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2022年10月09日

【UCIグランフォンド世界選手権2022 トレント参戦記】 中鶴友樹さん“いつかは表彰台に”

沖縄に拠点を置くサイクリストの中鶴友樹さん(TEAM OKINAWA)は先日開催されたUCIグランフォンド世界選手権に出場しました。
開催地はイタリア・トレント。2018年イタリア・ヴァレーゼ大会、ポーランド・ポズナン大会に出場し、コロナ禍の影響で2020、2021年は参加を見送りし、2022年大会は3回目の出場です。
今回はイタリア北部らしい山岳コースでの戦いは、熾烈を極めたようです。
今後出場するサイクリストの皆さんのために備忘録を兼ねてレース渡航記を寄稿していただきました。

UCIグランフォンド世界選手権
開催日: 2022年9月18日 日曜日
開催地:イタリア・トレント
距離:143.8㎞、獲得標高:3900m、種目:年代別45-49歳

筆者:中鶴 友樹
生年月日1973年7月19日49歳 鹿児島県出身 
沖縄在住 2004年に沖縄移住し自転車通勤をきっかけにサイクリングを始めて17㎏のダイエットに成功。そこから自転車競技の魅力に取りつかれ、自転車に乗ることレース参戦することがライフワークとなりレース参戦の為に脱サラ。実業団レース参戦、沖縄市民210㎞、ニセコクラシックなど長距離系ロードレースを得意としています。

渡航前〜レースは走る前から始まっている

私(中鶴友樹)は沖縄在住で県外のレースはすべて飛行機での移動なので、国内、国外問わず早めに航空券や宿を抑えるようにしています。
そうしておかなければ仮に大会にエントリーしても希望の航空券が取れなかったり、宿泊先が会場から遠方になったりしてまいます。
仮に予約できてもチケット代や宿泊代が高額になってしまったり……。

今回はニセコクラシックへエントリーとUCIグランフォンド世界選手権を同時にANAのマイレージで航空券の予約をしました。
乗り継ぎがある時はロストバゲージのリスクを減らし、バゲージスルーで負担をなくしたいので、エアーアライアンスを揃えるようにしています。

そして、今回の旅ではロストバゲージの精神的な負担を減らす為にAirtagを購入し預け荷物に取り付けました。
荷物が何処にあるかかなりの精度でわかるので、もしもの際は役立つかなと思ったり、移動中に荷物の移動が見えて安心しました。
宿泊先予約も予約サイトで会場近くに予約しました。

結果的に、航空券も宿泊先の料金も大会直前になると同じ便・同じ宿でも金額は倍以上になっていたので正解だったと思います。


9月13日/移動日
16時 那覇〜羽田〜フランクフルト〜ミュンヘン。9月14日 8時に現地到着

9月13日16時、那覇ー羽田ーフランクフルトーミュンヘンに9月14日8時ぐらいに到着。レンタカーも空港内で比較的スムーズに手続き完了
そこで、今回の旅の友・林さん(年代50-54で出場)と合流。

そして、地元のスーパーにて食料の調達をしました。毎回のことですが、スーパーでの買い物は日本とのギャップがあるものも多く楽しみのひとつです。すべての予定を済ませたら翌日のコース試走に備えて早めに就寝。


9月15日/イタリアにて午前5時起床、午前7時から試走へ

日本で確認していた雨予報が外れてくれて、100kmほどのライドへ出かけました。
安全に速く走るためには、コースを実際に走って確認することが重要。上位を狙うならなおさら必要だと思うので天気が良く本当に助かりました。

コースは最初の10㎞ぐらいが平坦基調で後半は上りと下りばかりなイメージ。上りはきついのはもちろんのこと、下りはハイスピードになる箇所が多くテクニカルな箇所もあることが確認できました。

レース中は、この最高の景色も楽しむことができないだろうから時折止まって写真を撮ったり、地元の店で補給を楽しんだりイタリアを堪能しておきました。

そこで、コースを試走した感想やコース確認などの情報交換を行い、スタート・フィニッシュ地点の変更を初めて知ったり、高岡さんと木村さんのRoppongi Expressチームはサポートの松橋さんがフィードゾーンにて補給を行うことになっていたのですが、私もお願いしたところ快諾していただきとても助かりました。

沖縄では、助け合うことを「ゆいまーる」と言いますが、正に「ゆいまーる」でした。この場を借りてお礼申し上げます。


9月16日/コースの後半部分の試走へ

ゴール12㎞手前からは10㎞下り坂に加えてテクニカルなコーナーばかりで、コースを知らないとオーバースピードで滑落しかねないなと感じました。


9月17日/土曜日

朝方は雨。14時からライダーへのブリーフィングが行われました。
ここで、レースについて色々な最終説明がありました。自分が疑問に思っていることを聞くのも大切です。
そして、重要事項が何点か伝えられていました。

その中でも日本ではあまり経験できないことのひとつとしてスタート時間変更が伝えられました。それも20分以上スタートが早まるクラスも出るくらいです。

日本でもブリーフィングへの出席は大切ですが、海外イベントでは積極的に情報を取りに行く必要があるなと思います。“知らなかった”では済まないこともあります。


9月18日/レース当日

宿はスタート地点が目と鼻の先なのでゆっくりと起きて、朝食を摂って、さらにはローラー台まで持ち込んでいたのでベランダでウォーミングアップを!

およそ9時に宿をあとにし、スタート地点へ移動しました。
私たちのクラスは187人の選手が参加しています。

各国の予選でクラス優勝した選手は最前列からスタートはできましたが、それ以外の選手が前方でスタートしたければ、場所取りのために早めに並ばなければいけなかったので20分前ぐらいにはスタート地点に整列しました。

その間にトイレへ行きたくなり、隣に並んでいる他の国の選手に自転車を預けて用を足しました。
もちろん私も隣の選手の自転車預かったりして、持ちつ持たれつ。こんな光景はとても新鮮でレースが始まる前に助け合う姿はとても良いと感じました。

また、日本ではまず無いであろう機材ドーピングの抜き打ち検査も行われました。


10:09 レーススタート

最初の2~3kmはコースも狭く、時折ラウンドアバウトも出現するので気をつかいました。
10㎞ぐらいまでは集団で走り、いよいよ上りの開始です。
どう考えてもレースの最後まで先頭集団に残ることがイメージできない。
行けても2回目の上りまでだろうなと思っていたので、とにかく同年代の世界のトップの選手の走りを見たいと思い、行けるところまで行こうと覚悟を決めて突入します。

1回目の上りは約20㎞で獲得標高は1400m。
最初の3㎞は特に斜度がきつく出力は400w前後で突入。ドイツ、スロベニア、イタリアの選手たちが集結し、もちろんニセコで年代別優勝をした高岡さん、2位の佐藤さんも同じ集団にて心強い。しかしメーターは常時350w前後で上り続け、これが続くと20分が限界だなと思いながら走っていた。少し斜度が緩む上り区間3㎞地点ぐらいから300w前後に落ち着いてきて、これなら1回目の頂上までは先頭集団でクリアできるだろうと、上りでもドラフティングが効く風下側を位置取りしていきます。

順調に上っていると手応えがありましたが残り7㎞・標高1100mほどで急に力が入らなくなり失速。
普段なら余裕がある250wでも辛い! 何が起こっているか全くわからず気持ちだけで頂上に着いていますが、さらに下りに入っても呼吸が辛く、ペダルを踏んでもいないのに両足が攣ります。
この状態では失速し、どんどん他の選手に抜かれていきます。10㎞ほど下ってきてしばらくすると力が入りはじめて痙攣も収まってきました。そこで合流してきた他カテゴリーを含む選手達とローテーションを回しながらアップダウンをこなして2回目の上りに突入します。

この間にかなり回復してきていて、フランスの選手と2人で抜け出し淡々としたペースで上ります。1回目は上げ過ぎたと思ったので300w以上のパワーを出さないよう気を付けながら走るが、スタートから75㎞地点の上りの中腹手前でまたもや失速……力が入らない。

ヨロヨロと上っていると1回目の上りで遅れていた佐藤さんが含まれる集団が抜いていく。声をかけてくれて一瞬頑張ったが、ついていけずズルズルと後退、またもや頂上まで地獄の苦しみを味わうことになります。

さらに下りは1回目より苦しく足は攣りっぱなし、しかし1回目同様に時間の経過とともに収まってきました。

しかし、1回目同様、登坂中に同じような場所で失速。残り12㎞となった最後の上りのピークから、下りに入るとまたもや両足が攣り、最後まで苦しんでやっとの思いでフィニッシュを迎えました。

順位は29位/187人

フィニッシュ後は立っているのも辛く、レース後にこのようになるのは初めての体験だったかもしれません。
しかし少し時間が過ぎるとともに、得意とはいえないコースを完走した達成感とレース後は楽しむだけという気持ちが大きくなりパスタパーティーへ。
他のクラス出場の喜田さん夫婦と移動(スタート前はご主人の応援に来ていた奥様に私の携帯や防寒用のウエアーも預かってもらい助かりました)しました。

今大会のパスタパーティーは、これまでの2回とは異なりコロナウイルスの影響を受けたのか規模が縮小されていたように感じました。

最後に

今回のコースは序盤でキツイ上りが組み込まれたコースでロードレースというよりヒルクライムレースと感じてしまうコースでした。が、グランフォンドワールドチャンピオンシップは、毎年、開催国も変わりコースプロフィールも変わりますし同年代の元ワールドクラスの選手も参戦します。そんな選手たちと同じ舞台でレースができるなんて最高です。
来年の開催地はスコットランド・グラスゴーですが、このような大会がなければ行く機会はないでしょう。自転車レース参戦を理由に海外旅行を兼ねてもよいのではないでしょうか?(来年の大会は自転車に係わる競技13種目の世界選手権大会も同時開催される予定なので、滞在期間を延ばしてレース観戦&観光も可能です)。
いつかは表彰台に立つことを目標にこれからも参戦していこうと思います。

写真と文:中鶴友樹さん

関連URL:UCI Gran Fondo World Series http://www.ucigranfondoworldseries.com/

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