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2017年12月12日

第23回シクロクロス全日本選手権2017レポート

二日目は午前中は相変わらずコースは雪に支配されていた。午後に近づくにつれ気温はやや上がり(といっても2〜3度だろう)、日差しは強く雪も解けウエットな箇所も見え始めた。そして男子エリートが始まる前にはすでに日は傾き風もでて体感温度はかなり低めとなった。撮影をしていて動きまわっていても汗ひとつかかない。指先は痺れて痛い。

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U23は織田聖が制す。ジュニア以来2年ぶりの選手権勝利

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ライバルを大きく突き放し、声援に応えるようにシケインではバニーホップ、フライオーバーではジャンプをして観客を沸かせる。後続を寄せ付けず圧倒的な力の差を見せて2年ぶりの勝利を収めた。今年のBMXの全日本選手権(カテゴリーは)では2位。そしてロードレースにも出場するというマルチタレントぶり。目下、シクロクロスの世界選手権がターゲットか。「今年は最初から獲るつもりだった。序盤は転ばないように慎重に走ったが、残り3周でシケインの周りにも人がいるし、いろいろと何かやらないとな、と(笑)。でも最後はフライオーバーは飛ばずに、期待を裏切りましたね(笑)」「やっと海外で戦うスタートラインに立てたと思う」と世界に向けての意気込みを語った。nobeyama20171210_58

男子U23
1位 織田 聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
2位 竹内 遼(drawer THE RACING)
3位 藤田 拓海(SNEL CYCROCLOSSTEAM)
4位 江越 海玖也(弱虫ペダルサイクリングチーム)
5位 加藤 健悟(臼杵レーシング)
6位 梶 鉄輝(伊丹高校)

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女子エリートは三つ巴の戦い。接戦を制したのは今井美穂

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序盤から下馬評通り、與那嶺、今井、坂口が飛び出す。與那嶺が主導権を握る形で先行する。しかし3人とも拮抗していおり、突き放すことも、されることもなくレースは進む。誰がどこで行くか。そんな駆け引き、探り合いが繰り広げられる。レースが大きく動いたのは最終周回、溝を越えた後に今井が仕掛けた。先行する今井に追従する坂口。3番手は與那嶺だ。「3人でずっと坦々と走っていましたが、自分が一番乗れていると感じたので、前に出てみようと」。フライオーバー手前のキャンプ場のコーナーに入る。最後のコーナーでなんと與那嶺が前輪を滑らせる痛恨のミス。

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競り合うようにフライオーバーに現れたのは今井と坂口の2名。大きく突き放された與那嶺は若干諦めたように見える。先行する2名は譲らず、勝負はゴールスプリントに。勝負はゴール数メートル前まで続く。見ている方も息を飲むスプリントをタイヤ差で勝利したのは今井。その場に倒れ込み、スタッフが抱擁する。劇的な勝利だ。男子エリートの前に観客のボルテージは最高潮に達してしまった。間違いなく今回の全日本選手権で最高に盛り上がったレースだろう。

「誰がどこで行くか、考えながら走っていた。最後の最後までもつれて、でも逃げきれました。やっとです」「2週間前位の野辺山で海外選手と一緒に走って、いい感触を得られていた。3人でずっと回しながら、様子を見ながら走っていた。最後は力を絞って勝つことができました。2人にも感謝をしています。ありがとう。応援の皆さんのおかげで、こういう結果が得られたと思う。ありがとうございます。MTBではタイトルが取れなかったが、ここに立つためにMTBにも挑戦し続けた。本当にやってきてよかったと思います」と今井はレース後に語る。

「家族が支えてくれていたので、結果を出したかった。力が拮抗した3人で走ることができて、レースは面白かった。もっと踏ん張らないといけないんだなと思った全日本でした」と、2位の坂口。

「応援ありがとうございます。シクロクロスは難しい。毎年優勝は狙っているんですが…….。ロードレーサーとして頑張ります。でも来年もまた(シクロクロスを)やる理由ができたので(武井)コーチ、またよろしくお願いします!」と與那嶺。

フィジカルでいえば女子ワールドツアーで走る與那嶺が圧倒的なパフォーマンスを示すだろう。しかしバイクコントロールや機材チョイスなどテクニックの部分でシクロクロスはアドバンテージを覆すことができる。だから走っている選手も”面白い”のだろう。與那嶺はシクロクロス続行の意志を示した。チームがかわりツアー参戦の内容も今年とは大きく変わるが、オフシーズンはトレーニングだけではなく、レースに出て会場で人と会うこと、また賞金を稼げるという意味でも日本でシクロクロスに参戦するということは重要だと語る。

 

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女子エリート 結果
1位 今井 美穂(CO2bicycle)
2位 坂口 聖香(S-Familia)
3位 與那嶺 恵理(FDJ)
4位 宮内 佐季子(Club La.sista Offroad Team)
5位 西山 みゆき(Toyo Frame Field Model)
6位 唐見 実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)

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與那嶺 恵理、OANDA JAPANとスポンサー契約

12月初旬より、パーソナルスポンサーとしてOANDA JAPANと契約を結んだ。OANDA JAPANの宣伝広告が主な取り組みとなる。「全てを力に変えて」という與那嶺の言葉と活動が、この契約を決定づけたという。
「プロロードレーサーとしての契約で、女子選手としては過去最高の契約内容だと思います。この後続く人も出したいというのもあるんです。こういうグローバルな企業が出資したいという、チャンネルは実は開かれていますね。ロード選手は10〜12月は空いている時間。この時間を使ってスポンサーを見つけるというのが、今後はスタンダードになっていくでしょう。」と武井コーチは語る。
「女子レーサーとして稼げる選手となるのが目標。稼げるマーケットにしたい。やりたいと思う選手がロードレースは稼げないということにならないように。もちろん私よりもずっと稼いでいる選手はいます。ヨーロッパ主体のスポーツで日本人は弱い立場。こうしてパーソナルスポンサーをつけていかないとグローバルで活動するのは難しいです」と與那嶺。


男子エリートは小坂光が初の勝利。父、小坂正則も8位と上位に

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69名のシクロクロッサーがこの野辺山に集結した。低温、強風、凍結と移り変わるコンディション。雪と氷と泥が混じるコースでは、タイヤのチョイスは難しかったはずだ。
14時、定刻通りにスタート。ホールショットは前田公平が決める。そして小坂、横山、沢田、少し遅れて大集団が追随、アスファルトの上りを力強く進む。ここですでに4人の勝負に絞られた。周回を重ねていく。全員が一度は転倒したという難しいコース。序盤、小坂はコースを鑑みてマッドタイヤのバイクに変えた。

序盤は4名の中で前田が積極的にひっぱる。転倒などで先頭はめまぐるしく変わるが、中盤以降は小坂が主導権を握る。前田はさらに順位を落とし、2番手には走力がある横山が上がる。沢田はやや遅れて4番手、後続からは竹ノ内が徐々にタイムを詰めてくる。ちょっとしたミスで順位が入れ替わるという、非常に緊迫したレースだ。後半にかけて横山は転倒し、小坂が単独首位となる。
いつタイヤが取られるかわからない。どこを走っても滑りやすいコースコンディションは難しかったはずだ。そんな中、大きなプレッシャーの中、丁寧にこなした小坂が逃げ切りの嬉しい初の日本チャンピオン輝いた。

「ギリギリの勝負だった。最後までいけると自分に言い聞かせた。最後まで集中して走ったことが勝因。3人とも落車もあって難しいコンディションのなかで、気持ちを切らせたら終わりだと思った。うれしくて言葉にならない。まだチャンピオンの実感はない。ここまで何度も挑戦してきたが一度勝てなくて、それでも毎日毎日諦めずに続けてきてよかった。
みなさん、一番の応援をありがとうございました。この場を借りて言いたいです。親父勝ったぞ! 親父より先に(全日本)に勝ちました(笑)。チャンピオンとして僕もこれから強くなりたいと思っています。そしてトップ選手たちで上がれるまでどんどん上げていきたいと思います」と小坂は語る。「今日できる一番の走りができた。それよりも光さんが強かっただけです」と横山、「結果3位に終わってしまったが、来年はこの白いジャージを僕が着たいと思います」と前田。結果的に男子・女子エリートともにフルタイムワーカーの勝利となったが、仕事がありながらも日々の厳しいトレーニングをもっともこなした結果だろう。2月に行われる 2018 年度シクロクロス世界選手権代表候補選手選考会も兼ねた当大会、現段階では小坂と今井は代表にもっとも近い存在だ。世界一を決める大会でどこまで食い込めるだろうか。

 

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男子エリート 結果
1位 小坂 光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
2位 横山 航太(シマノレーシング)
3位 前田 公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
4位 沢田 時(Bridgestone Anchor Cycling Team)
5位 竹之内 悠(ToyoFrame)
6位 丸山 厚

 


ジュニア男子は、ベルギー遠征が決まっている村上が優勝

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期待のホープ、ジュニアカテゴリーも熾烈な戦いが繰り広げられた。昨年の世界選手権代表の村上を中心に、1週間前の宇都宮ではC2を独走した小島、途中リタイアとなったが単独2位だった積田ら、そして日野。
序盤は良い走りをして一時は先頭に躍り出た日野、村上、そして積田の三つ巴の戦いとなった。中盤にミスが続いた日野が遅れ、2名の争いとなる。一進一退の攻防の末、終盤にアタックをかけた村上が一気に差を広げる。そのまま先頭をまもり勝利を収めた。

男子ジュニア 結果
1位 村上 功太郎(松山工業高校)
2位 積田 連(Team CHAINRING)
3位 日野 泰静(松山城南高校)
4位 小島 大輝(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
5位 山内 渓太(可児高校)
6位 高木 英行(PRT KOSEKI)


2018-19年のシクロクロス全日本選手権は、滋賀県マキノ高原で行われるとの発表があった。2013-14年大会以来5年ぶり3回目の開催となる。当時の勝者は竹ノ内悠で、5連覇のうち3勝目にあたる年であった。かの地はJCXシリーズでも使われており、コース情報は各チームとも豊富に揃えているだろう。今回のレースから予想できるのは、群雄割拠。来年の全日本選手権大会も、この野辺山に劣らないレースになるだろう。

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写真と文:山本健一

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