2018年05月01日
【PROJECT 75 富士ヒル・シルバーへの道】Vol.2 田代恭崇さんにヒルクライムの走りをチェックしてもらおう!
今年で15回目を迎えるMt.富士ヒルクライム(6月10日開催)で、俳優・芦田昌太郎と当サイト編集長コタカが75分切りのシルバーリングにチャレンジする企画「PROJECT 75」。サポートするのはアテネ五輪・自転車ロード代表の田代恭崇さん(リンケージサイクリング代表)。今回の舞台は箱根・大観山。田代さんと一緒に上って、現状の走りをチェックしてもらった。
ここまでのトレーニングの成果は?
ヒルクライムの実践練習に入る前に、これまでの2人のトレーニングの進捗状況をチェック。第1回のミーティングから約1カ月半、2人は田代さんが作成したメニューに取り組んできた。基本的な内容は、LT走を組み入れたローラー台のメニュー1時間を週2回。LT走とは、有酸素運動と無酸素運動の境界となる乳酸閾値の心拍でこぐ練習のことで、長時間のスピード能力向上を目的としている。1時間の練習とはいえ、2人にとってはかなりきつかったようだ。これに加え、実走でのヒルクライム練習もそれぞれ仕事の合間に行ってきた。
実走練習も順調にこなしている芦田さんは「まず、もらったメニューがきつかったです。本番まで時間がないから最初からきついメニューと言われていたけど、本当にそうでした。成果は確実に出ています。同じ心拍、同じケイデンスでもスピードは上がってきています。体が慣れてきた証拠ですね」と効果を実感している。
もともと絞れていた体重はさらに2kgほど落として54kg前後、体脂肪率も6%台とクライマー体型になり、「体は圧倒的に軽い。パワーが落ちないで絞れてる気がします」と順調そうな様子。
一方、この企画の言い出しっぺであるコタカは「基本的に朝の出社前に与えられたメニューを実践しています。その日のコンディションによって、心拍の上下動に差があったり、気持ちよく脚が回る日があれば、そうでない日もありますが、なんとかこなせています。1時間ローラーに乗るということ自体が最初は苦痛でしたが、今は慣れてきました」と話す。
実走は芦田さんほど回数はこなせていないが、「ローラーでの練習中は練習成果が分かりにくいですが、週末の実走時に徐々に走れるようになってきていることを実感しています」とちょっとずつ手ごたえを感じつつある。課題の体重も約2kg減って68kg前後となったが、本人としてはもっと減らしたいところ。
こうした練習内容や体重をSNSでシェアしてお互いに刺激しあい、田代さんからも適宜アドバイスをもらいながらここまで進めてきた。
田代さんの練習メニューを実践し、確実に成果が出ている芦田さんとコタカ。この日は、ヒルクライムの実践練習で力試し
大観山ヒルクライム 今の実力を把握しよう
というわけで、この日は田代さんと一緒にヒルクライムの実践練習。コースは神奈川県の湯河原町から箱根・大観山に向けて上る椿ライン。サイクリストにも人気のコースのひとつだ。
田代さんはここを仮想・富士ヒル(距離24km、平均勾配5.2%)のコースとして設定。頂上から12km下がった地点をスタート地点にして2本上ることで富士ヒルと同じ距離を走り、タイム計測。ちなみに平均勾配は5.7%と富士ヒルよりやや厳しい。
「今日の練習では、2本走ってどのくらいのタイムが出るか今の力を確認しましょう。他人のペースに乱されず、自分のLT心拍で上ってみましょう」と田代さん。
芦田さんとコタカの2人も、ここ大観山には2度練習に来ているなじみのコースで、「大観山は勾配が比較的一定で途中平坦区間もあるレイアウトが富士スバルラインに似ています。路面も綺麗なのがいいです」とコタカも走りやすさを実感している。4月半ばのこの日は天気もよく、風も穏やかな好コンディション。頂上付近は10度前後とやや肌寒いものの、かえって富士ヒルに近いシチュエーションとなった。
田代さんが2人の走りをチェックしながら、ヒルクライムスタート! トレーニングメニューのおかげで、2人とも今の力を出し切れたようだ
3人は1本目を上り、補給を済ませて下山した後、すぐさま2本目に突入。タイムは以下の通り。
芦 田:1本目46分36秒 2本目49分37秒 計96分13秒
コタカ:1本目47分21秒 2本目52分25秒 計99分46秒
久々の20km超のヒルクライム、さらに芦田さんは花粉症に苦しみながらとタイム的にはまだまだだったが、田代さんは1本目のスタート直後のオーバーペースを指摘していた。
「1本目の前半からペースが速かったかもしれない。これでは2本目にタレるのはしょうがない。本番でも前半から突っ込みすぎないようにした方がいいでしょう」
芦田さんも「1本目スタートして5、6分でおしりがパンパンになりました。ケイデンスも1本目の中盤から落ちてしまいました。前半突っ込みすぎでしたね」とあらためてペース管理の大事さに気づいたようだ。
本番まで残り2カ月で課題も見えてきた。というわけで、次からは2人の練習の悩みについて田代さんと一緒に考えていく。
景色も路面状況もよく走りやすい大観山のコース。勾配も富士スバルラインと近い
前に蹴り出すペダリングは、ダンシングで修正
ヒルクライムのペダリングについて、芦田さんは以前から「疲れてくると前に蹴ってる感覚がある。走りもよれている気がする」と悩みを抱えていた。
また田代さんからはコタカの走りを見て「後半疲れると、体重がある分だけ重力で座り位置がサドルの後ろに下がっている。そうなると芦田さんと同じく前に蹴り出すペダリングになって、スピード落ちがち。かといって前過ぎるのもよくない」と指摘する。
その対策として、短時間のダンシングを挟んで再びサドルに座り直すと、最適な位置に落ち着くとのこと。
「一度ダンシングすると正しい重心位置がわかりやすいので、座る位置をリセットできる。ダンシングを入れてもスピードは落とさないようにしましょう。長時間やる必要はなく、長くても10秒ぐらい。強度は、心拍数が5上がるぐらいで、あくまで座る位置を確認するためのダンシングです」
また2人ともダンシングすると、ハンドルに体を預けてしまう傾向があった。これに対し、田代さんは「ダンシングで体が前に行き過ぎると、ヒザが落ちて力が抜けてしまう。腰の位置が適正な場所にあるか意識しましょう」とアドバイスした。ローラー台の練習では、前輪の下に雑誌を挟んで勾配をつけて、上りでの重心位置になれておくというのも手だ。
①注意 シッティングで上るとき、サドルに座る位置が後ろに下がると前に蹴り出すようなペダリングに。力が入らず、スピードも上がらない。
②理想のフォーム 意識して少しサドルの前の方に座ることで、ペダルを重心から真下に踏み下ろすかたちになり、パワーが伝わりやすく疲労も軽減される。
③対策 ①のように座る位置が下がったり、ペダリングが前蹴りになっていると感じたら、ダンシングを短時間挟んで重心位置を確認。再び座れば、②の適正なフォームになる。ダンシング時の重心はペダルの上に来るように。
④注意 ダンシングのとき、前のめりになって体重をハンドルに預けると、ヒザが落ちるようなペダリングになってしまい、力が伝わらない。
⑤対策 その2 シッティングのままサドルの座り位置を修正するには、腕をコンパクトに折り畳み、頭が進行方向に引っ張られるようなイメージで、重心を移動する。写真は田代さんからアドバイスを受けたコタカの走り
練習中の悩みを相談
<体が疲れているときも練習は続けていい?>
順調にトレーニングを消化している芦田さんだが、練習強度が上がるにつれ疲労もとれにくくなっているとか
ここからは、日々の練習で抱えている悩みを田代さんに相談。芦田さんは、パワーアップのため田代さんからアドバイスされたケイデンス40回転の筋力強化メニューを組み入れ、「この1カ月ちょっとでだいぶ脚に筋肉についたという実感はあります」と効果を感じているが、同時に疲労もたまりつつあるようだ。
芦田さん「メニューの強度が上がるにつれて、身体へのダメージも増えてきました。なるべく超回復の時期を狙っていますが、タイミングが合わない時や筋疲労が残るときは何をするのがベストでしょう」
田代さん「普通に仕事している人なら、多少疲れていても回転系の中強度の練習はやったほうがいい。そのほうが力がつく可能性があります。メニューはわずか1時間だし、心肺の疲労はこなす方がかえっていい場合がある。ただし、筋トレ系のメニューは外してもいいでしょう」
芦田さん「実走での練習中にハンガーノックになりやすいんですが」
田代さん「走っているときは、カロリーを摂るのが難しい。ボトルにはBCAAなどアミノ酸系を水に溶かしていれましょう。ボトルを2本持つならBCAAと水。ハンガーノックになりやすいなら、エナジー系のジェルを水に溶かすのもいいです。どうしてもボトルの中身が水がいいなら、途中で必ずジェルを摂るようにしましょう」
芦田さん「練習後、回復のために摂るべきものは?」
田代さん「プロテインは体内で分解する必要があるので、アミノ酸系の方がいいでしょう。練習後、30分以内にアミノ酸とゼリーなど消化が早い炭水化物摂りましょう。もちろん自分の体に合うのであれば、プロテインでもかまいません。練習後の食事は消化のいいもの、炭水化物、たんぱく質が入っているもので。親子丼とかでもいいですよ」
芦田さん「富士ヒル当日の補給はどのようなものを持っていけばいいでしょう」
田代さん「スタート前にお腹が減る場合もあるので、エナジージェルを1本摂っておく。走行中はBCAAなどのジェルを1本背中に入れておきましょう」
ハンガーノック対策は、ボトルの水にジェルをそのまま溶かすのも方法のひとつ
<減量のために、毎朝30分のローラー追加>
コタカにとって、課題はやはり体重。前述のように、ここにきて減量も停滞期に入ったようだ。
コタカ「体重が減りません!(笑)食事は多少意識していますが、2kg減った後、止まっています」
田代さん「コタカさんはもともと筋力があるので、フォーム改善して体重を落とせば、見通しは良さそう。やっぱり体重減らすには走る距離が足りないんじゃないかな」
コタカ「週2回のローラー台でのメニュー練習をやってるぐらいで、外での実走は2週間に1回ぐらいですね。走ったら、まだまだ体が重いのを感じます」
田代さん「現実的にできることじゃないと、長続きしないから、練習メニューとは別に、朝起きてすぐ毎日30分ローラー台に乗るのをやってみるのはどうでしょう。あと、食事管理も大事。一食200キロカロリー、おにぎり1個分減らせば、30日で6000キロカロリー違う。1カ月2kgペースで残り2カ月で4kg減ったら大きいです。体重を落としても急激に筋力が減ることはないので、4kg痩せたら4分は速くなると自分に言い聞かせてがんばりましょう。朝起きたら、体重計とローラーに乗るのを日課にしましょう」
コタカ「まだ本番まで日がありますからね。頑張って痩せます!」
田代さんからのアドバイスに、あらためて身が引き締まる思いの2人。同じような悩みを抱えているサイクリストのみなさんもぜひ参考にしてみては。さて、5月は富士ヒルのシミュレーションとしてハルヒル(榛名山ヒルクライム)に参戦し、富士スバルラインの試走も行う予定だ。
【PROJECT75 スケジュール】
3月
・週2回1時間の室内トレーニング
・週末の1~2日実走(上りTT含む)
・箱根・大観山ヒルクライム
4月
・前月と同様の内容(室内トレーニングメニューは前月より強度を上げる)
5月
・前月と同様の内容(室内トレーニングメニューは前月より強度を上げる)
・20日 ハルヒル参戦
・下旬 富士スバルライン試走
6月
・最終調整
・10日、富士ヒル本番!
田代恭崇(たしろ やすたか)
04年アテネ五輪代表、01年、04年全日本ロード王者と輝かしい実績を誇る元プロロードレーサー。現在はリンケージサイクリング代表として、パーソナルコーチング、フィッティング、サイクリングプログラムの企画、スポーツサイクルのレンタルなど、初心者から中上級者まであらゆる人々の自転車ライフをサポートする。
LINKAGE CYCLING
〒251-0032 神奈川県藤沢市片瀬4-14-4
TEL:0466-51-8497
http://linkagecycling.com/
芦田昌太郎(あしだ しょうたろう)
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。
編集長コタカ(小高雄人)
本サイトの編集長。学生時代は陸上部で100m走に明け暮れた。そのスピード感からロードバイクに夢中に。負けず嫌いだが練習嫌いのためなかなか速くならない。
富士ヒル75分切りを目指す2人のウエアは、「スタイリングと機能性との両立」をコンセプトにしたスポーツウェアブランド「reric(レリック)」のアイテムだ。
詳しくはこちら ⇒ http://reric.jp/topics/reric-coordinate/?utm_source=funride&utm_medium=post&utm_campaign=20180427_1
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。