2020年01月17日
【山中湖シクリスムフォーマション】チームが掲げる選手育成のカリキュラムとは
具体的には2021年から実施する計画がある。内容はこうだ。
©️山中湖サイクリングチーム
一般カリキュラムは自転車に興味がある人向けで、チームが生徒側を訪問し体験型の教室を開く。
スポーツカリキュラムは小学生からスタートし最終的には大学までで、チームのスクールに通う形でスタート。学年が上がっていくにつれて、取り組みが変わる育成スタイルとなる。
小学校〜
幼少時は自転車を楽しめること、もう一つは安全に走ることに重点を置く。
そして生涯、自転車を楽しめるように知識や技術を獲得する。
©️山中湖サイクリングチーム
中学校〜
2019年度に村内の小学校・中学校で実施したサイクリングスクールを今季4月〜5月から月1回行う。コース作成やゲームを行う活動をイメージしている。
「中学生向けの競技連盟は国内に存在していない。楽しみながら自転車に親しみ、競技に興味が出ればチームと連携を取りレーサーの部の活動に参加していけるようにもしていきたい。
年齢が若いので、まずは身体を守りながら体力作りや、自転車の技術を体得していけるような活動を考えています」とトムさんは言う。
©️山中湖サイクリングチーム
高校〜
高校生の年齢になれば、2019年から活動している山中湖サイクリングチームへの加入も可能。
ライダーズの部(自転車を楽しみたい人向け)、とレーサーの部(競技を始めたい、本気でやりたい選手)を設置する。
来年からレーサーの部プログラムを強化し、大学に進学をしながらプロスポーツに挑戦できる活動を支えていく。
「山中湖シクリスムフォーマーションのスタッフ、施設を有効活用した交流型の経験が交わるような環境を作っていく。最終的な目標です。
すでに実施している活動としては、夏の時期に育成遠征を体験的に実施しました。かなり好評でいろんな選手に訪問していもらい、よい経験になりました。このような活動を定期的にやっていきます」
4月頃からチーム練習も始まり、本格的に活動をスタートする。
©️山中湖サイクリングチーム
〜大学
山中湖シクリスムフォーマション、山中湖サイクリングクラブという2つのクラブの目標に合わせて、どちら(大学・チーム)にも所属しながら活動。今季は中央大学自転車競技部とパートナー締結をしている。
「大学での生活が中心になり、練習会に参加しながら勉強と両立できる環境を整えていく。現在、中央大学に所属しながらチームに所属する選手が2名(山本選手、五十嵐選手)います。
中央大学出身ということで縁が深く(トムの母校)、監督と連携をとってお互いにメリットのある環境を構築する。選手に経験を積ませ、学連チームとしてのレベルアップにつながる流れを作っていきたいですね」
©️山中湖サイクリングチーム
日本・フランスの大学、そしてチームの三連携を推進したい
山中湖フォーマションはフランスのアマチュアチームVC Corbasと連携している。
2019年はチームから数名の選手がフランスへ渡り経験を積んでいったが、次のステップとしてはフランスの大学での言語の授業が受けられる環境を作ることだ。
日本人選手がヨーロッパに挑戦するとき、文化、言語、の壁、ハードルが高いのは事実。
理想としては三者(チーム、日本・フランスの大学)パートナーシップを結び、日本で進学をしながら交換留学の一環としてフランスで走っても進学ができるような仕組みが、日本でも作れるのではないかと手ごたえもあり、実現に向けてトライしていきたい(注)。
「山中湖シクリスムフォーマションのチーム名は“自転車育成”という意味があります。わたしが日本に来る前はAG2Rの下部組織シャンベリー シクリスムフォーマションというチームに所属していました。
アマチュアの一番上のチームで、ワールドツアーチームの下部組織でしたが、世界一流の育成チームといっても過言ではありません。
その中で全選手が大学生で15人ほどの選手から毎年5人くらいがプロに上がる仕組みになっています。
先日の五輪テストイベント開催の際、3位のナンス・ペテルス(フランス)は、4年前のチームメイトで同い年。
僕の上の部屋で1年間同じ活動をした。そのチームはいろんなところがプロ以上に環境が整っていました。
そこでは全員が大学生で、卒業をしても勉強を続ける選手もいます。
ロマン・バルデ選手も同門で、過去にはツール・ド・フランス総合2位の成績を上げたこともあります。当時は大学院生でした。世界最高峰のレースを進学しながら走っている選手がいるのです。
この取り組みは日本国内だったらできることなんじゃないかと。こういうやり方があるんだということを日本でも発信していきたい」
とトムさん。
(注)ラグビーを例に挙げると、山梨学院大学とリヨン第一大学「大学間交流協定」を締結している
地元に貢献 レンタサイクルを開始
水色は山中湖、ピンクは紅富士を表現。photo:FUNRiDE山中湖サイクリングベースではロードバイクのレンタルを開始。チームカラーを配色したロードバイクをまずは5台用意している。
「自転車を持っていかなくても、ここで借りれば湖畔を走れる。そんな拠点としてしっかりと整備していきたいです。
この計画については地元の自転車店のNNLLレーシングサイクル(都留市)が積極的に地域活動を応援してくださっています。地域の方々に支えていただきながら環境を整えています」
山中湖サイクリングベースは山中湖を自転車の聖地にしていこうという趣旨の施設。photo:FUNRiDEバイク整備サービスも
集客が見込める週末などにメカニックを常駐し、自転車整備が行えるような事業も検討中。
フランス⇄日本の発見ツアーを実施
©️山中湖サイクリングチーム
山中湖村はサイクルツーリズムに最適だ。そこで総合的にサイクリングツアー、楽しく走り地域の魅力を発見できるようなツアーを作っていくという。
日本人を対象としたフランス・アルプス発見ツアーを2020年の5月31日から6月7日までの日程で実施予定。チームコンセプトである、フランスの自転車文化の魅力を肌で体感しようという試みだ。
山中湖からは雄大な南アルプスの景観が楽しめる。主要山脈の意に解された本場のフランス・アルプス山脈をライドするのが旅の中心プランとなる。ライドは6回予定。サポートも込みなので走りたくない日、リアイアなどにも対応できるので安心だ。またクリテリウム・デュ・ドーフィネの開催期間中(5/31〜6/7)であり観戦もプランに入っている。
費用は宿泊費やコーディネイトを含めて25万円(航空券料金別)となる予定。
山中湖と南アルプス。Photo:FUNRiDE
©️山中湖サイクリングチーム
またフランス人を対象とした富士山発見ツアーは2021年から行う予定。これは富士午後地域を走行したり、地域の大型イベントや山中湖サイクリングクラシックの参加も含むといった内容となる。
©️山中湖サイクリングチーム
©️山中湖サイクリングチーム
ほかに四季を楽しむ地域密着型のライドイベントや、第2回目となる2020年山中湖サイクリングクラシックの開催予定日(10月4日)の発表も行われた。世界選手権開催地・宇都宮で行われるジャパンカップが好例だ。山中湖でもオリンピック・レガシーとして、日本を代表するレースに育てるのが最終目標となる。
スポーツイベントによる機運醸成による後押しもあるが、多くの事業計画を発表した山中湖サイクリングチーム。自転車をスポーツとして、競技として成り立たせていくためのこれら施策は、自転車による地域貢献活動のヒントとなりそうだ。
関連URL:山中湖サイクリングチーム
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得