2018年03月06日
【PROJECT 75 富士ヒル・シルバーへの道】Vol.1 いざ挑戦! 練習メニューはどうする!?
今年で15回目を迎えるMt.富士ヒルクライム(6月10日開催)で、俳優・ 芦田昌太郎と当サイト編集長コタカが75分切りのシルバーリングにチャレンジする新企画「PROJECT 75」がスタート! サポートするのはアテネ五輪・自転車ロード代表の田代恭崇さん(リンケージサイクリング代表)。みなさんも2人の挑戦を参考に、富士ヒルに向けてトレーニングを始めてみよう!
SNSでトレーニング内容を共有して、お互いに刺激を!
「昔は何もしなくても走れていたけど、ここ1、2年でまったく走れなくなってきた」と、最近は力の衰えを痛感することしきりのコタカ。イベントに出るよりも運営する側の仕事も増え、自転車にまたがる機会も減りがち。さらに三十路を超えて(現在31歳)、体重も増えてきたのも悩みだ。
「このままではいかん! 今年は15回記念大会なので、自分もしっかり走ってみたい! しかし、きっかけと目標がないと継続してトレーニングできない!」と、目標に掲げたのが富士ヒル1時間15分切り。とはいえ、一人で練習するのは心細いし、モチベーションも保ちにくい。それならばと声をかけたのが、自転車仲間の俳優・芦田さん。半ば巻き込まれたようなかたちの芦田さんだが、彼もまたコタカ同様の悩みを抱えていた。ここ2年ほどは舞台公演が忙しくて富士ヒルにエントリーできず、自転車に乗る時間も減って体力が落ちてきたなと実感していたところ。
しかし、コタカの呼びかけで熱い思いが再燃。「やっぱり、シルバーは憧れですから。ゴールドは限られた人だけの目標だと思うけど、一般ライダーが目指せる限界がシルバーだと思うので、一度はその限界に真剣にチャレンジしてみたい」と気合十分だ。富士ヒルベストタイムはコタカが85分、芦田さんが84分。目標まで10分前後のタイム短縮は簡単なようだが、やはりハード。さらに2人ともベストタイムを出したのは3、4年前というから、不安はぬぐい切れない。
富士ヒル・ブロンスリング(90分切り)のタイムはクリアしている芦田さんとコタカだが、さらなるタイムアップは可能なのか?
そこで門を叩いたのが、アテネ五輪代表の田代さんが代表を務めるリンケージサイクリング。まずは今後のトレーニング方針について、ミーティングを行った。最初に田代さんから提案されたのは、SNS上に3人だけが見られる非公開のグループを使ること。
「このグループでトレーニングメニューを公開するので、『今日はこれをやった』とお互いプレッシャーをかけあうようにしましょう。ヒルクライムに必要な有酸素能力は練習の積み重ねでしか上がっていかないので、どれだけ練習時間をとるかが大事ですから。不安なこと、気になることもそこで相談してください」
これならば簡単だし、読者も真似しやすいと2人も納得。それでは、ここからは2人の悩みに田代さんが答えていく。
2人のために一肌脱ぐ田代さん。「1時間15分は決して簡単じゃない。忙しいメンバーなので、継続するためにどうしたらいいか考えていきたい」
■コタカの場合「とにかく痩せたい」
最近のコタカの練習は、平日朝30分のローラートレーニング週3~5回、ジムトレーニング月1~2回、100km前後のライド月1~2回。土日は取材などでトレーニングできないことが多い。
田代「例えばローラー台を1日1時間にして、週3回に変えることはできますか? 30分だと有酸素能力を鍛えるには短すぎます」
コタカ「できます!」
さらに、コタカの最近の悩みが体重。自己ベストを出したころは63kgぐらいだったが、現在は70kgあるという。
コタカ「とにかく痩せたい。痩せるにはどうしたらいいですかね?」
田代「夜遅い時間に食べるのはやめたほうがいい。あとは寝るだけなので、カロリー消費しないですから。帰りが遅い日もあるだろうから、淡水化物は夕方6~7時までに摂って、家に帰ってからの食事はおかずだけにする。コンビニでも売ってるサラダチキンなどは、脂肪分が少なくたんぱく質が多いのでいいと思います。それならできるでしょう? あとは、自転車を固定ローラーにつけっぱなしにして、いつでも乗れるようにするのもいいでしょう。自転車通勤はしているんだっけ?」
コタカ「最近はしていないです」
田代「週1、2回でもやれば、体調もよくなると思うので、できるならやったほうがいいですね。体重計に乗ることも大事。体脂肪計つきで、毎朝同じ時間に乗って数値を写真に撮ってSNSに投稿しましょう」
コタカ「がんばってやせます! あとはペダリングに問題があるのか、ふくらはぎが攣りやすく、富士ヒルでもいつも攣ってしまいます」
田代「クリートの位置を見直したほうがいいかもしれないですね。クリートが浅いとかかとが立って、負荷がかってしまうので。この後、測定しながらクリートの位置を見てみましょう」
コタカの当面の課題は、ダイエット。同じ悩みのサイクリストも多いと思うが、日々の食事と運動を見直してみよう
■芦田さんの場合「パワーとケイデンスを上げたい」
芦田さんの最近の練習内容は、スクワット、腹筋のコロコロローラーなど自重での筋トレを1日30分、3勤1休のペースで。自転車は週末に100~140kmの山岳込みのコース。メンバーによってペースは速かったり遅かったり、とのことだ。
芦田「ここ2年くらいあまり乗れていないので、スピードも落ちているし、筋肉も落ちてると思います。筋肉が欲しいですね」
田代「筋トレは自重でやる分には問題ないでしょう。重いウェイトでトレーニングすると自転車に悪影響を及ぼす場合もあるので、避けた方がいいです。できれば、乗りながら鍛えましょう。上りでギアを重くして、50回転ぐらいの低い回転数で筋肉に負荷をかけるのがいいと思います」
芦田「上りで座っていられなくて、すぐダンシングしてしまうんですが、問題ないでしょうか?」
田代さん「芦田さんは体重が軽いので、比率的にダンシングが多くていいと思います。ただ加速するためのダンシングは、出力、心拍が上がってしまうので少ない方がいい。あくまで一定ペースが基本で、筋肉の負荷を落とすために立つのはいいと思います」
芦田「ケイデンスは70~75回転くらいなんですが、もっと早くしたほうがいいでしょうか」
田代「速く回す練習をした方がいいですね。まずは95回転を目安にやってみましょう。それに、先ほどの50回転の筋トレ的な上りの反復練習も取り入れてください」
俳優という職業柄、仕事の時間は不規則だが、規則正しい生活は心がけている芦田さん。毎日、6時起床、12時就寝、食事も自炊で、外食もほとんどしない。お酒もほとんど飲まないという。
芦田「ポトフを作るのが好きで、野菜中心の食事です。昨年からグルテンフリーも続けて、体重は56kgぐらい。本番までは54kgぐらいまで落としたい。たんぱく質が足りないかなと、プロテインを飲んでいます」
田代「食事+アルファでプロテインで補うのははいいことと思いますよ」
41歳ながらも、食事や生活習慣に気を遣い若々しい体をキープしている芦田さん。あとは練習で、体力・走力をアップするのが課題だ
■心拍測定&フィッティング
富士ヒル本番までは、約3カ月と長いようで短い。短期間で効率的にパフォーマンスを上げるには、トレーニングの内容も肝心だ。「どのような数値を基準にしてトレーニングしていけばいいか?」というのは、2人とも共通の悩みだ。そこで、そのトレーニングメニューの作成を田代さんにお願いするのが、今回の大きな目的のひとつだ。
2人ともパワーメーターを持っていないので、今回は心拍数で強度管理を行う。そのため、まずはローラー台での心拍数の測定。ウォームアップの後、2分ごとにスピードを上げ、心拍数を記録していく。これを20分間行う。この数値をもとに、LTHR(乳酸閾値心拍)を割り出す。
「LTHRは、有酸素運動と無酸素運動の境界線となる心拍数の数値です。厳密な測定には血液中の乳酸値を図る必要がありますが、今回の方法でもおおよその数値は出せます(田代さん)」
これらのデータをもとに、田代さんが固定ローラー台でのトレーニングメニューを考えてくれることになる。
「期間が短いので、早い段階から高い強度でやります。きついときはアドバイスします。僕も3カ月でできるだけのことはやるので、チャレンジしましょう」
パワーメーターを持たない2人は、心拍の数値で強度設定したトレーニングメニューを作ることに。今回は田代さんが心拍の上がり具合をチェックし、そこからLTHR(乳酸閾値心拍)を算出してくれた
さらに田代さんからは「パワーメーターがあれば、トレーニングでパワーが向上したことがわかります。でも、心拍計のみだと達成感がわかりずらいので、実走でのTTを取り入れましょう」との提案が。そこで毎週末、15~20分ぐらいで走れる峠を実走し、タイム計測してトレーニングの成果を確認することにした。また、田代さんは2人がローラー台でこぐ姿もチェック。レーザーを当てながらサドル位置やひざの動きも細かく見ていった。
正面からレーザーを当てて、ヒザがスムーズに動いているかチェック
以前、フィッティングを受けたことがあるという芦田さんはフォーム的に問題なし。「身体もしっかりしている」と田代さんもお墨付きだ。一方、ふくらはぎが攣りやすいという悩みを抱えていたコタカは右ひざがぶれてしまい、サドルも0.5cmほど高いという指摘があった。そこで、クリートの位置をやや深め(かかとより)にして、右足の内側にシムを入れて調整。サドルはインテグラルシートポストのためこの場では下げられなかったが、なるべく早いうちに調整したいところだ。
ふくらはぎが攣りやすいというコタカ。田代さんはクリート位置に問題があると見抜いた
こうして田代さんと考えた練習メニューは、週2回1時間の室内トレーニング(田代さんが設定した心拍数の強度で行う)+週末の1~2日実走(上りTT含む)がベースとなる。さらに、今後は以下のスケジュールで本番シミュレーションを組み入れていく。
・富士ヒル本番の24㎞に距離に近い箱根・大観山でのヒルクライム約18㎞を月1回程度行うこと。
・実戦練習として、榛名山ヒルクライム(18㎞)に参戦。
・5月下旬に、本番コースの富士スバルライン試走
これで初回のミーティングは終了。後日、田代さんが作成したトレーニングメニューがSNSにアップされ、2人のトレーニングも始動した。今後も2人のトレーニングの模様は、この連載で紹介していく。富士ヒルにエントリーする読者のみなさんも、これを参考に、2人に負けじと本番に向けて練習してみよう。
次回は、田代さんと一緒にヒルクライムの走り方の実践練習を行う予定だ。
【PROJECT75 今後のスケジュール】
3月
・週2回1時間の室内トレーニング
・週末の1~2日実走(上りTT含む)
・箱根・大観山ヒルクライム
4月
・前月と同様の内容(室内トレーニングメニューは前月より強度を上げる)
5月
・前月と同様の内容(室内トレーニングメニューは前月より強度を上げる)
・20日 ハルヒル参戦
・下旬 富士スバルライン試走
6月
・最終調整
・10日、富士ヒル本番!
田代恭崇(たしろ やすたか)
04年アテネ五輪代表、01年、04年全日本ロード王者と輝かしい実績を誇る元プロロードレーサー。現在はリンケージサイクリング代表として、パーソナルコーチング、フィッティング、サイクリングプログラムの企画、スポーツサイクルのレンタルなど、初心者から中上級者まであらゆる人々の自転車ライフをサポートする。
LINKAGE CYCLING
〒251-0032 神奈川県藤沢市片瀬4-14-4
TEL:0466-51-8497
http://linkagecycling.com/
芦田昌太郎(あしだ しょうたろう)
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。
編集長コタカ(小高雄人)
本サイトの編集長。学生時代は陸上部で100m走に明け暮れた。そのスピード感からロードバイクに夢中に。負けず嫌いだが練習嫌いのためなかなか速くならない。
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。