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2017年12月25日

「より安全な走りを。しかし事故が起きてしまったらどうするか」2017年度サイクルセイフティサミットが開催される

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メリークリスマス!! 12月25日(月)、2017年最後の週末にサイクルセイフティサミットが開催された。場所は川崎市・向ケ丘自動車学校。ここではサイクルセーフティサミット実行委員長である安藤隼人氏が代表を務めるスマートコーチングのイベントがコンスタントに行われている教習所だ。
今回、この場所をサミット会場として使うのは2回目。場所はいろいろとあるが、この教習所の設備が、いろいろな事故を想定してシミュレーションするのに最適だという。
平日であるにもかかわらず40人の定員はすべて埋まった。参加者比率はイベント主催者が13人、サイクリングアマチュアチーム関係者が4人、サイクルショップ関係者が3人、サイクリングガイド関係者が3名、そのほかが8名(ほか無回答)と、イベント従事者が多く占める割合となった。

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この研修はいわゆる、事故が起きてしまったらどうするか?という内容である。事故や落車を未然に防ぐ活動はスマートコーチングのセミナーで行なっており、いわゆる起きてしまった事故のファーストエイドの理解をより深くするためのものと、安藤氏。もちろん事故防止対策についての管理能力アップ、ならびに共有や横展開も行っていく。
突然現場でAEDはどこ? 使い方は? と問われても絶対に動けないし、探すこともできないだろう。目の前にあったとしても使えるわけはない。そこでこの研修でシナリオを通じたトレーニングを行うことで「AEDはなんなのか知る」ことができる。実際に使うときは出血もしているかもしれないし、肋骨が折れているかもしれない。つまりはトレーニングとはまったく別だろうが、何も知らないよりも知っているほうが、本当の現場での動きは確実に変わるはずだ。
経験者がいることで、頚椎損傷を防いだり、蘇生する確率はぐっと高まる。参加者も主催者もスポーツ自転車には大きな怪我をする危険性がはらんでいるスポーツだ、ということ認識したい。

実際にこのサミット受講者が手当を施し、順調に回復していったというケースも生まれている。ファーストエイドの重要性とは。サイクリストの多田尚史さんの例を聞いてみよう。
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「2ヶ月10日前、長野県富士見パノラマスキー場 クップドジャパンMTB大会で、マウンテンバイク・エリミネーター世界選手権は県代表選手権大会に出場していました。レースが始まる前の試走で事故を起こしたのですが、90cmの段差を飛び越えるというところで、失敗しまして、前転し、首から地面に着地しました。その際に頚椎の3番、4番、胸椎の圧迫骨折をしまして、信州大学に救急搬送されました。現在では、このように杖なしで歩行できるようになっています。事故が起きた時に、直後を走行されていた方が、東京都自転車競技連盟の指導員講習を受けていたと、さらにその講師の方がサイクルセイフティサミットの講習を受けられた方でした。私は25年の競技歴があり、ロードレース、MTBあらゆる競技にとりくんでおり、大きな怪我をしたことがなかったの自慢でした。いつ自分の身に降りかかるか、自分のチームメイトに降りかかるか。レースに参加しているときに、目のまえでそういったことが起きたら、自分はどういう行動ができるか」

 

このサイクルセイフティサミットの発起人の一人、安藤隼人氏(スマートコーチング代表、サイクルセイフティサミット実行委員長)に、このセミナーの趣旨を改めて伺った。
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「この研修は4年目、4回目の開催となります。自分も自転車でトレーニングをしているとき、交通事故で大腿骨を骨折し1ヶ月寝たきり、3ヶ月車椅子と、長い入院生活を強いられた。このようにかつて医療に助けられたことがある、そんな私自身の体験もありファーストエイドの重要性を広げていきたい。また山岳ファーストエイドにかかわっていたことも大きいですね。山など医療設備がない場所でどうやって人を助けるかということですが、自転車も事故が起きるのは医療がない山奥ということもありますから。”これは山岳ファーストエイドと同じだろう? いや自転車だから違う” ということで、自転車に特化したシナリオトレーニングができないかなと。現場のイメージができることが、本当の事故の時に役に立つと思ってやっています。野外のシナリオは教習所のような設備があると、よりリアリティがある。今回の参加者の多くはイベントに携わっている方が多いので、実際に事故に遭遇している人たちだから、イメージはしやすいでしょう。でももっと広げようと思った時にはイメージしやすくしないと。自転車は安全ではない。楽しいとは裏腹に危険をはらんでいるスポーツだから。落車させないためのスクールはスマートコーチングでやっているが、安全対策は単なる事業というわけではなくて、すべての主催者が取り組むべきものだと思いますし、お互いに共有しながら一緒に業界を盛り上げていければ」。

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ファーストエイドに必要なアイテム。ネックカラー(あるいは代用物)は頚椎損傷が疑われる場面では重要な器具となる

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レジメを見ながら座学を。しかし実際に体験するほうが数倍も飲み込むスピードが違う。

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いくつかのシナリオを創作する(参加者を二手に分け、それぞれ受傷側と保護側でシナリオを作る)、考えて行動するという概念も身につく

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写真の例では、頚椎保護、心臓マッサージ、AEDの確保、で1名のファーストエイドにつき3名が必要になる。さらに消耗の激しい心臓マッサージは交代で行うことが推奨されるため、さらに数人確保する必要がある。実際の救助のときは近くにいる人をどんどん巻き込んでいこう。

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AEDの使い方はやってみればそれほど難しくないが、いざ生体を前にした時に正しくできるだろうか。だが、訓練をしていなければAEDを使うという考えすら浮かばないだろう

 

みっちりと1日、このシナリオトレーニングを積んで得た見聞は横展開し、仲間へと伝播する。そしてさらに輪が広がれば、命を落とさずに、または怪我からの復帰の早期実現につながるかもしれない。知っていても損はないテーマだ。イベントを主催するという参加者はこのように話す。
「実際にやってみて、もっと疑問も湧いてきた。例えば心臓マッサージはいつまで続ければいいのか。どれくらいのテンポで? やAEDが見つからないときは? 救助する人間が一人の時は? など、今回やってみて、初めて知ったことや、まだまだわからないことがあるだろう。もっと知識を深めないとと思った」など、ファーストエイドについて知るきっかけとなる研修となったようだ。

この研修はは今のところ、年1回の開催だが今後もこの取り組みをさらに広げて続けていくつもりだ。

関連URL:http://www.smart-coaching.jp/

写真と文:山本健一

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