な自転車ライフを謳歌しよう

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