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2017年06月20日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-2)探究心に火が付く?ルート開拓

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!

4-2)探究心に火が付く?ルート開拓

 

ジテツウの楽しみ、それはサイクリングの楽しみと同様に、自分でドンドンと創造して行くことができ、奥が深く多岐に及んでいる。私はもう十数年以上ジテツウを続けているが、それでも毎日のジテツウが楽しみであり、今でも新たな発見やよろこびに出会っている。まずはルートを開拓して行く楽しみを紹介したい。

 

<休日に職場や学校まで行ってみる>

初めてのジテツウとなると何かと不安になり、時間に遅れないために、何処を何時に通過せねばならないといった緻密な計画を立てたくなる。

たとえ休日に自転車に乗っている人であっても、平日の朝にいきなりジテツウにトライするのは躊躇があるかもしれない。とくにビギナーにとっては不安もあるだろうから、まず初めは自分の街を走ることから始めるのがいい。そして隣の街まで、さらにその隣までと足を伸ばしてみれば、意外に簡単に行けてしまう。なんだこんなに近いじゃあないか! といった小さな感動と喜びがあるかもしれない。

そして職場を目指して進んでみるが、一気に行く必要はない。職場までは初めて通る道もあるだろうし、迷うこともあるだろう。地図上で走れると思っていた道が階段になっていたり、通勤通学の時間帯は歩行者専用になっていたりもする。信号が多くてストップする時間が長いケースや、交通量が激しくて安心して走り辛い場所もある。

そんなことを確認しながら、大まかなルートを考えつつのんびり職場まで行ってみよう。いろんなことを確認しながら走っていても、職場には案外簡単に着くように思えるものだ。

帰りはルートをあるていど決めて、実際のジテツウを想定して走ってみる。急ぐ必要も頑張る必要も無い。元気100%ではない状態でジテツウすることも考慮しながら、ゆっくりめに余裕を持って走ることが大切だ。そして家まで帰るのにかかった時間や疲れ具合を確認すれば、実際にジテツウをする際には、どんなペースで何処を通っていけば、快適に職場に着くことができるかが見えてくる。

 

<最短コースが良いわけではない>

初心者がジテツウのルートをプランニングすると、距離が最短になるように設定しがちである。時間短縮が目的ならば別だが、ジテツウには多くの楽しみがあり、目的はより短い距離を走る事ではないはずだ。仮に最短ルートを選んだとしても信号につかまりやすかったり、交通量が多くて安心して快走できなかったりで、決して時間的に最短になるとは限らない。大切なのは安全に快適に楽しみながら走ることである。ジテツウは決して時間やスピードを競うものではない。

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最短ルートだと思っていても、思わぬ迂回をさせられることもよくあることだ


 

<地図データでルートプランニング>

最近ではスマートフォンにサイクリング用のアプリケーションがあり、サイクルコンピューターの機能に加え、ルートの選択やリルートなどカーナビと同様の機能もある。GPS内蔵モデルならば、現在位置の経度・緯度・高度が分かるばかりでなく正確な方向、移動距離、速度、時刻など必要な情報を表示してくれる。ハンドルにこのスマートフォンを取り付けるための専用アダプターもあり、どんどん改善版が出ていて使い勝手も向上している。しかしコンテンツはまだまだベテランのジテツウ目線には届いておらず改善の余地がある。ジテツウの楽しめる快適なルートなどを的確にガイドしてくれるように、進化して行くことを楽しみにしている。

スマホやサイクルコンピューターが無くても、ルートプランニングはネットで検索エンジンの地図サイトや、国土地理院のHPのウォッちずなどを活用して行うことができる。縮尺は、最初は20万分の1程度で、大まかにどんな方向にどんな道があるか、どんなルートを取れそうかを頭に入れる。次に10万分の1や5万分の1、2.5万分の1などとどんどんクローズアップして行き、具体的に走るルートを想定するのである。

実際に走る際には、ネット地図のプリントアウトに想定ルートをいくつか書き込んでおいて、何枚かを持って行けば役に立つ。ルートプランニングのポイントは途中の目印になるランドマークをしっかりと押さえておく事だ。地図上に記載されている建造物や地形などである。わかりやすいのは名前表示のある交差点、川、橋、鉄道、高速道路、トンネル、バス停や駅、大きな建物や施設、ゴルフ練習場のネットなどで、ルート上のどこにそれらがあるかを頭に入れておけば、迷わずに走れる。

 

<現在地をつねに認識しておく>

ルートを開拓している時には、自分が今どこを走っているのかを認識しながら走ることが大切である。橋を渡っただとか、鉄道とクロスしただとか大通りを越えたといった各ポイントで現在地を頭の中の地図に照らし合わせていく。都会の風景は次々に変化があって楽しいし、確認のポイントも多いので初心者にはかえって走りやすい。但し確証がなければ必ず地図で現在地を確認しよう。

道に迷うことは良くあることだ。迷たって慌てることはない。一番良いのは人に聞くことである。地元の人の情報は確かだし、道だけでなく交通情報だとか、あそこに行くとこんなことがある、といった付加価値情報をもたらしてくれることも多い。道に迷うのは新発見のチャンスでもあるのだ。

 

<クルマの少ない道が走りやすい>

ルートプランニングのポイントは、いかにクルマの少ない走りやすい道を探すかである。交通量の多い幹線道路は快適には走れないのでできるだけ避けたい。ネットなどの地図を見ながら、住宅街の中の道、一車線の道、信号の少なそうな道、田園/畑の中の農道、川に沿った堤防の道、駅や繁華街から離れた道、大きな公園や大学キャンパスなどの周りの道などを探してみよう。そんな道を途切れ途切れでもつないで行くと気楽に走れるルート案ができあがる。

しかし、どんなに地図上で走りやすそうな道であっても実際に現場を走ってみると、歩行者が多かったり、意外にクルマの往来が激しかったりと快適でない場合もある。プランニングは実践に勝ることは無いのだ。

ベテランほどクルマの少ない静かで安全な道を選び、経験を積んで行くとこの道は走りやすそうだというのが感覚的に読めるようになる。

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幹線道路よりも一本外れた道の方が走りやすいケースが多い


 

<幹線道路よりも住宅街が走りやすい>

自転車の脇をクルマやトラックが飛ばして走る幹線道路は、怖い上に排気ガス臭いなど、快適に走りづらい。車線数が多くても路肩が狭い幹線道路や大通りよりも、車線数が少なくても道路の幅員が広く、路側帯がある道の方が走りやすい。

お勧めは住宅地の中にある生活道路である。クルマが少ないので排気ガスで汚れた空気を吸わなくて済む。信号も少なく静かで快適に走れることが多い。反面、歩行者の飛び出しや、ブラインドカーブも多いので要注意である。交差点は見通しが悪くて道幅が狭いので、先を予測しながらカーブミラーをしっかり見て安全を確認しながら走行したい。

 

【交通量の少ない道】

住宅街の道、一車線の細い道、信号の少ない道、旧道、田園/畑の中の農道、名前のついていない道、道路標識の少ない道、川に沿った堤防の道、駅や繁華街から離れた道、大きな公園や大学キャンパスなどの周りの道など

【交通量の多い道】

国道、県道、バイパス、幹線道路、産業道路、○○街道(甲州街道・水戸街道など)、○○通り、環状○号線など

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幹線道路には駐停車が多いこともネックだ


 

<商店街は面白い>

ジテツウルートの近くに商店街があれば、一度通ってみたい。昼間は人通りが多く自転車走行には適さないが、朝早くや夜遅めの時間帯ならば人通りは少ないだろう。クルマは進入禁止か、一方通行になっていたりしてあまり入って来ない。

商店街は様々な商店が軒を並べ、開店前や閉店後の店の状況にもそれぞれに個性がある。休日の昼間などに通ると、賑わいのある違う顔を見せてくれて、実はこんな店だったのかといった発見もある。商店街がルートにあればちょっとしたアクセントになって面白さが加わるのだ。お店が開いていれば帰り道に買い物をすることもできる。但し時間帯によっては買い物客が大勢いることもあるので、周囲の状況を良く見てスピードを落とすか、降りて押す必要もある。歩行者優先が絶対条件なので、場合によっては商店街を通らないなど臨機応変に対応したい。   

 

<池や川沿いのサイクリングロード>

ルート付近にサイクリングロードがあれば是非コースに組み入れたい。川沿いの道や池の周囲、海岸線などはサイクリングロードになっている所もあり、信号がなく、クルマも走っていないのでマイペースで安心して走ることができる。

水辺の道は自然が豊富で、野鳥がいたり川面に魚が見えたりと心が和む。但しサイクリングロードにはジョギングやウォーキングをしている人、犬の散歩をしている人などもいるので、他の利用者がいればスピードを控えて徐行しよう。

また、サイクリングロードは外灯がない場合が多く、夜間は他の道よりも暗いので、明るい高光度のライトを装着しておきたい。

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サイクリングロードをコースに取り入れられると信号もなくマイペースに走ることができる


 

<五感を研ぎ澄まして街を観察する>

自転車に乗って街を眺めると、見慣れた場所でも普段とは違った視点でいろんなものが見えてくる。例えばクルマや歩行者の流れに意味を見出すとか、交通標識などもその設置場所に周辺環境との関係が見えてきたりする。探検気分で裏道や路地、住宅街などいろんな道に入り込むと更に新しい道があったり、素敵なお店を見つけたり、小さな工房やギャラリーがひっそりと隠れていたり、名前を知っている会社や有名人の住み家があったり、可憐な花が咲いていたり、緑の気持ちいい通りがあったりとさまざまな発見と感動がころがっている。

面白そうなら立ち止まればいいのだ。街は自転車での散歩を歓迎してくれる。そして様々な街の横顔をどんどんと発掘していけるワクワクした気持ちを味わえるだろう。街を意識して見ることでジテツウの楽しみ方を知ることができるのである。

ジテツウであっても目的やテーマを持って走れば、能動的にテーマに沿った発見ができるだろう。例えば街中の花や街路樹などの植物をテーマにすれば新緑や紅葉のほか四季折々の表情が楽しめるし、朝と夕方で花びらの様子などに違いを見出すことができたりする。

 

<新たな発見にたくさん出会う>

知らない道を走っていると新たな発見に出会うことも多い。気になった店や、物があったらいつでも止まってみたって構わない。電車通勤だと駅と駅の間に気になる店・物があっても降りていってみようとはなかなか思わないだろうし、毎日見ていると何とも思わなくなってしまい、まさにレールの敷かれた人生のように、少しずつ無感情で鈍感になったりしてしまうが、ジテツウならばそんな事にはならない。

つねに周囲の状況に注意するのは安全確保のためだけでなく、観察や発見にもつながる。毎日同じルートを走っていても、興味をもって周辺確認をしていれば、何か新たな発見を生むのである。季節による変化や街の営み、日々の天候の影響や太陽の方向や高さが変わって行く事も感じる事ができる。見るだけでなく、触ってみたり、香りをかいだりすればますます好奇心が膨らみ、物事に敏感になれる。脳のリフレッシュにもなり、通勤時間が楽しく有効になってくるのである。

 

<ルートは固定しない>

数あるジテツウルートの中から選りすぐってベストコースを決めたとしても、毎日同じルートなら飽きるという人もいるかもしれない。ルート変更は自由であり何の制約もない。興味の赴くままにドンドンいろんな道を走ってみれば良いのだ。私は現在の自宅と職場の間を何年もジテツウしているが、いくつものルートを持っている。季節によっても気候によっても気分によっても、柔軟にコースを変えて毎日ジテツウを楽しんでいる。

帰路は寄り道することも多く、職場からいろんな所に行って、そこから自宅に帰ると毎回様々なルートを楽しむことができる。もちろん、ルートは職場から立ち寄り場所まで、そこから自宅までを事前に確認しておき、必要に応じてガーミンなどで確認しながら走っているが、積極的にいろんなルートを探索しながら走っており、新たな発見に出会うことも多い。ほんの少しの冒険だが、毎回ワクワク・ドキドキとちょっと興奮できるものだ。

ジテツウルートは何通りも自分で作って行ける。様々な発見や楽しみも自分でどんどん見つけて行ける。自分の意識次第でいつまでも楽しく続けることができるジテツウで、日々をヴィヴィッドに豊かにしていこう。

 

(写真/本人、小野口健太)

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は7月4日(火)に公開予定です。お楽しみに!)


第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!

1)自転車が毎日をイキイキさせる

2)探究心に火が付く?ルート開拓

3)遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!

4)ジテツウ用バイクと必須アイテム

5)安全第一!市街地、幹線道路の走行テクニック

6)ミニマイズ!事故を事前に回避する

7)迅速に!交通事故での対応

8)確実に!盗難対策と自転車保険

9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!

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