2017年10月25日
【ジャパンカップ2017】コンタドールがやって来た! 雨が降っても応援は熱かった!
国内最高峰のロードレース「2017ジャパンカップサイクルロードレース」が、10月20~22日、栃木県宇都宮市で開催された。台風21号の接近で週末を通して雨模様となったが、アルベルト・コンタドールの来日など話題満載で、例年と変わらないファンの熱気がレースを盛り上げた。
コンタドール初来日! 最後の雄姿に熱視線
毎年、世界的なトップ選手が来日するジャパンカップだが、今年の目玉は惜しまれつつも今季限りでの引退を表明したアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)だ。今回が初来日&ラストランとあって、多くのファンが宇都宮に押し寄せた。
コンタドールと言えば、ツール・ド・フランス2勝を含め、3大ツールで7度の総合優勝を誇る偉大なレジェンド。その記録以上に、山岳で果敢なアタックを繰り返すアグレッシブな走りには世界中にファンが多い。今年9月、地元スペインでのブエルタ・ア・エスパーニャを最後にUCI公認レースからは引退したが、今回、選手としては日本で最初で最後の走りとなるジャパンカップクリテリウムでその雄姿を見せてくれた。
レースでは、3連覇を狙うチームメイトの別府史之のため、集団の先頭に立ってコントロールを図り、その走りを宇都宮大通り詰めかけたファンの目に焼き付けた。走り以外でもチームプレゼンテーションやトークショーのステージ上に登場したり、サインの求めに応じたりと、日本のファンとのつかの間の交流を楽しんだコンタドール。
「以前から日本に来たかったけど、、やっと夢が叶ったんだ。日本のファンの応援は本当に驚きだった。また絶対に戻ってくるよ」と笑顔で語っていた。
ブエルタ以降、選手としての活動は今回のジャパンカップと翌週の上海でのイベントのみというコンタドール。日本のファンにとっては、またとない貴重なチャンスとなった
記者会見では「今は食べ物のカロリーも気にしなくなったし、おいしいワインも飲めるようになった」と引退後のリラックスした生活も明かしていた
すでに引退しているとはいえ、クリテリウムでは別府史之のために集団をコントロール。現役時代はあまり見られなかった役割に、多くのファンが熱狂した
森林公園のトレックブースにも2日連続で登場。雨の中、多くのファンのサインや写真の求めに応えていた
ロードレースの合間には、ステージ上でのトークショーに参加。栗村修さんらと最後のレースとなったブエルタを振り返った
会場ではアルベルト・コンタドール財団への募金も行われていた。財団の活動は、子どもたちのための自転車学校の運営、捨てられた自転車の再生・寄付、かつてコンタドール自身が経験した脳卒中の認知度向上などである
カノラが史上初の土日連勝! 地元ブリッツェンの雨澤が表彰台!
レース自体も、見どころ満載だった。マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ)がジャパンカップ史上初のクリテリウム、ロードレースの連勝を達成。そして地元・宇都宮ブリッツェンの雨澤毅明がロードレースで表彰台に上がる活躍を見せた。
21日、小雨が降る中でのクリテリウムはゴール前ストレートで発生した落車をしり目にカノラが圧倒的なスプリントを見せて圧勝した。翌22日のロードレースも、朝から悪天候。雨脚は強くなる予報で、レースは14周から10周に短縮されてスタートした。ワールドチームの海外勢が序盤から積極的に逃げる例年とは異なる展開の中、終盤に先頭にブリッジしたカノラがスプリントを制し、2日連続の勝利をつかんだ。
今年はツアー・オブ・ジャパンでもステージ3勝しており、日本のビッグレースで5勝を挙げたことになるカノラ。日伊混成チームであるNIPPOヴィーニファンティーニにとっても大きな勝利となった。
雨澤にとっては不利な展開から挽回しての表彰台だった。序盤から他チームが仕掛けるなか、ブリッツェンは逃げに選手を送り込めなかった。しかし、チームメイトのアシストで、雨澤は最終的に5人の先頭集団に合流。ゴール前のスプリントではいち早く仕掛けたが、惜しくも3位となった。それでも、ロードレースでは2015年の新城幸也以来の日本人表彰台で、さらにU23選手賞、アジアンライダー賞も総なめ。地元ブリッツェンにとっても設立9年目で初のジャパンカップ表彰台となり、地元ファンから温かい拍手が送られた。
今季はU23日本代表としてツール・ド・ラブニールや世界選手権で健闘し、Jプロツアーでも2勝を挙げるなど日本期待の若手として大きく成長した雨澤。「自転車をやっているなら、ツール・ド・フランスを走りたいというのは考える」と語る夢にも、大いに期待したいしたいところだ。
8年目を迎えたジャパンカップクリテリウム。小雨降る中、沿道では今年も多くのファンがプロのスピードに魅了されていた
2位以下に大差をつけるスプリントでクリテリウムを制したマルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ)
序盤から逃げ続けた初山翔(ブリヂストン アンカー サイクリングチーム)、トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)、アントワン・トルーク (チーム・ロットNL・ユンボ)の3名が山岳賞を分け合った
ロードレースは、大雨で14周から10周に短縮。若きエース雨澤のために地元・宇都宮ブリッツェンが集団コントロール
雨の中、今年も多くのファンが勝負どころである古賀志林道の上りに集まった
ブリッツェン雨澤を先頭に最終周回へ。会場のボルテージも最高潮に
小集団スプリントを制したマルコ・カノラが、史上初のクリテリウム・ロードレース連勝を飾った
1位マルコ・カノラ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)、2位ベンジャミン・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)、3位雨澤穀明(宇都宮ブリッツェン)。今季急成長の22歳の雨澤毅明、宇都宮ブリッツェンにジャパンカップ初表彰台をもたらした
雨にも負けず、応援も全力で!
悪天候にもかかわらず21日のクリテリウムは4万8,000人、22日のロードレースは7万人、2日間で11万8,000人(主催者発表)と例年と変わらず多くのファンを集めた今年のジャパンカップ。コンタドールの初来日&ラストラン目当てのファンも多かったものの、ユニークなスタイルでひいきの選手やチームを応援する姿も数多く見られた。
ここでは雨にも負けず全力で応援するファンのスナップを集めてみた。
浅草駅~東武宇都宮駅間をノンストップで直通運行する「ジャパンカップトレイン」で宇都宮にやってきた都内在住の女性ファンのみなさん。翌日のフリーランにも参加するなど元気いっぱい。「コンタドールも楽しみだけど、初来日したロットNLユンボも応援しています」
2013年から毎年ツールに出かけ、コンタドールを応援している東京の女性ファン。この日は、戦績を描いたお手製のフラッグで応援。「2009年ツールでランス(アームストロング)にいじめられながらも、勝った姿を見てファンになりました。来年まで走ってくれると思っていたので残念です。ジャパンカップは初めてですけど、最後なので来ました!」
痛チャリで毎年フリーランに参加している兵庫県の男性。「雨のせいか今年は選手たちのペースが速くて全然一緒に走れなかった。でも、彼らの強さを感じられてすごく楽しかった! 日曜はBMC、月曜はロットNLユンボのアフターパーティーに参加する予定で、仕事を休んで満喫します!」
トレックのジャージに身を包んだ大阪、京都、奈良から観戦のサイクリスト3人。「関西でもレースはあるけど、ジャパンカップはトップ選手の走りが見られるのがうれしい。今年は来るかどうか迷っていたけど、コンタドールが来ると決まってやってきました。クリテリウムで走る姿を見て涙が出そうでした」
7時に会場入りしてゴール前に陣取った仙台からの女性ファン。「去年もこの場所を取って、ヴィレッラの勝つところを生で見れました。海外の選手の走りが楽しみだし、自分がアンカーに乗っているので、アンカーの選手たちも応援しています!」
ステージ前の絶好のポジションをゲットした地元・那須ブラーゼンのファンのみなさん。「雨だったのでいつもより遅く(!?)朝4時から場所取りしました。もう3次会の気分です(笑)。走る方も戦いですが、見る方も戦いです! 今年でブラーゼンから移籍する吉岡選手に頑張ってほしい!」
トレックのバルーンをもらって、ニッコリの愛知県から来たご家族。小学4年生になる一番上の男の子は、さいたまクリテリウムでロマン・バルデからヘルメットをもらって、自転車に興味を持ち始めたとのこと。「今度、ピナレロのジュニア用のロードバイクを買ってあげるんです」とお父さん
マリオとルイージのコスプレで、一足早いハロウィン気分を満喫している神戸のご家族。「クリテリウムでトレックの長髪の選手(クーン・デコルト)に『マリオー!』と声をかけられて、サコッシュをもらいました。コンタドールはオーラが違いましたね」
映画『Vフォー・ヴェンデッタ』の仮面の男のコスプレで登場した金沢の男性。「今まで遠くてなかなか来れなかったけど、今回はコンタドールが来るというので初めて来ました。クリテリウムでは一瞬ダンシングするところが見れてうれしかったです!」
初来日したロットNLユンボファンの女性ファン。「ロットNLは若手育成に力を入れていて注目です! 今朝はウォームアップ中にクーン(ボーマン)からボトルをもらいました」
ジャパンカップ名物のひとつ悪魔おじさん風の槍を持って応援する男性ファン。初めてきたのは1996年でもう10回以上来ています。今はNIPPOを応援しています! クリテリウムで勝ったので、今日も頑張ってほしい」
ひときわ目立つ被り物で、応援していた男性ファン。「去年はカンチェラーラを作ったけど、今年はコンタドールと、リッチー・ポート(BMCレーシング)と中根英登選手(NIPPOヴィーニファンティーニ)の被り物です。まわりにアンケートをとってこの3人に決まりました!」ちなみに中根選手の裏がポートの顔になっているという作り
「ボトルを投げて!」のボードでアピールする栃木県小山市の男性ファン。スタートフィニッシュ地点直後の上り坂で待ち構えるも、レース終盤まで成果ゼロ。「ゴールした選手が投げてくれるのを願ってるんですが…」とのことだけど、ゲットできたかな?
岩手からやってきたNIPPOヴィーニファンティーニのファンのお2人。「数年前にクネゴが加入して、日本人選手の育成にも力を入れるようになって応援しています。クリテリウムもカノラが勝ってよかったです!」
那須ブラーゼンの地元から、テントを持ち込んで雨宿りしながら応援。「ブラーゼンもだけど、同じ栃木のブリッツェンも応援しています!」
ジャパンカップHP→ http://www.japancup.gr.jp/
(写真/本人、編集部)
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。