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2016年01月26日

3モデル インプレッション VOL.8/GIANT PROPEL ADVANCED SL 1(エアロロードモデル)

GIANT / PROPEL ADVANCED SL 1

2014年モデルとしてリリースされた、プロペル。2013年の夏にローンチが行なわれ、当時はジャイアントがエアロロードをリリースした! と大きな話題となった。グランツールではトップスプリンターたちの多くの勝利に貢献し、3大ツールすべてで区間優勝を成し遂げている。ジャイアントに携わるエンジニアが手塩にかけたプロペルは、ライバルメーカーがニューモデルをリリースする中でどのようなイメージになったのだろう?

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PROPEL ADVANCED SL1■フレーム:Advanced SL-Grade Composite ISP■フォーク:Advanced SL-Grade Composite、Full Composite OverDrive 2 Column■試乗車のコンポーネント:シマノ・デュラエース■ブレーキ:GIANT SPEED CONTROL SL Titan Bolt■ホイール:ジャイアント・SLR0エアロカーボン■完成車実測重量: 6.9kg(ペダルなし)■カラー:ブルー×イエロー■サイズ:680(XS)、710(S)、740(M)、770(ML)mm■価格:630,000円(シマノ・デュラエース完成車、税抜)、330,000円(フレームセット※カラーは異なる、付属品:専用ブレーキ、ライドセンス OD2カーボンスペーサー、税抜)

 

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BBはプレスフィット86を採用する。シートチューブのカットアウトも大胆。

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ダウンチューブはボトルを装着することも考慮した上での空力デザイン。

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プロペル専用設計のエアロブレーキ。あつらえただけあってバックステイと同化した形状。アーチはアルミ製で剛性十分。

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インテグレーテッドシートポスト。キャップ式のやぐらは専用のカラーを入れることで、若干の高さ調整が可能。

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トップチューブ突端からはシフトケーブルを挿入する穴が空けられる。

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フロントブレーキもプロペル専用設計だ。

 

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トータルバランスの良さゆえの苦悩●菊地武洋

ヒルクライムを苦ともせず、平地をタイムトライアル的に走るのも、ゴールスプリントも得意種目。しかも、スタイリングの評価も高い。もしプロペルが男だったら、挙げ足の1つもとってやりたくなるようなヤツだ。エアロバイクにオーソドックスという言葉が適切か疑問はあるが、フレーム形状は奇をてらうことのない王道をゆくものだ。フレームの前面投影面積を小さくし、いかにも空気抵抗の小さそうなスタイリング。この雰囲気だけでも好きになる人がいるのもうなずける。エアロバイクなので基本コンセプトは空気抵抗を低減することだが、今やタイムトライアルだけではユーザーは満足しない。そこが最新エアロバイクを開発する上でのむつかしさだ。それもどうかと思うが、製品を開発するならハードルは高いほうが面白い。価格を含めて、性能評価をレーダーチャート方式でやると高い評価を得られないとユーザーから合格点はもらえない。その課題を上手にクリアしていると思うが、バランスのよさゆえに、特化し切れていない感じもする。たとえて言うなら、1ステージも勝たず、ステージレースで個人総合優勝をしちゃう。そんなもどかしさもある。ライバルのエアロ系バイクと比較すれば劣っていない。それでもトータルバランスに優れているため、ブレーキ性能や整備性の弱点が気になる。高い巡航性能が光るバイクなので、スピードの変化で勝負するロードレースよりもロングライドのような使い方のほうが魅力が引き立つだろう。

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思いのままに操れるコントロール性●小高雄人

フォークとフレームの横剛性のバランスが良く、一枚岩の板に乗っているようながっちり感があった。エアロ効果によって高められた直進安定性もそう感じさせる要因であろう。コーナーリングなど、バイクを倒すような状況でも安定しており、余裕をもって旋回できる。BB付近の剛性感はそこまで高くはないが、そのぶん高ケイデンスから高トルクまで幅の広くペダリングパワーを受けとめてくれる。上りでの走りもそこまで重さを感じず、かえってほどよく感じる重量によって、ダンシングするには安定していて扱いやすかった。サーキットレースやクリテリウムなど平坦区間が多いシチュエーションでもっともバイクの性能を引き出せるだろう。専用のVブレーキの効きも問題なく、自分の思い通りのコントロールができた点も良かった。

 

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すべてをエアロにつぎ込んだ潔いバイク●山本健一

2013年に“14年モデル”として初お披露目されたジャイアントのエアロロード。ワールドツアーで20勝以上の勝利に貢献しているというモンスターバイクだ。早いもので3シーズン目となるが、外観に大きな変更がないのは2年以上という十分な時間をかけた開発によってもたらされたものだろう。TCRもリニューアルを果たした今日において、そろそろ変わり時かな……とも勘ぐらせるわけだが、3シーズン目の試乗となった今回でもプロペルはやっぱり“らしさ”を失っていない。エアロロードながらも軽やかに颯爽と走れるレスポンスの良さがあった。これは平坦はもとより上りでも発揮されていて、パワーロスがとても少ないという印象は初めてまたがったときから変わらない。剛性感は高剛性というよりは、しなう柳のようないなすイメージがある。ハンドリングはTTバイクよろしく直進安定性が高い傾向にある。ブレーキ性能はVブレーキタイプという構造的な理由もあり、デュラエースのキャリバーブレーキと比較するのは酷という話。とはいえ年々その形状設計は煮詰められてきていて、個人的には現在もっとも洗練された状態にあるといえる。なにかに秀でたゆえに失ってしまうものがあるというのは、ナニガシ保存の法則とやらだろうか? 否、プロペルに関していえるなら、“エアロに取込んだ”というべきだろう。スタイルはシンプル イズ ベストを突き通し、メンテナンスのしやすさという意味では汎用性も高い。帯同するメカニックがいるわけではない一般サイクリストにとっては意外に親しみやすいエアロロードともいえる。

 


(写真:和田やずか)

ジャイアントのお問い合わせ先:ジャイアント TEL:044-738-2200

http://www.giant.co.jp/giant16/

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