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2018年01月06日

【輪行】いつかはやりたい海外サイクリング→そこで質問。輪行って簡単なの?

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UCIグランフォンドシリーズ初戦Spinneys Dubai 92」(スピニーズ ドバイ92@関連記事はこちらに参加するために、旅程のうちもっとも高いハードルとなるのは自転車の空輸=輪行だろうか。ハードケースタイプならいくらか安心感も高まるが、現地でのフットワークを考えるとできるだけ軽装でいきたい。信頼できる袋型となると選択肢は絞られてくるが、日本の市場としてはオーストリッチのOS-500トラベルバッグ一択となるだろう。これは思い描くような袋型の輪行バッグとは異なり、外部からの衝撃に備えて両サイドに10mm厚のウレタンを配置しているもの。さらに三折りすることができて、コンパクトなサイズに折りたためるという遠征に最適な輪行バッグである。国内の実業団チームなども多く使用しており、もちろん彼らのフィードバックも生きている。筆者の場合はこのOS-500と、薄手でボトルケージに収められるくらいに小さく携行性に優れている輪行バッグの2種類を用途に応じて使いわける。薄手のものは電車での移動が主な活用パターンである。
筆者のフレームサイズは57cmとロードバイクとしてはやや大柄なサイズだ。よって輪行バッグはサイズからまず選ぶのだが、MTB用のややゆとりのあるモデルを選んでいた。このOS-500のスペックは確かなものだったがサイズだけがネックであった。そんな中、サイクルプロショップ「なるしまフレンド」のオリジナル商品としてOS-500の全高を+5cm追加したモデルがあるということで、まさにフレームサイズの大きな筆者向きである。
「この5cmが効くんですよ」と言うのはオーストリッチ製品を手がけるアズマ産業代表の伊美哲也さん。スタンダードモデルの容積は232,470㎤ながら、全高+5cmとなると246,645㎤となり、フルに容積をいかせるなら14175㎤もの嵩増しが見込める。タバコの箱のサイズを111.32㎤としたとき、約127個も追加で収納できることになる。
OS-500はスタンダードモデルでも、シリアスレーサーに人気の商品であるという。ほかにも代理店カスタムカラーモデルなどもあって、ブラックじゃ目立たなくてイヤ! というユーザーのニーズに応えている。「限定でピンクを作ったこともあったけど、完売したね」と伊美さん。
なるしまフレンドオリジナルの+5cmモデルは今のところはブラックのみ。国内主要レースの時に使う際、OS-500ユーザーを多くみかけるので取り間違えないためにもすぐに判別できるようにステッカーを貼ったりネームタグを使うのはまさに必須。

さて、輪行して愛車を現地へ無事に届けるため、実際に今回のドバイで活用したいくつかの手法を紹介しよう。この中で伊美さんご推薦の、元ブリヂストンアンカーサイクリングチームで活躍した井上和郎さん(現在はバルバワークス ハクサンストア スタッフ)のブログ記事も参考にしています。その節はありがとうございます。

OS-500に限らず輪行の手順としては

◆バイクを分解する(サドルを外す→ハンドルを外す→ペダルを外す→前後ホイールを外す→リアディレイラーを外す)

◆緩衝材を付けて、適宜バイクに固定する

◆輪行バッグに詰める(付属品も入れる)

以上の3行程となる。正直に言うと、バイクを分解できるスキルがないとなかなかハードルが高い。しかしながら構造を理解して数回トレーニングをすれば誰でもできる技術といえる。女性の場合はフレームサイズが小さい方が多いので、分解するパーツも少なくて済む。たとえばサドルは抜かずに入るなら、わざわざ外す必要はない(破損などが心配なら外すのも手ではある)。

とはいえ、最近のスポーツバイクは構成するパーツの形状設計に大きく幅がある。基本的な構造は変わらないが、個性的なバイクが多いのも事実だ。機種によってはあれが外せない、これが無いとかザラである。特殊な形状のバイクは適宜調整してほしい。今回は比較的オーソドックスな仕様のビアンキ・オルトレXR4で輪行を行なった。それでもオルトレXR4に標準装備されるVISIONのハンドルバーはステム一体型となり、レギュラーなハンドルステムよりも輪行はしづらい。

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フレームやパーツの形状も多種多様だ。バイクの特性を考慮しつつ、スマートに輪行しよう

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青いOS-500(カワシマサイクルサプライ特注カラー)は従来サイズ。下は今回使用したなるしまフレンド特注モデルの+5cmモデル。結果的にこの5cmが大いに役立った

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今回使った梱包材たち。フレームを保護するのはショップなどで買ったり、戴けたりするフレーム保護材、フォークエンド&リアエンド保護棒、ハブ・アクスルの保護材を利用する。ほか固定用のフィルムロール、結束バンド、ストラップ、ウエスなど。薄手のマットなどもあるとフレームを包む保護材に使える

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この状態でバッグに収める。重要なポイントを以下で紹介。とても簡素にやってますが、上物な輪行バッグがあってこそ

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フォークの保護棒はそのままだと経験上、外れる可能性が非常に高い。だめ押しでフィルムロールで固定しておく。リアエンドも同様に

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手元変速機の場合、とくに電動変速機などはブレーキレバーが内側へ倒れないので、横方向から強い力がかかると破損などの心配もある。なのでブレーキレバーとハンドルバーを結束バンドで固定する。なおこの結束バンドは付け外しのできるタイプを使っている。ちなみに機械式でもこれをやっておくと安心だ

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リアディレイラーは台座(ディレイラーハンガー)ごと外すと安心。台座を固定するボルトはナメるとやっかいなので慎重に取りはずそう。ハンガーをクイックレバーのレバー部の突起で保護するというやり方もベター

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リアディレイラーは適宜収まりの良い場所に固定。今回はスポンジを巻いたチェーンステーに固定した。固定場所はディレイラーのケーブルワイヤーに負担がかからないように考慮すべし

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チェーンがたるんでいると輸送中に暴れてフレームを傷つけるのでアウターチェーンリングに入った状態にしてから、写真のようにリアディレイラーの台座と結束バンドを利用してテンションを張る。アウターギアをチェーンをかけたら外れないように結束バンドで止めるのもよし(今回はチェーンリングがエアロタイプなので、固定せず)。またギアの歯で輪行バッグや同封したものを傷つけにくくなる

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ステムを外すと多くのバイクはAヘッドなので、フォークがガタついてフリーになってしまう。ステムクランプ部分がずれないように、ステアリングコラム部にクッション材と結束バンドを利用して、ずれないように固定する。もっと丁寧にまとめるならスペーサーコラムをおなじ幅だけ挿入するという方法がスマートだろう

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最近のエアロロードフレームは、シートポストのクランプが別体であることがある。そのまま入れると紛失したり、組み立て時に探すのに手間取ったりするので、ポストと一緒にしておくとよい

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ホイールからクイックレリーズは外す。ホイールのアクスルはフレームに接触すると100%ダメージを与える意外なクセモノ。ここはショップなどでも買ったりもらえたりするエンド保護具を活用する。なければ幾重にも重ねた養生テープなどでもいい(スプロケットに軍手などを被せるとパーフェクト)

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バッグの両サイドにホイールを収めるスペースがある。+5smタイプだったからか、ホイールバッグを使っても十分に収まった! フレームが収まる中央部分には念のため、重ねたエアパッキンを敷き詰める。軽量だが一枚だと薄い。だけど重ねると頼りがいのある緩衝材になる

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ペダルやクイックレリーズなどは小袋にまとめて入れておく。輸送時に輪行バッグの中で暴れないようにしよう

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送り状入れにはアドレスや判別しやすいものを入れておくとよい

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注:バッグを担ぐときに使うショルダーベルトは、預けるときには外すこと。運送中にストラップが支柱などにひっかかってしまったことがあったそうだ

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現地にて開封の儀。チェーンリングは曲がることもあるので、ウエスで過保護に。フォークのエンドもチェーンも外れず、スマートに運ぶことができた。リアエンドをつける作業は、小さなボルトを扱うので野外だとやや危険で慎重になった。なぜなら落としてしまうと砂などの異物で汚してしまうし、紛失する可能性も高くなる。ボトルケージは外し忘れ。運良く破損セズ

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輪行は経験そのもの。慣れるととても簡単だし、やればやるほどスピーディに作業できるようになる。余談ですが、復路の作業は駆け足になったこともあり、やや梱包手順を簡略化しハンドルを外さずに収めてみることに。なんとすっぽりと入った(↑これはその状態)。推奨はしないが、+5cmが活きた瞬間。無傷で帰還した

 

 

OS-500誕生秘話
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アズマ産業代表 伊美哲也さん

ーーこの製品を作るきっかけは?

元々は世田谷にあったBMXの自転車ショップ、ワイルドキャットの故 平木康三さんが、こういったものを作っていたらしいんですね。お店はもう無くなっていて、そういったバッグがほしいというお客さんから三件くらい立て続けにウチに連絡がきたんです。最初に依頼が来たのは殿村秀典さんからで「おい、こういう同じようなものをなんとかせい」と(笑)。殿村さんには頭が上がりませんから、やりますよと。
同時期に丹羽さんというサイクルスポーツの編集者もオリジナルのそれを使っていた人で、こんなの作れないかなと相談を受けて、これはニーズがあるのかなと思って作り始めたんですね。それが2001年の事です。
最初はなんとなく、オリジナルに合わせて作ってみたけど、サイズを大きくしたり、形を変えたりして作ったら評判が良かったんですよね。雑誌の人たちも使ってくれたり、浅田顕さんのチーム(現エキップアサダ)の選手が使ってくれていたんですよ。これをみて「なんだそれは?」ということで注文をしてくれたのがブリヂストンアンカーだったんですよね。そこからチームに供給してほしいという流れになってお付き合いが始まったりました。

浅田さんが「やろう」って言ってくれてから、ずっとt使い続けてくれていましたね。その後は愛三工業レーシングだったり、ナショナルチームだったり、外国のチームからも依頼がありました。また、サイクルモードで出店したときに、ファン・アントニオ・フレチャ(スペイン国籍の元トップ選手)がブースに立ち寄ってくれて。このバッグを見て「これはいい」と。そのあとにも見にきてくれました。
そんなわけで、
そこそこウケがいい。アジアツアーの海外選手も何人か使ってくれています。アジアツアーを回る愛三レーシングが使っているので評判を耳にしたんでしょうね。

ーーひと言で言うとどんな製品ですか?

ソフトとハードの中間的な存在。初期モデルから値上げはしてないです。生地など原価は上がっていますけれど、こういうのを使う人には若い人もいるし、自転車に乗っている人って他のことにお金かけたいですよね。ここでセーブしたいって気持ちは、よくわかるので(笑)。あまり欲張らないようにしています。
もちろんハードケースのシーコンやイーボック、弊社のOS-1000トラベルバッグなど滑車がついたタイプのほうが保護性能は高いです。でもオーバーウエイトを気にしたり、家での保管場所などが欠点といえます。それを補うのがOS-500ですね。犠牲にするのは多少の強度。そのぶんは自転車に養生をしてくださいね、ということになります。クイックを抜きましょう、リアディレイラーを外しましょうなど、養生を施すことで、メリットが生かされています。オールインワンな輪行バッグというのは皆無といってもいいでしょう。ちなみに愛三の選手はこれにさらにフレームとホイールの間にお風呂マットを挟んでいると言っていました。発泡率がいいので、緩衝材としていいみたいです。

ーーサポートした選手からのフィードバックもありますよね

いろいろなノウハウがありますね。サポートをしているロードレーサーの西 加奈子さんや元プロの井上和郎さんのフェイスブックやブログを見ていると、ハンドルを切って固定してから、ブレーキを握って固定する方法が紹介されていますね。レバーが折れちゃうこともあるから。チェーンはアウターにかけておいて、隅っこを固定する。クランクもチェーンステーに結束バンドで固定すると完全にフィックスできるから、チェーンが外れる心配がない。ギア板から生地を守ることもできますよね。あまったチェーンはチェーンステーに着くと汚れてしまうので、その部分だけでも養生します。
カーボンフレームだったらボトルケージも外した方がベター。ケージの台座は結構強くて、ボルトが折れるのではなくて、フレームの根元から折れてしまう可能性もあるからです。
シューズをいれるんだったら、入れっぱなしではなくてフレームなどに結んでおくと暴れないです。
あとはディレイラーをはずしたときに、交換式のハンガーごと外しちゃうといい。だけど何回もこのネジの取り外しをするのはよくないと思う。西さんがやっていたのは、リアディレイラーだけ外して、ハンガーの部分にエンド金具のクイックを沿わせる。普通につけるなら反対側に向けるところですが、クイックレバーを盾にしてエンドを保護する形ですよね。これはすごく安心。
もちろん几帳面な人の例も。梱包材に①トップチューブ、②ダウンチューブ….とか名前を書いていたり。悩まないで装着できますが……ちょっと面倒くさい(笑)。でもやってみたら、アリだなとは思いましたね。

もちろん壊れてしまったということもあります。これだけ売っていますから、そのケースも使い方もいろいろです。肩からかける紐をそのままにして預けたらターンテーブルで引っかかってフレームを壊してしまったとか、アルミフレームを入れていたら、潰れて真円が楕円になっちゃったとか。それらはちゃんと連絡があって、悪いのはこちらだけど、そういうことがあったよと報告を受けたりします。

ーー当時からは変更はされていますか?

初期モデルから少しずつ変えています。両側に取っ手をつけたり、送り状やアドレスを入れたりするネームケースは元々は下にあったんですが、上に移したり。カラーバリエーションもいろいろ作りましたね。なかでも豊岡英子選手にピンク色を作ってほしいと言われ、50個作りましたがあっという間に完売しました(笑)。黒ばかりだとみんな同じになってしまうから。カワシマサイクルサプライさんは3色作ってくれています。こういうのもありがたいですよね。

 

 

OS-500トラベルバッグ

スペック
価格:22,000円(税抜)
材質:NL420D/PUC
サイズ:1350x870x210mm(なるしまフレンドオリジナルサイズ)/ 1350x820x210mm(車両収納時・通常版)
カラー:ブラック
重量:約2.0kg

関連URL:アズマ産業 http://www.ostrich-az.com/
なるしまフレンド http://www.nalsimafrend.jp/
カワシマサイクルサプライ http://www.riogrande.co.jp/
深谷産業 http://www.fukaya-sangyo.co.jp/
井上和郎さんブログ http://inouekazuo.blog.jp/archives/52120643.html

写真と文:山本健一

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