2018年03月10日
パワフルなアシストと最長200km超の航続距離 MTB、ロードをラインナップするヤマハ最新eBike「YPJシリーズ」
ヤマハ発動機がスポーツ電動アシスト自転車、いわゆるeBikeのニューモデル4車種を発表。マウンテンバイク、ロードバイク、クロスバイク、ツーリングバイクと幅広いニーズにこたえるラインナップで、いずれもパワフルでレスポンスのいいアシスト性能と最長200kmを超える航続距離を誇る注目モデルとなっている。
サイクリングの楽しみをより多くの人に
ヨーロッパを中心に大きな盛り上がるを見せているeBike。日本にもじわじわとその波が訪れ、各ブランドから様々なモデルが発表されるているが、電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハから新たに4モデルが発表された。ロードバイクタイプの「YPJ-ER」、MTBタイプの「YPJ-XC」、クロスバイクタイプの「YPJ-EC」、ツーリング・トレッキングバイクタイプの「YPJ-TC」で、2018年6月11日より順次発売される。
ヤマハは、1993年に電動アシスト自転車「PAS」を世界で初めて開発・発売したこのジャンルの第一人者。以来、製品・技術の進化熟成を重ね、通勤通学、子どもの送迎、買い物など手軽で便利な日常の足として普及。現在では電動アシスト自転車は、年間約62万台の市場規模にまで拡大している。
2012年にはスポーツ電動アシスト自転車ブランド「YPJ」(Yamaha Project)をスタートし、2015年12月にロードバイクタイプの「YPJ-R」、2016年10月にはクロスバイクタイプの「YPJ-C」を発売した。
電動アシストバイク誕生25周年にあたる今年発表されたニューモデル4種は、上記2車種から航続距離を大きく伸ばし、アシスト性能も強化。心臓部であるドライブユニットは欧州で好評価を得ている最新のものを採用し、4モデル共通のバッテリーも従来モデルより大幅に大容量化。最もアシストの軽いプラスエコモードでは200km以上の航続距離に達するという。他のeBikeと比べても倍以上の距離で、ロングライドで丸一日乗り回してもバッテリー切れの心配は少なそうだ。
フレームはアルミ製でS、M、Lの3サイズを展開、機械式ディスクブレーキを搭載し、小柄な人や女性でも扱いやすくなっている。
メーカーが想定するターゲットは、40代~50代の大人の男性。価格的には20万円台後半から30万円台半ばとミドルグレード以上のロードバイクやマウンテンバイクと同程度だが、スポーツバイクに興味があるものの、敷居が高い、体力に自信がないと感じている人には十分選択肢に入るだろう。自転車ひとつでどこまでも行けるサイクリングの楽しみを、今まで経験したことのない多くの人に提供することもできそうだ。
なお、従来モデル「YPJ-R」「YPJ-C」の2車種も継続して販売され、YPJシリーズのラインナップは計6台となる。
ニューモデル4車種共通のリチウムイオンバッテリーは、重量約3.0kg、容量13.3Ah。従来モデルの重量約0.6kg、容量2.4Ahと、既存2車種の「YPJ-R」「YPJ-C」と比べると重量が約5倍、容量が8倍だ
液晶ディスプレイを搭載したマルチファンクションメーターも4車種共通。バッテリー残量、速度、消費カロリー、ペダリングパワー(W)などを表示。ステム左側に設置したスイッチでアシストモードを変更する
YPJ-XC 小型軽量ながらパワフルなドライブユニットを搭載
ヤマハ初のMTBタイプのeBike「YPJ-XC」。e-MTB向けにヤマハが開発し、欧州で高い評価を受けている最新ドライブユニット「PW-X」を搭載する。オンロード系の他3車種に搭載されるユニット「PWseries SE」と比べて小型軽量ながら、高トルクでパワフルなアシスト力を発揮。電動アシストは5段階に調整可能で、最もアシスト力の弱いプラスエコモオードでは225km、最も強いエクストラパワーモードでも85km走れる。
変速はリアのみの11速(11-42T)。リアディレーラーや油圧ディスクブレーキは、シマノSLXを搭載。サスペンションはフロントのみ(ROCKSHOCK製)で、手元のスイッチでロックアウトも可能。ホイールサイズはMTBの定番となっている27.5インチを採用している。
e-MTB人気の高い欧州でも評価されるヤマハ製の最新MTB専用ドライブユニット「PW-X」。パワフルながら小型軽量で、オフロードでの走りも快適
新たに追加されたニューモデル4モデルを紹介しよう。
重量:21.2kg(Mサイズ)、電動機形式(定格出力):ブラシレスDCモーター(240W)、変速方式:外装11段(前1速×後11速)SHIMANO SLX、バッテリー:リチウムイオン電池、電圧/容量/ 充電時間:36V/13.3Ah/約3.5時間、カラー:マットピュアシルバー、発売日:2018年7月18日、メーカー希望小売価格 378,000円(税込み)
一充電あたりの走行距離(標準パターン):「EXPW」モード85km、「HIGH」モード90km、「STD」モード108km、「ECO」モード148km、「+ECO」モード225km
一言インプレ「上り坂もスイスイ」
ドライブユニット「PW-X」は高トルクで、アシスト力はかなり強い。自力で上るのはきついかなと思える坂でも、上から3番目のスタンダードモードですらスイスイ上れる。ぬかるんだ路面ではグリップが抜けてしまうんじゃないかと心配になるほど。脚の感覚以上に進んでしまうので戸惑うところもあったが、あまり力まずに軽く回すようにペダリングするのが正解だったかもしれない。マウンテンバイクのテクニックを磨けば、自由自在に野山を駆け巡れるはずだ。
電動アシスト車にありがちな、ペダルの踏み込みとアシストの効きのタイムラグもほとんど感じない。たとえ上り坂の途中で足をついても、停止状態からでもアシストがきくので再スタートが簡単だ。5段階のアシストモードと11速変速の組み合わせは、どのモード、どのギアで走るか迷うこともあるが、感覚的に使いこなせるようになればより楽めるだろう。
YPJ ER 700x35cタイヤ、油圧ディスクブレーキ採用でビギナーも安心のロードバイクモデル
最新のヤマハ製ドライブユニット「PWseries SE」は、アシスト力を4段階に調整可能。航続距離はプラスエコモ―ドで最長242km。従来モデルのYPJ-Rがパートタイムアシストであったのに対し、こちらは常時アシストがきく。タイヤのサイズは700x35cで油圧式ディスクブレーキ搭載と、ロードバイクに慣れてない人でも扱いやすい装備になっている。
重量:19.6kg、電動機形式(定格出力):ブラシレスDCモーター(240W)、変速方式:外装20段(前2速×後10速)SHIMANO Tiagra、バッテリー:リチウムイオン電池、電圧/容量/充電時間:36V/13.3Ah/約3.5時間、カラー:マットブラック2、発売日:2018年6月11日、メーカー希望小売価格:345,600円
一充電あたりの走行距離(標準パターン):「HIGH」モード93km、「STD」モード111km、「ECO」モード152km、「+ECO」モード242km
一言インプレ「重さも気にならない軽快な走り」
重量はMサイズで19.6kgと通常のロードバイクの倍以上あるものの、その重さやタイヤの太さはアシスト力のおかげでほとんど感じることはなく軽快。上り坂もつねに一定ペースで上れるのはありがたい。常時アシストがきく感覚は「YPJ-R」とは違うものの、違和感を感じるほどではない。試しにアシストを切った状態でも走ってみたが、平坦であれば走りにくい感覚もなかった。
YPJ-EC 通勤やロングライドも快適にこなせるフラットバーロード
クロスバイクタイプというよりも、YPJ-ERをフラットバーハンドルにした、フラットバーロード的なモデル。アップライトなポジションで通勤やロングライドも快適にこなせる。ドライブユニット、バッテリーはYPJ-ERと共通で、航続距離は最長222km。コンポーネントはシマノ・ソラ2×9速で、ディスクブレーキは機械式。
重量:19.8kg(Mサイズ)、電動機形式(定格出力):ブラシレスDCモーター(240W)、変速方式:外装18段(前2速×後9速)SHIMANO SORA、バッテリー:リチウムイオン電池、電圧/容量/充電時間:36V/13.3Ah/約3.5時間、カラー:マットダークグレー/ピュアホワイト、発売日:2018年6月11日、メーカー希望小売価格:280,800円(税込み)
一充電あたりの走行距離(標準パターン):「HIGH」モード89km、「STD」モード109km、「ECO」モード148km、「+ECO」モード222km
YPJ-TC 荷物が多くても安心のパワー、自転車旅に最適
YPJ-ECをベースにしたツーリング・トレッキングバイクで、フロントサスペンション、前後フェンダー、リアキャリア、シマノACERAの油圧式ディスクブレーキを搭載。航続距離はプラスエコモ―ドで237kmと、多くの荷物を載せられるので泊りがけの自転車旅も楽々こなせそう。なお、ロードモデル3車種はヘッドランプを標準装備。アシスト用のバッテリーから電源供給することで安定した明るさを実現する。
重量:22.6kg、電動機形式(定格出力):ブラシレスDCモーター(240W)、変速方式:外装18段(前2速×後9速)SHIMANO SORA、バッテリー:リチウムイオン電池、電圧/容量/充電時間:36V/13.3Ah/約3.5時間、カラー:サテンシルバー/ピュアパールホワイト、発売日:2018年6月11日、メーカー希望小売価格:324,000円
一充電あたりの走行距離(標準パターン):「HIGH」モード91km、「STD」モード112km、「ECO」モード153km、「+ECO」モード237km
(写真:ヤマハ発動機、光石達哉)
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。