2017年10月16日
【2018 NEWプロダクツVOL.7】FELT FR2 DISC
FRシリーズはレースバイクシリーズとして発売されていたFシリーズのDNAを引き継ぐレースバイクだ。Fシリーズと異なるのはヘッドチューブを4%伸ばし、5%のもの軽量化に成功。ラインナップはフレーム販売のFR FRDフレームキットを筆頭に完成車が9モデル、FR2 DISCはカーボンフレームにアルテグラDi2を標準装備するセカンドモデルとなっている。DT製ホイールやローター製クランクなどマニア好みのスペックを搭載しつつ、エリートレーサーからホビーレーサーまでを満足させるハンドリングと快適性を備えている。
スペック面から見ると、FR2 DISCはトレンド満載の1台だ。混迷を極めていたBB規格の中から頭一つ抜けた存在になりつつあるBB386の採用を筆頭に、フロントブレーキのローター径を160㎜、タイヤ幅を28㎜にするなど、次世代標準として期待されている規格をフルにスペックインしている。ジオメトリーはチェーンステーを短くしてスプリントやダッシュしたときの反応性を高め、優れたハンドリングを実現するためにフレームサイズごとにヘッドセットのロワーベアリングのサイズを最適化している。
SPEC
Headset FSA インテグレーテッド、43-47cm:IS-21、1.125″、51-54cm:NO.382、1.125″- 1.25″、56cm:NO.42、1.125″- 1.5″
Stem 3T ARX II Team Stealth、±6°ライズ、Ø31.8mm、43cm=80mm、47-51cm=90mm、54-56cm=100mm
Front Derailleur Shimano Ultegra R8050 Di2 直付式
Rear Derailleur Shimano Ultegra R8050 Di2、ショートケージ
Crankset Rotor 3D30 UBB5、52/36T、43-47cm=167.5mm、51cm=170mm、54-56cm=172.5mm
Bottom Bracket Token BB386 with 30mm bearings
Freewheel / Cassette Shimano 11スピード、11-28T
Brake Levers Shimano Ultegra R8070、油圧式
Front Brake Shimano BR8070 油圧式ディスク、160mmローター
Rear Brake Shimano BR8070 油圧式ディスク、140mmローター
Saddle Prologo Nago Evo PAS TiRox
Seat Post 3T Zero 25 Team Stealth、Ø27.2mm x 350mm
Seat Post Clamp Felt、Ø30.6mm
Rims / Wheelset DT Swiss FC1600 carbon、チューブレスレディ、15mmワイド(内幅)、28mmハイト、1490g (ホイールセット)
Front Hub DT Swiss 350 Straight Pull、12 x 100mmスルーアクスル、センターロック
Rear Hub DT Swiss 350 Straight Pull、11スピード、12 x 142mmスルーアクスル、センターロック
Spokes DT Swiss Competition 2.0/1.8/2.0
Tires Vittoria Rubino Pro G+ folding、700 x 25c
Accessories Felt アーレンキー式スルーアクスル
価格:598,000円(税抜、完成車)
GEOMETRY
ディスクブレーキ化にともないシートステーブリッジは廃され、形状の見直しによってシートステーの動きが改善されコンプライアンスは12%向上したという
ケーブルは内蔵式でトンネルエンドはシートステーに。ダブルテンションのRメカでは心配ないが、シングルテンションのRメカのときはケーブルの長さ調整に気を配る必要があるだろう
しなやかなで快適性の高い走行感だが、パワーロスにつながる駆動部のウイップを抑えるためBBは強固なBB386規格が使われている
フェルトの誇る最高級カーボンテクノロジー“UHC Advanced+TeXtreme”を採用。繊維密度が高く、樹脂の含浸比率が低いため軽くて強度を高めることができる
市販モデルはアルテグラの油圧ディスクブレーキBR-8070が装着される。ローター径は制動力が高く、放熱性にもすぐれる160㎜を採用
ブレーキホースはクラウンからブレードを貫通する内蔵方式。コラム径はフレームサイズによって下側のベアリング径を変える異形断面
IMPRESSION
オーソドックスなフォルムながらも◆山本健一
FELTのFRシリーズといえば、レーシングなオールラウンドなバイクだ。そして見てわかるようにシンプルなスタイルを貫くラインナップといえる。むしろARシリーズや、VRシリーズといった特化型のラインナップがあってこそともいえる。
シンプルながらも優れたパフォーマンスを発揮する、というのがFRシリーズの存在意義である。そのピュアレーシング性能をしっかりと受け継ぐのがFR2DISCだろう。完成車重量7.1kg(ペダルなし)という軽さも魅力だ。ディスクブレーキを搭載していることを考えるとかなり頑張った。
やや快適性を重視したか、あるいはバックステーのブレーキ台座=ブリッジを省いたことによる影響か、しっとりとした印象がある。いい意味でしなやかだが、一発の加速を求めると、やや物足りなさを感じるかもしれない。しかしながら全体的なバランスは良く取れている。特にフォーク剛性が自然な印象なのはいい材料。ディスクブレーキ化すると、従来の剛性よりも高くなる場合が多々見受けられ、必要以上にピーキーになったり、横方向の弱さが目立ってしまったりするからだ。ハンドリングは直進安定性が高い傾向にある。
タイヤは700×28cまで装着できる。悪路走行用のタイヤも種類によっては装着可能なので、グラベルライドなどもこのバイクで楽しむこともできるだろう。レーシングながらも遊べるという今時のバイクだ。
分を知り、実用領域の性能に特化した◆菊地武洋
FR2 DISCはとてもいいバイクだ。最高級のレーサーと比べれば敏捷性に劣るものの、自転車を“操る”楽しみがある。FRシリーズが掲げたハンドリングと快適性の向上はレーサーだけでなく、万人に求められる性能だ。結果、平地やダウンヒルで路面の細かな振動を気にせず走れるし、疲れにくいと言い換えてもいい。ということは、楽しい時間の長い自転車だと言ってもいいだろう。
ただ、残念ながらハンドリングはレーシーとは言えない。中低速コーナーが連続するようなツイスティなコースでは、アンダーステア気味でスタビリティ不足と感じる人も少なくないだろう。ただ、フレームの性能を出し切ってコーナーを抜けていく感じは、古典的ではあるが非常に面白い。絶対性能を向上させれば体感速度は遅くなるものだ。それが時として面白さを排除してしまうこともある。FR FRDフレームであればスタビリティ不足は解消しているだろうが、FR2DISCにはライディングスキルとバイクの限界を出し切る楽しみがある。この洒脱な魅力はベテランならわかってもらえると思う。
このバイクは……
レース、エンデューロ向け。
ディスクブレーキを搭載した軽量ロードバイク。チャレンジングなロングライドにもってこい。
東京エンデューロin彩湖
富士チャレンジ200
グランフォンド八ヶ岳
関連URL:ライトウェイプロダクツジャパン https://www.riteway-jp.com/bicycle/felt/bikes/fr2_disc_8071/
写真:編集部
文:菊地武洋、山本健一
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。