2022年09月02日
“人生で一番苦しくて短い1時間”アマチュアサイクリスト中里マサルのアワーレコード挑戦 47.750km達成 #pushingthe1hlimit
250m屋内型バンクのTIPSTAR DOME CHIBA(注1.)にて、“アマチュアサイクリスト”中里マサルさんがアワーレコードに挑戦。所属するRCC(ラファサイクリングクラブ)のサポートとPIST6の舞台であるTIPSTAR DOME CHIBAを管理する株式会社JPFの協力のもと実現した。
注1.TIPSTAR DOME CHIBAでは普段PIST6(千葉市が主催する国際基準の自転車トラックトーナメント)が行われている。
中里さんはジュニア時代には国体の少年の部、ポイントレースで優勝した実力者。数年前まで日本のトップカテゴリーで走っていたがヨーロッパのプロチームへのトライアウトを機に選手生活に一旦終止符を打ち、アマチュアサイクリストとして活動する。近年ではトラックレースにも打ち込んでおり、4km個人追い抜きでは実業団記録に迫る好タイムを刻んでいる。全日本選手権でも上位に食い込むなど、公務員として業務をこなしながらも調子を上げているもよう。
今回はNFが介入せず公式記録ではないもののTIPSTAR DOME CHIBAの機材を用いて計測を行った。千葉の立地は、伊豆のベロドロームや美鈴湖自転車競技場のような高地ではなく、海抜18mという低地である。低地の場合は空気密度が高く記録は狙いにくくなる。しかし最新の室内板張りの250mバンクは走行した競技者は口を揃えて走りやすいと述べている。室内であることで空調設備も整っており、もちろん風の影響はない。条件としては悪くはない。
序盤は1周(250m)18秒台と良いペースを刻む。1kmあたり1分12秒のペースで、およそターゲットの時速50kmである。しばらく良いペースで進むが20分を経過したあたりから19秒台のペースに落ち込んでいく。20秒を割ることはなかったが19秒前半からペースアップができない。終盤にかけても19秒台をキープしフィニッシュ。記録は191周で47.750km(暫定記録)となった。
クルーが周回のタイムをボードで伝える RCCの矢野大介さんが、インスタグラムでライブ中継を行った 中里さんのパートナーである今井美穂さんは東京2020 マウンテンバイクXC女子エリートの代表選手だ
人生でもっともキツく短い1時間!
中里さんが挑戦に至った経緯は
「流行っているというのはありますが、国内ではブリヂストン今村選手の記録(52.468km)しか正式記録はないです。一般のサイクリストがやろうと思っても今村選手の記録がかけ離れすぎていて、挑戦する気にならないです。アワーレコード挑戦って記録を更新しないと意味がない、という空気もありますから。
そこで僕がアマチュアとして記録を残しておくことで挑戦がしやすいのではないかと。
4キロ個人追抜きのタイムでこれくらいの実力だったら、これくらいで走れるという指標も出せたので、僕の記録を見て挑戦しようという人がたくさんでてきて、活性化したら良いと思っています。それが一番の想いですね」
目標には惜しくも届かず
目標は50kmだった。これは現在の女子アワーレコードの49.254kmを意識したもので、いかにその数字を越えられるか、迫れるかにフォーカスしている。机上計算では1時間を平均300w以上で走行すれば到達可能であるとの見解を示していた。
もう一回やれって言われたらやりたくないけど…、もう一回やりたいです(笑)
次、やるなら1年間準備をして、目標(50km)をしっかり定めてやりたい。一年かけてでもやる価値があると感じています。
自分はなんでもそうなんですけど、これ以上ないと納得できるところまでやりたくなる性分。もちろん納得していないのでまたやりたいです。でも今はマジできついです(笑)
アマチュアや学生、ジュニアの選手もエアロダイナミクスについて熱心に研究をしていますよね。そういう人たちのスポーツ選手としての何かに火をつけたいなって思ってやりました。
プロとかアマチュアとか、ジュニアの記録とかそういうものを積み上げて、活性化していって、みんなで知識を共有して。
プロじゃないんだし情報をどんどん共有して、みんなで記録を狙っていけたら面白いですよね。今回の挑戦で少なからず得たものはあると思うので、誰かがやりたいといったら伝えていきたいと思います。
選手を引退した後もこうして目標を持ち、情熱をかけてスポーツに打ち込むことで生きがいとなるし、幸福で豊かな生活を営む糧となるでしょう。
「1年かけて準備をしたら50kmを超えられるだろう」そう自信をのぞかせる中里さん。屈託のない笑顔と自分の目標に向かって努力を重ねる姿は清らかで美しい。
チェーンとスプロケットはロード用規格の薄歯を使用した ギアは58x15T ホイールベースはできるだけ長くしている ホイールのリム幅に合わせて19mmのタイヤを用いた ハンドルバーはAeroCoach Vorzug クランク長は170mm デバイスはLEOMO TYPEーSを用いる 使用したバイクはサーヴェロ T4
関連URL:JPF https://www.jpf.co.jp/
PIST6 https://www.pist6.com/
Rapha https://www.rapha.cc/jp/ja/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得