2016年04月06日
【パンライド ~自転車とパンのおいしい関係~】Vol.3 パオン昭月 こだわりで作り上げた自転車とパン
自転車乗りでもあるパン屋さんを紹介しようという連載「パンライド」。第3弾は、東京駒沢の老舗「パオン昭月」の執行博之さんに、こだわりの自転車とパンを披露してもらった。
乗るよりもいじるのが好き
執行博之(しぎょう ひろゆき)さんは「乗るよりもいじるのが好き」というサイクリスト。最近完成したというピカピカのランドナーは、オーダーフレームに自らパーツを組み付けたという自慢の一台だ。
執行さんは昔から機械が好きで、かつてはオートバイにはまっていたという。
「でも、子どもができたのをきっかけに、もうバイクは危ないかなと思い、7、8年前から自転車にはまりだしました」
そしてすぐ、自転車の機械としての繊細さに魅了されたという。
「バイクはボルトの締めつけとか多少アバウトに扱っても問題ない。でも、自転車は六角レンチで細かく締めたりと、扱いがシビア。いじる方としても上級で、それがおもいしろいですね。最初は東京五輪のころの古いチネリのフレームが手に入ったので、それを組んだりしてました」
これまで手に入れ組み上げた自転車は4、5台になるという。
新たに完成したランドナーは、東京上馬のフレームビルダー「Rew10」のもの。パーツは同じく上馬の行きつけのショップの「ブルーラグ」で買い求めたり、個人輸入して集めたという。
「ディスクブレーキのランドナーが作りたかったんです。アメリカンなパーツが好きなので、アメリカにオーダーメイドしたものもあります。仕事が終わった後にいじって、それを眺めるのが楽しいんです」
とはいえ、せっかく組んだ自転車に乗る機会は目下のところほとんどないという。
「子どもが3人いるので、定休日の日曜日も、自分だけ峠に行くというわけにはいかないんです。ビンディングシューズやヘルメットもそろえたのに(笑)。乗るとしても駒沢公園まで行って自分の自転車を眺めたり、ショップまでいってパーツの相談をしたりするぐらい。ショップの仲間は遠くにソバを食べに行くサイクリングをしてたりするので、子どもたちの手が離れたら行けるようになるといいですね」
Rew10のフレームは昨年12月に完成、執行さんは2年前からパーツを買い集め、ほぼひとりで組み立てたという
ディスクブレーキはアメリカのPAUL製。ケーブルのエンドキャップなど各所に真鍮が使われているのも、Rew10の特徴
チェーンステーにはスペアスポークのホルダーがつくなど、細部の工作も凝っている
フロントバッグは、自転車のサイズに合わせてアメリカにオーダーしたもの。納品まで半年ほどかかったという
製作途中のフレーム。パイプの接続はフィレット溶接で、滑らかな曲線が美しい(写真提供:執行博之さん)
「パオン昭月」は、もともと和菓子職人だった執行さんのおじいさんが1946年に創業。戦後の物不足の時代に、配給などで手に入れた小麦を使ってパン屋を始めたという。
お店の棚にはパンだけでなく、シュークリームやパウンドケーキなど洋菓子やケーキも数多く並ぶ。取材している間にも何人も買い求めに来るほどの人気だ。
「祖父は何でも作ろうという貪欲な人だったんです。パンとケーキ、両方やってる店は珍しいと思いますよ」
現在は、執行さんの叔父さんとお兄さんと3人で切り盛りしている。町田には、もう一人のお兄さんが経営する支店BAKE HOUSE TEDDY (ベイク ハウス テディ 東京都町田市金森1092-7)もある。
お店の一番人気は、生クリームあんぱん。ホイップクリームのあんパンは他にもあるが、生クリームが入ったあんぱんは珍しい。ホイップよりも生クリームのほうが油分が少ないため口どけがよく、あんぱんに合うとのこと。実際、食べてみると甘さもしつこくなくて、上品な味わいだ。
有名な俳優やお笑い芸人も差し入れ用にまとめて注文するほど、人気の逸品だという。
人気No2のハムカツは、創業間もないころから販売している定番商品。昔ながらの赤い耳がついたハムを揚げたカツに、秘伝のソースが染み込んでいて食欲がそそられるパンだ。
お店には、自転車仲間がパンを買いに来ることもあるという。代々続くパンへのこだわりが、執行さんの自転車へのこだわりと相通ずるものがあるのかもしれない。
創業70年の「パオン昭月」。東京オリンピックのときの区画整理で現在の場所に移転し、約50年。ノスタルジックな昭和の雰囲気が漂う
執行さんはかつて内装業者として働いていたが、約10年前、お店が忙しくなった時に呼び戻され、パン職人に
一番人気の生クリームあんぱん。気温が高いと生クリームが溶けてしまうため、販売時期は10月~5月のゴールデンウィークごろまで。食べたい方はお早めに!
人気No2のハムカツ。分厚い自家製のカツが2枚はさまり、ボリュームたっぷり
もうひとついただいたのがメープルフレンチ。フランスパンに牛乳、バターをしみこませて焼いたフレンチトーストにメープルシロップをかけたもの。香ばしい甘さが際立つ
お店の奥がパンの工房。執行さんたちは毎朝4時からパンを作っている
パオン昭月
東京都世田谷区駒沢2-18-11
TEL03-3421-4831
営業時間 7:00~20:00
定休日 日曜日
駒沢公園の近くに建ち、地元の人たちに愛される創業70年の老舗。人気のパンは「生クリームあんぱん」「ハムカツ」など、洋菓子も人気
http://www.geocities.jp/paonshougetu/
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。