2018年03月15日
魅力溢れる伊豆半島で極上サイクリングを【前編】
静岡県東部地域スポーツ産業振興協議会(E-SPO)による、伊豆半島のサイクリングスポットをスポーツバイクで巡るメディア対象のファムトリップが実施され、西伊豆の魅力満載なサイクリングツアーが行われた。
2020年東京オリンピック自転車競技(トラック・MTB)が開催される静岡県伊豆市。いまもっともサイクリストから注目されている場所だ。そんな静岡県の伊豆半島にフォーカスし、静岡県でグループライドを数々開催しているリンケージサイクリングの田代恭崇がガイドに迎えて行われた1日目は平坦コース西伊豆を20km、松崎町の名所を巡り、2日目は起伏が多い南伊豆をぐるっと回る90kmを走行。紺碧の駿河湾、伊豆半島ジオパークの大自然、マニアスポットをご紹介しよう。
ファムツアー西伊豆20km(獲得標高83m)
ファムツアー南伊豆90km(獲得標高1,560m)
今回ガイドをしてくれたのはリンケージサイクリング代表の田代恭崇さんと、対馬伸也さん。田代さんは04年アテネ五輪日本代表、2度の全日本チャンピオンと著名なサイクリストでもある。
リンケージサイクリング代表 田代恭崇さん
拠点は堂ヶ島アクーユ三四郎。正面に景勝地・三四郎島を見下ろす断崖の上にある老舗温泉宿だ。全室がオーシャンビューで見下ろせば青い海、美しい夕暮れも楽しめる。
(C)リンケージサイクリング
堂ヶ島アクーユ三四郎
http://www.ac-sanshiro.com/
窓の外には三四郎島と西伊豆の澄んだ青い海が一面に広がっている。
県の天然記念物に指定されている三四郎島は、干潮時には一番手前の伝兵衛島まで瀬が現れ、歩いて渡ることができる。これをトンボロ現象とよび、日本でもとても珍しいことだという。
さて、初日は20kmのツアーだ。堂ヶ島アクーユ三四郎をスタートし、4kmほど南下した松崎港のすぐそばにある、松崎 民芸茶房でランチ(笑)。でも朝早く都内から移動しているので、お腹はペコペコ。地元だからこそといえる定食をいただく。
民芸茶房(みんげいさぼう)
〒410-3611
静岡県賀茂郡松崎町松崎495-7
TEL.0558-42-0773
http://mingei-sabou.com/menu.html
江戸時代末期に江戸城でも使われていたという伊豆炭(くぬぎ炭)。ここでは伝統を残そうと焼き魚料理はこの炭を使っている。この炭を使ってふっくらと焼き上げられた魚は風味豊かでウマい。
干されていたみりん干し。うむ、これを食べるためなら再訪ありだね
腹を満たした一行は、このあたりの伝統的な壁塗りの「なまこ壁」を見に行くことに。目地の盛り上がった形状がなまこに似ている?? 生体のなまこを想像すると、おどろおどろしくそびえる壁を頭の中に描いてしまったが、全く正反対の美しい漆喰を用いた壁であった。なんでも日本の風土に適していて、防火にも役立ったとか。江戸時代末期から明治時代にかけて、この地に増えていったという。そういった風土や経験から培われた建築物で一度は過ごしてみたいものだ。
この環境芸術のような美しい構造体をなぜ、なまこの姿に重ねたのか。
この歴史的建築物を見学したあとは、人気を集めているという伊豆八十八ヶ所霊場(お遍路さん)のひとつ、帰一寺(きいちじ)へ。スムーズな道のりであっという間に到着。信号も少なく快適だ。
四国では年間30万の人が訪れるというお遍路さん。この伊豆にも伊豆八十八ヶ所霊場があり江戸時代には盛んに行われていたそうだ。石碑などもあり、確認できるだけでも173年前にさかのぼる。昭和の初めに衰退してしまったらしいが、昭和40年ごろに、明治時代の納経帳が見つかったことで復興がはじまった。今回訪問した帰一寺は、松崎町にある80番札所にあたる霊場である。総行程は444km。最後の88番札所はあの修善寺だ。
「伊豆88遍路」とし、歩いたりバスで寺巡りを楽しむコースを展開しているが、これを自転車で、という周るという試み。またスマートフォンアプリで「伊豆88 遍路」をサポートしているので、計画も立てやすいだろう。温泉施設や旅館、食事処も充実し、「観光」「健康」「信仰」をぞんぶんに楽しめる。
帰一寺
〒410-3606 静岡県賀茂郡松崎町船田39
ご住職によると、鎌倉時代に元朝の正使である一山一寧が国書を持って渡来したが、伊豆の修善寺に幽閉されていたのだという(元寇の時代ですね)。幽閉が解かれてから、帰一寺や慈雲寺の開山、鎌倉・円覚寺や浄智寺の住職をへて、後宇多上皇の懇請に応じ上洛して南禅寺3世となった。能筆家としてしられ、朱子学や書を日本にもたらした重要な人物だった。
C)リンケージサイクリング
ふらっと訪ねても、住職がおられれば座禅も組める。前もって訪問時間を連絡しておけば確実かも
道の駅 花の三聖苑伊豆松崎へ
帰一寺から2キロと離れていない場所には道の駅 道の駅 花の三聖苑がある。ここの自動販売機ではスペアチューブ(700Cのみ)が売られているのだ。2種類のバルブの長さが用意されるという親切設計。お食事処や温泉施設、物産販売エリアなどもあってゆっくり立ち寄ってもよい。
道の駅 道の駅 花の三聖苑
〒410-3604 静岡県賀茂郡松崎町大澤20−1
電動自転車シェアリング「HELLO CYCLING」の基地もあるのだ
明治時代の公立小学校、大沢学舎がここに移築されている。風情ある佇まい。またとなりには三聖会堂がありアンティークな雰囲気に
ありそうでなかなか無い、スペアチューブの自販機(専用の販売機を海外で見かけたことはあります)。はたして常温なのか、冷蔵なのかどうか議論へ発展。購入してみてのお楽しみ!?
ここからは復路となって、9キロほど走行する。訪れたのは堂ヶ島天窓洞遊覧船。自然が作り上げた珍しい洞くつめぐりだ。
堂ヶ島天窓洞遊覧船
〒410-3514 静岡県賀茂郡西伊豆町仁科2060
躊躇することなく狭い洞窟へ入って行くクルーザー。ちょっとしたアトラクション気分だ。西伊豆は午後を過ぎると風が出ることがあり、欠航になることもあるとのこと。
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得