2019年01月21日
【OCTAGON Brewing】サイクリストを惹きつける、ある飲み物とは?
平野啓介さん(左)、ブリュワーの千葉恭広さん(右)。ミュンヘン工科大学のビール醸造科学部で学び、マイスター資格を取得。ビール王国なのでたくさん学部があると思っていましたがベルリンとミュンヘンの2校だけとのことです。
「まず……僕がクラフトビール作りを志すようになったかというと、この世界がとても奥深いものだったからです。それを日本のみなさんに知ってもらいたいという気持ちがあり、そのためにビールを一から学ぶためにドイツへ行きました」と千葉さん。
「いろいろ話を聞いてここに決めました。浜松の立地的にクラフトビールが盛んで自然に広まるような土地柄でもないというところが、挑戦しがいのあるように感じましたし。そういうところで色々な人たちに知ってもらうために」。
静岡は県単位では地ビール、クラフトビール醸造所数は多いけれど、そのほとんどが伊豆や東部地方だといいます。平野さんいわく、日本における地ビールが観光地=町おこしのツールであったことに起因するのではないか、と。
「静岡県でも西部地方はどちらかというとクラフトビール不毛の地。ゼロからとは言いませんし、地ビールメーカーはありますが、ブリューパブはないのです」と平野さん。
醸造所にも潜入。5つのタンクが並んでいます。ここでは1回に300リットルのビールを作れるとのこと
自転車と関係性は?
平野さん:「後付けの理由にはなりますが、サイクリングのワークアウト後に集える場所になれば、ということで。あくまでも仕事として行っています。この建物は弊社で所有しているものですが、最初は誰か借りてくれればいいなと思っていました。でもありきたりな居酒屋みたいなものができても街づくりとしては面白くない。そこで、自分たちでなにかやろうと考えはじめました。
とはいうものの、ここの事業をはじめるきっかけは、それこそ自転車でした。チームの仲間とレースに出るために遠征をしますが、僕がお酒を飲めないことをいいことに、仲間たちは遠征先でお酒を飲むわけですよ。僕は下戸なのでお酒を飲まれることに対して嫌な気持ちは湧かないですし、帰り運転するのも悪くはないので。
そんなときにレースの遠征で全国各地を旅するなかで、ブリュワリーを訪ねる機会がありました。だいたい辺鄙なところにありますが、けっこうお客様がいたりする。
“あ、クラフトビールって人が集まるコンテンツなんだ”と感じました。
これは面白い。そしていろいろと調べていくと、ビール自体は“足が速い”飲み物だということがわかりました。
アルコール度数が低いこともあり他のお酒に比べて変化に弱いんです。輸送や温度変化に弱いので作ったところで飲むというのが望ましい飲み物なんです」。
ヨーロッパでは地元のパブで地元のビールを飲むのが基本だし、アメリカもだいたい同じ。おしゃれな人たちがトレンドとしてローカルクラフトビールを飲む風潮もありますが、そんなものとは縁遠いテキサスに行った時に寄ったスーパーで陳列されていたのもほぼ地元のビールでした。
地元(ローカル)のビールを飲もうというのは世界的には普通のことなんですよね。
そんなローカルというキーワードは僕らの不動産の商売とフィットする。
でも、ビールを日本の原材料で地産地消しようとするとおかしくなる。良いホップは取れないし、ビール用の大麦はそもそもあまり生産されていないし。原材料ベースでの地産地消は無理だけど、製造場所ベースとしてはすごく向いているな、と。“地元で作って地元で飲もうぜ”という不動産業としてローカルで街づくりをしたいという気持ちと「Brew Local, Drink Local」というコンセプトがすごくフィットしました。
僕は飲めないけど(笑)」。
オクタゴンオリジナルのクラフトビールの飲み比べセット。開栓したての新作をいただきながら。ソバ、コーヒー、柑橘などフレーバーが楽しめた。こうやって、いろいろなビールが飲めるのが楽しい。
ビールの種類はどれくらいでローテーションするんですか?
千葉さん:「1ヶ月ほどでリリースしたものはなくなります。その間に作ったものを次々と投入していますので、毎週来てもらったとしてもある程度入れ替わっていますから楽しめますよ、と皆さんにお伝えしたいです(笑)。
“ジューシーフルーツ”というビールは当店の定番で常時ありますが、ブラッシュアップしようと仕込み毎にレシピを工夫しています。今はそれ以外のビールは毎回キャラクターを変えてリリースしています。このライナップからバランスをとって作っていますが“これを出したら売れ続けるから作る”のではなく、クラフトビールって色々な可能性があるんだな、ということをお客様に知ってほしいという想いで作っています」
(Photo:octagonbrewing)
スモークBBQも人気です。このビーフブリスケット、プルドポーク、ポークスペアリブは自転車つながりで出会ったアドバイザーの手ほどきを受けたという。これのために訪問するのもアリです。かなりウマイです。ご馳走様でした!
ビールを求めて
「去年の夏は、浜松にはビアフェスがないので、じゃあやろうと。そして紆余曲折はあったんですが実現したんです。ブリュワーさんへむけた出店要項には“3000人くらいの集客予想”と書いたのですが、実際の来場者は16000人!当日はお昼から20時まで出店する予定でしたが、想定以上にお客様が来てしまい、大半は17時前に売り切れてしまった。やっぱりビールは人を集めるなあと。
若い夫婦や子連れ家族は、だいたい大型ショッピングモールに行ってしまうのであまり市街地にはこない。しかし今回のビールフェスは浜松の駅前で開催したんですが、そういった若い人たちが大勢来てくれたので驚きましたね」
サイクリストはなぜビール好きが多いんだろう。
平野さん:「アメリカの自転車ポータルサイトではときどきビールの特集をしていて、ウインターベストビアーとか夏に飲むのはこれ。みたいな特集が定期的に組まれてますね。
自転車じゃないけれど、ミッケラー(デンマークのビール醸造メーカー)は世界規模で店舗を展開していますが、創業者がサブスリーランナーということもあり、各地でランニングイベントをやっています。
僕は自転車が好きだから、せっかくなのでサイクリストが集まれるような何かができないかなと。そこでサイクリングクラブと称していろいろと始めています。このお店としてやるとは決めていませんが、自転車を使って、このローカルでコミットする方法がないかな、と模索をしています」。
Octagon Brewing Cycling Squadというショップチームで密かに活動中。オリジナルのサイクリングジャージも店内で購入できます。
※自転車の飲酒運転は違法です。飲んだら自転車を押して帰りましょうね。
店舗紹介
オクタゴンブリューイング
http://octagonbrewing.com/
住所:静岡県浜松市中区田町315-25
営業時間:月・水・木 18:00~23:00
金 18:00~24:00
土 17:00~24:00
日 15:00~21:00
定休日 :毎週火曜日
FAX / 053-401-2009
Mail : info@octagonbrewing.com
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得