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2019年07月17日

フィジーク本社工場 視察レポート

フィジーク(fi’zi:k)の本社は、ピナレロ社と同じイタリア北部ベネト州にあるポッツォレオーネという街にある。ベネト州はコンポーネントメーカーのカンパニョーロ社も本社を置くなど、イタリア自転車ブランドの集積地となっている
ブランド設立は1996年。現在は世界最大クラスのサドルメーカーであるセラ・ロイヤル社(1956年設立)のグループに属し、同グループのハイエンドラインを牽引する存在だ。
近年はサドルだけにとどまらず、2010年からはシューズがラインナップに加わるなど「身体と自転車の接点」を追求する、職人気質のブランドだ。
製品の実力はゲラント・トーマス(チームINEOS)、ナイロ・キンタナ(モビスターチーム)、そしてイタリアのスーパースター、ヴィンセント・ニーバリ(バーレン・メリダ)ら、トッププロ選手が愛用することからもわかる。
日本のサイクリストには2000年代前半に登場し、現在も改良を続ける「アリオネ」の印象を持つ方も多いだろう。
サイクリストの多くが苦労するサドル選びに「アリオネ」は、その形状やしなりによって「答え」を出し、サイクリストの悩みを解決した。その後、他メーカーがこぞってコンセプトを追随した「アリオネ」は、改良を加えながら今なお世界中で愛されている。
今回はそのフィジークの物づくりが、実際にどういう場所で、どういった人々によって行われているのかを取材するために、製造ラインの取材を行った。


本社工場を視察


工場はセラ・ロイヤルグループ全体のサドルをブランドによってライン区分されている。
※以下で紹介する写真はラインによって作られているサドルが異なりますのでご了承ください。

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サドルは金型をベースに作られる。以前は一つひとつクッションを貼り付けていたが、現在は最新の機械でベースにクッションを貼り付けている。
右の写真は同社の数あるサドルの金型だ。これを見るだけで同社のラインナップ数が膨大な数に上ることがわかる。

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次の工程はサドル座面の表皮の型取り作業。作業はゆっくり丁寧だ。担当者は手馴れた手つきで進めていく。見ていて楽しくなる。

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続いては表皮の裁断だ。「表皮にデザインを施すには皮革などの縫い合わせが必要でしたが、縫い目が痛みの原因にもなるため、加熱圧着方式(ヒートウェルディング製法)を開発しました」と担当者が教えてくれた。なおフィジークは2012年のアリオネR1、アリオネR3によって初めてヒートウェルディング製法を採用した

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実際に触れたが凹凸がない。

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ベースにクッションを付けたサドルに、先ほど型取りをした座面の表皮を貼り付ける。写真は接着剤を塗布しているところ。この作業も念入りに行われており、一つひとつが手作りで製造されていることが伝わってくる。

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事前に「貼り付け作業は力と長年の経験が必要」と聞かされていた工程。最重要工程といえるだろう。職人の手によって正確に表皮が貼り付けられてく。機械のような正確さに思わず息を呑んだ。

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表皮を貼り付けた後は、別の担当者が慎重に余分な布を切りとっていく。こういった細かい工程が製品品質を高めていくことが伝わってくる。

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高級モデルに採用されているカーボンレールも職人による手作業だ。こちらは身体ではなく「自転車との接点」になるだけに確実な強度が求められる重要な工程だ

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検品後、一つひとつのサドルをチェックして、少しでも不良が見つけると除外される。こうしたチェックを経たサドルだけが梱包され「Made in Italia」として世界中に発送されていくのだ

今回、実際に製造ラインを取材してみて、職人による手作業の多さに、良い意味で想像を裏切られた。もちろん設計やデザインでは最新テクノロジーは採用されているが、最終的には「手作業」だ。
この工程の中に「世界中のサイクリングファンのために、最も洗練された、感動的で美しいサドルを作る」という、フィジークのブランド哲学を垣間見ることができた。こういった企業哲学が、グランツールを戦うトッププロの戦いを支えているのだと実感した。

関連URL:カワシマサイクル フィジークブランドサイト
http://www.riogrande.co.jp/brand/node/2438

写真:編集部

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