2017年08月06日
69のカーブを越えろ!【第1回チャレンジヒルクライム岩木山】
規模の大きいヒルクライム大会は、もちろん素晴らしい。例えばMt.富士ヒルクライム。単純に1万人のライダーが集まるその光景に圧倒されてしまうし、「5合目を目指す」という1万人分のエネルギーが同じ場所に集約する光景には、身震いを覚えてしまうほどだ。
しかし、参加者が少なくても、素晴らしい大会になるのがヒルクライムの面白いところ。クライムジャパンシリーズの「チャレンジヒルクライム岩木山」はそんな大会のひとつ。2017年の参加者は415名ほどだが、それゆえにみんなの顔が見える大会、ライダー自身も大会を作っている、という感覚になる大会だ。
岩木山は津軽富士と言われる、青森県で最も標高が高い1625mの山。この大会はその8合目まで通る「津軽岩木スカイライン」を駆け上がる。津軽岩木スカイラインは、普段は自動車専用道路。この日だけサイクリストのために開放される。県内の参加者が多いのだが、その貴重な1日を体験するためにJALサイクリングチームをはじめ、県外からの参加者もちらほら見られる。
コースは15㎞と10㎞の2種類。15kmコースは岩木山総合公園をスタートし、5㎞ほど鰺ヶ沢街道を通って岩木山スカイラインを10㎞上るもの。10㎞コースは津軽岩木スカイラインの入り口がスタートになる。
このスカイラインがかなりの難敵。標高差798m、最大斜度11.8%、平均斜度 8.1%の間に69ものヘアピンカーブが規則的に並ぶ。通常、ヒルクライムのコースは、多少下りや平坦部分があり、休めるところがあるものだが、岩木山のコースにはそれがほぼない。
実際に15㎞コースを走ってみたが、そのつらさが十分に感じられた。スカイライン入り口までの5㎞は、緩めの上りと下りが続く変化があり、ウォーミングアップには最適。しかしスカイラインに入ってからは、キツさだけがのしかかる。
最初の約5km、鰺ヶ沢街道は緩やかなアップダウンが続く。奥に見えるのがこれから目指す岩木山だ
津軽岩木スカイラインの入り口。ここからへアピンに次ぐヘアピンがはじまる
ちなみに岩木山の航空写真がこれ。細かな九十九折れがひたすら続くのがよく分かる
スカイラインの起点から料金所まで1㎞ほど上り、料金所を越えてからは、ブナの原生林を切り開いたヘアピンカーブが続く。カーブの度に「■番」と表示してあるのだが、その親切さが意外とつらい。斜度がよりキツくなるカーブを上って直線に入り、またカーブを上って直線へ。「しばらく走ったな」と思ったが、思いのほかカーブの番号が増えていかない。
「20番」くらいですでにギアがなくなり、脚にも相当くる。さらにカーブの繰り返しは、肉体的にだけではなく、精神的にも強さが要求される。当日は日差しが強く、生い茂るブナの木陰が涼しさを与えてくれたはありがたかった。
途中2カ所あるエイドステーションや、ゴールに近づくにつれ増える応援で脚に力が入る。カーブ番号50を超えたあたりで、森林限界に近づいたせいか、ブナの森が途切れ途切れになり、視界も開けてくるが、眺める余裕はあまりない。ひとつずつカーブの数字を増やしていくのに集中するだけ。69のカーブを上り、ようやく8合目の駐車場に駆け上がった。
ゴール付近からの景色は絶景だ
応援者やすでにゴールした参加者がゴールに飛び込むライダーを迎える
小さなヒルクライマーも難コースを走りきった!
カーブはとくに勾配がきつくなる
カーブごとに設置された看板
完走後のご褒美は、眼下に広がる津軽平野と日本海の景色と、バナナと新鮮な朝採れトマト。ヒルクライムの後のトマトが意外といい! トマトとバナナを手に持ちながら、しばし景色に見とれるのは悪くない。
しかもご褒美は下山後にもある。カレーのサービスがあるのだ。ヒルクライムの参加賞にカレーは珍しいが、疲れた脚にカレーが染みわたる。
チャレンジヒルクライム岩木山は、精神的にも肉体的にも、かなりキツい部類のヒルクライムに属する大会だと思う。走りごたえは十分すぎるほど。県外の坂バカにとっても遠征先、武者修行先としてきっと満足できる。また完走率は約95%というところから、完走を目指すライダーにとってもチャレンジし甲斐もある。交通規制がある大会にも関わらず、制限時間が長いのもその理由のひとつだろう。
いろいろなレベルのライダーが楽しめて、しかも満足できる。「地元のヒルクライム」としてまた参加したくなるかもしれない。
優勝は地元青森県の丹藤 翔さん(Gaudente Ciclista)。タイムは46分36秒79だった
フィニッシュ地点ではバナナとトマトが振る舞われた
スタート地点に戻ってからは参加賞のカレーライスをパクッ!
JALサイクリングチーム(左)や弘前大学サイクリングクラブ(右)などチームでの参加も多かった
(取材・文/今 雄飛、写真/小野口健太)
【大会データ】
チャレンジヒルクライム岩木山 (6月25日開催) http://www.iwakisan1238.com/
■ 出走415名/398名完走
●15㎞コース
スタート標高:310m/フィニッシュ標高:1238m
最大斜度:11.8%/最少斜度:1.5%/平均斜度:6.2%
制限時間:2時間15分
●10㎞コース
スタート標高:440m/フィニッシュ標高:1238m
最大斜度:11.8%/最少斜度:4.5%/平均斜度:8.1%
制限時間:2時間
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。