2022年10月06日
30年以上も続くロングライド イベンド「ツールドのと400」その魅力は
コロナウイルス感染症の影響を受けて、2年連続で中止となった北陸最大のサイクリングイベント、『ひゃくまん穀プレゼンツ ツールドのと400』が9月17日から19日の日程で開催され、3日間で720名のサイクリストが参加しました。(公式の大会レポートはこちら)
今回で34回目(32、33回は中止)となるが、長い間愛され走り続けられています。当然「人たらし」なイベントなんだろうというのは想像に難しくないですが、フルコースを筆者がゲストとして走ってみて感じたことをお伝えします。
-INDEX
▷コースの難易度
▷地元の理解
▷地域のサイクリストとの強い連携
▷ゲストの声
▷筆者の感想
▷コースの難易度
金沢をスタートし3日間で能登半島を1周。135km/1571m UP(1日目)、161km/3139m UP(2日目)、 121km/1992m UP(3日目)で、約417kmの行程です。最大標高が400mですが、アップダウンを繰り返して累積の獲得標高はご覧のとおり、。海岸線の平坦な区間もありますが、上っては下っての繰り返しもあり、初めて参加すると延々とアップダウンが続くなあ、とそんなイメージでした。楽しんで余裕を持って走るためには準備(トレーニング)をする必要があると感じました。
このクラシックレースのような厳しくも美しい3日間をフルで走るチャンピオンコース、2日間コース、1日間コース、ハーフコースとスケジュールや脚力に合わせて選べるのが大会のポイント。
各コースにはハイライトとなる峠が用意されていて、参加者を飽きさせない(!?)工夫が盛り込まれています。
コース構想は本格的なロードレースを想定していたということもあり内容にもこだわっています。
▷地元の理解
箱根駅伝…とまではいきませんが、沿道からたいへん多くの歓声や応援の声が聞こえてきました。
当然、普段では考えられない数のサイクリストが走行しているわけで、交通状況に与える影響は大きい。自転車イベントは地域の理解があってこそだが、通過する街の人たちは一様に手を振って応援してくれます。信号待ちで励ましてくれる住民の姿も。ロングライドで身体中が痛くてもその声援に思わず応えてしまいます。
▷地域のサイクリストとの強い連携
ゲストとサポートライダーのみなさん
30名以上のサポートライダーが走行管理を行なっています。コース誘導はあるものの、交通規制は行わずありのままの能登半島を巡っていきます。そのためにサポートとライダー役割は重要で毎朝出走前にミーティングを行い、その役割を明確にします。ただ業務といっても参加者と共に楽しみながら走っていた姿が印象に残っています。
ほとんどの方がこの地域のサイクリストの皆さんで、コースを熟知し参加者を励ましながら走る姿は心強いです。
また地域のサイクリングショップも参加者向けのサービスを展開しており、このイベントを支える基盤ができていることを実感しました。
出走前のミーティング。前日に起きたことを共有し次に活かします。
オリジナルステッカー。ゲストやサポートライダーから貰えた参加者はラッキー!?ではなく品行方正な走りをしていたからです。
スペシャルゲストのEFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチームの門田祐輔(左)、岡篤志(中央)、織田聖(右)。本人たちもライドを楽しみながら参加者との交流をしている姿が印象的でした。
頼もしい女性サイクリストのサポートも。富士ヒル年代別1位の栗原裕美子さん(写真左上)はサポートライダーとして最前列で活躍が光っていました。
走行中のお声がけ・コミュニケーションを取ることで参加者の異変を察することができます。特に今回は暑さに苦しめられ、給水をはじめ参加者が熱中症や体調不良を起こさないよう、不調に気がつくよう、ケアに追われました。
▷ゲストの声
ツールドのと400実行委員会の成田 加津利さんの人脈もありビッグなゲストが。筧五郎さん(左上)、森本誠さん(右上)、大石一夫さん(左下)、砂田弓弦さん(右下)
ゲストもサポートライダーと同じように参加者のケアをしながら感想を目指します。それぞれの役割はキャラクターに委ねられていますが、特に森本誠さんはそのキレのある走りで、筧五郎さんはアイドルのように参加者から親しまれていました。レジェンド大石さんはいぶし銀の走りで先導を務め、世界で活躍したサイクルフォトグラファーの砂田弓弦さんも「ツール・ド・フランスの次に過酷」と評価しながらも無事完走しました。
プロデューサー 成田 加津利さん(カツリーズサイクル&デザイン)
成田 加津利さん〜つねに気持ちが明るくなるような〜
–34回目の大会のテーマは?
「みんな気持ちが沈んでいますよね。今までも明るい大会だったけど、もっと明るくしたいと思いました。そのひとつとして旧知の中であるEFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチームの監督、大門宏氏と開催準備中に話をしました。ツールドのと400の事前に行われるツール・ド・北海道でシーズン終了と聞いたので”若い選手のリフレッシュと参加者へ元気な姿を見せて勇気つけてあげたい”とお願いしました。今回のEFのジャージは鮮やかで綺麗じゃないですか」
−ウエアのデザインはとても可愛らしいですね。
「デザイン物に関していえば、サイクリングジャージのトレンドはシックなデザインが主流ですが、コロナ禍の鬱を吹っ切れるようなガツンと賑やかなものにしました。大会Tシャツも普段は着るのに勇気がいるけどイベントだと華やかだよね、というデザインにしています。嬉しくてワクワクする物。つねにあかるい気持ちになるようにデザインをしました」
ゲスト 筧五郎さん〜元気をもらって帰れる〜
参加者とのふれあい・地産地消の地元の味覚を楽しんだ筧さん
「ほんとに坦々と走って参加者のみんなと触れ合うことができるし、地域の名産品を食べることができるし、元気をもらって帰れる。コースも練習になりますし(笑)。今回で6度目の参加になりますが、毎年コースがブラッシュアップされていくので飽きることがないですね」
ゲスト 砂田弓弦さん〜瞬間・瞬間の自分との戦い〜
スタートの前の公式撮影は砂田さん!(スマホです)
「そうですね、難易度としてはまあまあくらいでコース的には物足りなかったですが、いい大会ですね……。
なーんちゃって嘘です(笑)。
初めて走ったけど、めちゃくちゃキツくてこれは練習して来ないとダメですね。すこし舐めてかかっていた。たとえ毎日練習をやっていたとしても、僕だったら30分くらいしか乗れないから、週に1度は100kmとか150kmとか走っていないと参加できないですね。とはいえグランフォンドは楽しいですね。初めて走ってみたけどレースではないのだけれど“この人に着いていこう”、“ペースを合わせてみよう”とか、瞬間的な自分との戦いがあって面白かった。機会があればまた出たいですね」
▷筆者の感想
とにかく「明るく」「笑顔になる」。サポートライダー・参加者と分け隔てなく人の暖かさを感じるイベントでした。そして沿道からの地域の皆さんからの応援がどんなに力になったか。食べ応えのある地域の食文化も心に残りました。1日目の夜の輪島では先輩方と訪問した、おかみさんが切り盛りするくたびれた食堂へ。暖簾をくぐると“ああ、失敗したかー”と、思いきや、こんなに味覚に彩りあるうまいものが喰えるなんて! 〆の屋台風ラーメンには、おかみさんからメカブの差し入れ。「ラーメンに入れてごらん」と。訝しげに入れてみると、なんと磯の香りがこれほどまでに繊細な味わいに変えるんだなあ、と驚きました。
一期一会のそんな刹那の発見を楽しみました。
ただしコースは想像以上に難易度が高く「ちょっと侮っていた」というのが正直なところです。急勾配の上り坂、延々と続くアップダウンなどの試練に耐えて、それを克服した時の達成感。フィニッシュラインを越えるたびに爽快な気分にもなりました。
能登半島といえば風光明媚、大自然と絶景がこれでもかと広がるスポット。加えて豊富な海の幸とグルメも楽しめます。
あの交差点で言葉を交わした御仁とまた逢えるだろうか、と今から楽しみです。
夏のなごりを感じながら、3日間たっぷり楽しめるグランフォンド。次回はもっと多くの皆さんとこの感情を共有したいものです。
関連URL:ひゃくまん穀プレゼンツ ツールドのと400 http://tour-de-noto.com/
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著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得
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