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2018年06月20日

【第15回Mt.富士ヒルクライム】元気があれば、雲を突き抜けて上れる!

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「富士の国やまなし 第15回Mt.富士ヒルクライム」が、6月10日、山梨県の富士スバルラインを舞台に開催された。天候が危ぶまれる1日だったが、第15回の記念大会も約1万人のサイクリストが日本一の山、富士山を五合目まで駆け上がり、今年も数々のドラマが生まれた。


 

サイクリストの思いを包み込んだ15年目の富士ヒル

大会前日の6月9日、受付会場の富士北麓公園に集まったサイクリストはみな、同じ思いで空を見上げていた。この日の朝は青空の中に富士山の姿が浮かび、初夏のさわやかな陽気だった。「この天気が明日だったらいいのに……」。しかし、時間が経つにつれて北麓公園の上空もしだいに雲に覆われてきた。

1週間前から毎日、週間予報をチェックしてきたし、つい先日、関東甲信地方が梅雨入りしたニュースも百も承知だ。それでも、スマホを取り出しては数時間おきに更新される天気予報を開き、雨の降りだす時間、何mmぐらいの強さなのかを調べてはため息をつく。昼までは降らなそうだという当初の予報は、いつしか早朝からの雨に変わった。前日の夜、大会本部では15回目にして初の中止の可能性も議論されたという。

それでも、この日のために何カ月も前から練習と準備を続けてきた健気なサイクリストたちは、富士山が見えるぐらいすっきり晴れてくれとは言わないが、せめて雨だけは降らないでくれと願い続けていた。

そうした1万人のサイクリスト、さらに運営スタッフや様々な関係者を含めればその倍の2万人には上るだろう人々の切なる思いが天に届いたのか、近づく雨雲を土俵際でちょっとだけグッと押しとどめることができたようだ。10日早朝には雨の降り出す時間が遅れるという予報に変わり、朝4時すぎには予定通りに大会を開催するとアナウンスされた。

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霧の中、メルセデスベンツの先導で15回目の富士ヒルがスタート

とはいえ、スタート前の会場周辺は数10m先ですら真っ白でまったく見えない霧の中。まるで、富士山全体がすっぽりと雲の中に入ってしまったかのようだ。しかし、下りは不安だけど、上っている間なら問題ないだろう。そうやって心を決めた1万人のサイクリストたちは、自転車イベントにはちょっと不似合いなアントキの猪木さんから平手打ちの闘魂注入をもらって、といってもビンタではなくハイタッチだが、スタートゲートをくぐり、24kmの己との孤独な戦いのため、真っ白な雲の中へと突入していった。

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スタート地点ではアントキの猪木さんが闘魂注入!

二合目あたりまで霧雨とも小雨ともつかない雨が早くも降っていて、気持ちもちょっとげんなりした。しかし、雨雲の層を抜けたのかコース後半はドライとなり、雨と汗で濡れたジャージもちょっとずつ乾いていった。

自分がどこを走っているかわからないような雲の中を延々と上ってきたけど、あきらめずにペダルを回し続ければゴールは近づいてくる。トンネルをいくつか超えると、次第に沿道の人の数も増えてくる。アナウンスのスピーカーの音が近づいてきたら、もうゴールラインだ!

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富士スバルラインは行く先も見えない霧の中、二合目までは路面もウェットだったが、サイクリストたちは黙々とペダルを踏んでゴールを目指す

しばらくすると、雲の中の五合目は人と自転車で溢れる状態に。自己ベスト更新に、はにかみながら笑顔を見せる。目標達成ならず本気で悔しがる。ライバルとの健闘をたたえあう。力を出し切ってへたりこむ。笑顔で記念写真を撮る。仲間のゴールを今か今かと心配そうに待つ。「富士山めろんぱん」を頬張る。五合目は、この15年間でおなじみになった表情と光景であふれかえっていた。

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景色は見えなくても、五合目は充実した表情のサイクリストであふれていた

主催者選抜クラスは、男女ともフレッシュな新チャンピオンの登場で沸いた。ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャを制したロードレース界のレジェンド、ペドロ・デルガドさんはチャリティーのため人生初の富士山を味わうように上っていた。日本のレジェンド、今中大介さんと片山右京さんは今年も闘志むき出しのライバル対決を見せてくれた。表彰式では、プレゼンターを務めた平昌オリンピック金メダリスト・菊池彩花さんのオーラに入賞者も見ていた人も圧倒された。ニセモノではあるのだが、会場を笑顔にしてくれたプロレス界のレジェンドも含めれば、富士ヒルがこの15年で競技の垣根を超えた一大スポーツイベントに成長しているんだなと勝手に感じたりもする。

心配された下山も一人一人が安全第一を心掛けてくれたおかげで、トラブルも最小限だったという。すっかり雨模様となった北麓公園で計測チップを返し、ちょっと七味がききすぎた吉田うどんをすすっていると、さっきまでの辛い思いも薄まって、来年は何kgやせよう、新しいホイール買おうかな、なんて早くも考えてたりする。

そんな思いを受け取って、16年目の富士ヒルもまた多くのサイクリストを迎え入れるのだろう。

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富士ヒル史上最高クラスのビッグなゲストが登場! ツール・ド・フランスを1度(1988年)、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1985年、1989年)を2度制したスペインの英雄ペドロ・デルガドさんだ。今回はデント病という難病のチャリティーのため、患者の子のお母さんと一緒に富士山を上った

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1996年ツール・ド・フランスに出場した今中大介さん、元F1ドライバーの片山右京さんのレジェンド対決。今年は右京さんに軍配。「右京さんはダイエットされてて、すごく体が絞れていた。僕も来年ダイエット頑張ります」とリベンジを誓う今中さん

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モデルでサイクリスト、もはや富士ヒルには欠かせない人気者の日向涼子さん。今年は1時間26分と自己ベスト更新ならず。「女子選抜クラスで出させてもらったけど、いい刺激になりました。今まで7回出て自己ベストを更新できなかったのは初めて。でも、来年に向けていいモチベーションになりました」

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東京都小平市のショップ「バイクラクラブ ミツイキ」のバイクルプラザレーシングチームのみなさん。「富士ヒルは10年ぐらいずっと出ています。今回は18人で参加しました」

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職場の仲間のチーム「ラルプデュエズ」のみなさん。「ブロンズ目指してたけど、ダメでした。チーム名は上の人が考えたんですけど、名前負けして重いですね(笑)」

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城北埼玉高校の自転車部のみなさんは、ブロンズ切りもいる強豪そろい「疲れました~(笑)。あと顧問の先生と他に3人がまだ上っています」

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表彰式でプレゼンターを務めたのは、平昌冬季五輪・スピードスケート女子チームパシュート金メダリストの菊池彩花さん。地元・富士急行スケート部に所属していた時に富士ヒルで2位にも入っている

 

主催者選抜クラス男子は田中裕士さんが新王者に 初開催の女子は望月美和子さんが制す!

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15年目の富士ヒルは、圧倒的なスピードを見せた田中裕士さんがヒルクライム新世代の王者に!

今年の富士ヒルNo.1を決める注目の主催者選抜クラス男子は、歴代王者を含む71人が出走。序盤から集団が半分以下に絞り込まれ、多くのライダーが代わる代わるアタックをかけて揺さぶりをかけるハイレベルな展開が繰り広げられた。

四合目で田中裕士さん(グランペール)、星野貴也さん(COW GUNMA)、そして2016年王者の森本誠さん(COKISO)が抜け出すが、しばらくして森本さんが脱落。最後は田中さんが星野さんとの一騎打ちを制し、昨年の記録を1分近く短縮する57分10秒のコースレコードで、初の富士ヒル制覇を達成した。

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四合目付近で集団から抜け出した星野貴也さん、田中裕士さん、森本誠さん(右から)が優勝を争う

「四合目下でひとりで抜け出したところに、森本さん、星野さんと足のある人が追いついてきてこれは勝ち逃げになるなと思いました。4合目を過ぎて森本さんが遅れたので、あとは慌てずに行きました。勝てるとは思ってなかったので、素直に驚きました。来年も楽しめて走れたらいいですね」と、クールな表情で田中さんはレースを振り返った。

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初開催の主催者選抜クラス女子を制した望月美和子さん

初開催となった主催者選抜クラス女子は、17人が出場。望月美和子さん((株)サギサカEgg’s)が、榎本美帆さんとの(MIVRO)との一騎打ちを制して初代女王となった。

「主催者選抜で優勝できて、とてもうれしいです。二合目までは一人旅だったんですが、追いつかれて最後はスプリント勝負になりました。過去2回は年代別で優勝はできてたんですが、総合では2年連続で同じ人に負けて2位だったので勝ててうれしいです」

 

「チームFR90」藤野さんのペースメイクでブロンズ達成!

90分切り(ブロンズ獲得)を目指すサイクリストのために、経験豊富なサポートライダーがペースメーカーとなって、みなさんを先導する「チームFR90」。今年のサポートリーダーは、なるしまフレンドの神宮店で店長を務める藤野智一さん。元ロード選手の藤野さんは1992年バルセロナ五輪代表、98年、99年に全日本チャンピオンを獲得し、引退後はブリヂストンサイクルチーム監督を長年務めた自転車界のレジェンドだ。

大会前日にはFR90に参加するチームメンバー約30人が顔合わせし、藤野さんからアドバイスが送られた。当日はところどころ雨が降り、霧で視界も悪い難しいコンディションだったが、藤野さんのペースメイクのおかげで多くの人がブロンズ獲得や自己ベスト更新を達成。藤野さんも「自分についてきてブロンズを達成できそうな人を4合目で見送った後、後ろから来る人を待ってサポートしました」と最後までメンバーを見守った。

五合目は霧でみんなバラバラになってしまたけど、落ち合えたメンバーは藤野さんとがっちり握手を交わしていた。

「藤野さんのおかげでずっとペースがつかめたので、88分から82分に自己ベスト更新できました」と小笠原豊さん。望月浩史さんも「ブロンズは達成できなかったけど、1時間33分と自己ベストを6分短縮できました」と満足そうな表情。1時間33分から1時間26分に短縮し、初のブロンズを達成した岡安純さんさんは「以前からFR90に参加しようと思っていたので、成果が出てよかったです。藤野さんにずっとついてもらってペーシングしてもらいました。最初は抑えめで大丈夫かなと思ったのですが、最後きつくなることを考えてのペースだなと感心しました」と藤野さんに感謝しきりだった。

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霧でバラバラになってしまったけど、藤野智一さん(右2人目)とチームFR90のメンバー

 

表彰式ギャラリー

 

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主催者選抜クラス男子

優勝:田中裕士さん グランペール 57:10.17

2位:星野貴也さん COWGUMMA 57:12.28

3位:板子佑士さん Liferide 58:22.42

4位:森本誠さん GOKISO 58:26.27

5位:中村俊介さん SEKIYA 58:27.00

6位:兼松大和さん TeamGreenRoad 58:31.76

7位:大野拓也さん OVERHEAT 58:34.94

8位:武田祥典さん 桜高軽音部 0:59:04.06

 

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主催者選抜クラス女子

優勝:望月美和子さん (株)サギサカEgg’s 1:12:56.40

2位:榎本美帆さん MIVRO 1:12:59.69

3位:宮下朋子さん TWOCYCLE/袴田塾/ 1:13:01.93

4位:近藤民子さん 晴嵐サイクリングクラブ 1:14:30.81

5位:高橋綾さん 上毛レーシング 1:17:33.70

6位:吉田鈴さん VCCBeziers 1:17:36.11

7位:袴田美香さん 1:17:47.98

8位:石井裕美さん シクロクラブ 1:17:52.28

 

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ブライテストホープ賞

男子:濱野巧勝さん おちんぎんれーしんぐ 59:16.39

女子:吉田鈴さん VCCBeziers 1:17:36.11

12歳~22歳の中で、もっとも将来性ある走りを見せた選手を主催者が選び、男女1名ずつ表彰するブライテストホープ賞。男子で受賞した濱野さんは、主催者選抜クラブでも11位。「11位なんでまだまだですね。今年22歳で、ブライテストホープ賞は最後のチャンスだったのでよかった。来年は選抜優勝目指して頑張りたい」

女子の吉田さんは2年連続受賞で、主催者選抜クラスでは6位。「今は大学の1回生で、自転車競技部に入っています。自転車は将来も続けたいですが、取材する方にもなりたいです(笑)。去年から順位が伸びなかったので、まだ伸びると信じて頑張りたいです」。抽選会ではKプロジェクトの軽量ホイールもゲットし、来年は飛躍が期待できそう?

 

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山岳スプリット賞

男子:倉澤公弘さん Forzi:k山梨 1:56.54

女子:宮下朋子さん TWOCYCLE/袴田塾/ 3:05.35

19km~20km区間に設定されたスプリント区間で最速タイムを記録した選手を男女それぞれ1名ずつ表彰する山岳スプリット賞。男子の倉澤さんは、「狙ってました。過去にこの賞を2回獲っているチームメイトがアシストしてくれました」とチームワークの勝利をアピール。女子の宮下さんは主催者選抜クラスでも3位入賞しているが、「山岳スプリット賞はまったく考えてなかったすごく驚きました。でもうれしいです」と予想外の受賞に笑顔。


男子12~18歳ジュニア

優勝:中野圭さん おちんぎんれーしんぐ 1:01:35.78

2位:牛尼真冬さん 1:03:35.85

3位:大野裕二さん OVERHEAT 1:05:51.97


男子19~29歳

優勝:布留川恒太朗さん 1:01:15.27

2位:井上周さん つくば鳥人間の会 1:01:16.60

3位:篠崎勇杜さん T-serv 1:01:42.37


男子30~34歳

優勝:佐川拓也さん あらかわZooRacing 1:00:04.07

2位:坂口裕芳さん 臨時漕会 1:01:06.52

3位:馬野寛士さん コマツ自転車部 1:02:17.92


男子35~39歳

優勝:岩島啓太さん MIVRO 59:50.54

2位:建部和礼さん SAKEVI 1:02:32.65

3位:小奈親弘さん 1:03:06.82


男子40~44歳

優勝:佐藤拓也さん 南雲堂 1:02:28.75

2位:谷 東さん 1:02:46.80

3位:石井章彦さん チームマリリン 1:02:53.17


男子45~49歳

優勝:池田康夫さん 1:03:53.09

2位:斎 理さん たたかえ!ホイジンガー 1:04:16.51

3位:山本敦さん 湘南浪漫 1:04:16.80


男子50~59歳

優勝:廣瀬伸次さん 市立長浜病院 1:05:40.54

2位:吉田勝彦さん 山下ゴム彩北練 1:06:26.33

3位:黒川隆之さん 1:07:19.19


男子60~69歳

優勝:松原弘典さん Euro-worksRC 1:16:16.41

2位:横山和夫さん チームオーベスト 1:16:31.91

3位:杉崎隆志さん 1:17:04.72


男子70歳以上

優勝:高山信行さん チームSUB3 1:15:56.41

2位:前田敏彦さん チームi(アイ) 1:34:13.01

3位:上口幸雄さん オッテモ 1:37:43.39


女子12~18歳ジュニア

優勝:日吉愛華さん リミテッドチーム846 1:27:39.00

2位:星野帆乃華さん 日本体育大学スケート部 1:30:59.24

3位:佐々木陽夏さん YGU 1:38:51.62


女子19~34歳

優勝:増田菜穂子さん Y’sRoad 1:12:44.11

2位:佐野歩さん Te am Gre enRoa d 1:17:32.04

3位:テイ ヨウフウさん 1:17:47.53


女子35~39歳

優勝:御処野好美さん 1:14:07.31

2位:新山里江さん RUSH 1:25:38.57

3位:鳥山訓世さん MIVRO 1:27:00.14


女子40~44歳

優勝:廣瀬博子さん Pedalist 1:17:11.22

2位:根本加陽子さん 1:24:12.71

3位:須山瑞季さん TANAKACORRERE 1:28:26.7


女子45歳以上

優勝:堺屋りつこさん 1:25:39.51

2位:本庄恵さん BLUE DRAGON 1:25:49.13

3位:河村幸子さん チームダックスフンド1:28:57.94


 

 

(写真/小野口健太、武智佑真)

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