2019年08月25日
バンクリーグ開幕! 名古屋競輪場で記念すべき初戦が行われる
ロードレースチームによるトラック競技場で行われる、特別リーグのバンクリーグがいよいよ開幕。国内トップロードチームが、このバンクリーグだけの特別ルールで行われるリーグ戦によって優勝を争う。初戦となるROUND1は、名古屋市の名古屋競輪場で幕を切る。
ルールは1チーム4人編成で、2チームが出走。スタートして3周目以降の奇数周にスタートラインをトップ通過したチームにポイントが与えられる。3ポイント先取したチームの勝利となる。そして総当たりの予選リーグを走り、上位2チームが決勝レースで優勝チームが決まる。さらにハーフタイムにも現役選手や、地元愛好会のレースなども観ることができは観客は10レースほどの生のレースを360度ビューの競技場で余すことなく観戦することができる。
観戦はチケット制で、VIPエリアと自由席の2つ。お得な前売り券と当日券が用意され、VIPエリア特典はバンク内のVIPエリアからの観戦と、ウェルカムフード&ワンドリンクチケットが提供される。自由席はスタンドからの観戦となる。イベントは18時からのスタートなので自由席でもフードやドリンクを味わうファンの姿が見られるように、この時間帯としては食事は摂りたい。金額は倍近く異なるが、チケット優待に加え選手との交流が可能なVIPエリアの優待を考慮すると、費用対効果は十分にある。
加えて前売り券購入者は15時のバンク走行会から会場入りすることができ、21時の閉会までたっぷり楽しむことができる。これは参加型観戦イベントと呼べる。
オープニングセレモニーでは6チームがお披露目。そこでは発起人代表としてキナンサイクリングチームのゼネラルマネジャー加藤康則さん(以下、加藤GM)がコメント。
「ここまで開催にこぎつけることができたのは、かかってくださった皆様のおかげと思っている。観客の皆さんに喜んでいただけるように、選手一同、全身全霊をつくしてがんばります。応援よろしくお願いします」
構想から3年、テストイベントから1年。そして開催へ。
愛三工業レーシング 早川選手の選手宣誓
奇数周回3ポイント先取のショートレースで、超高強度運動。すなわちエキサイトしたレースが見られるということ。ロードバイクながらハイスピードで周回する選手の走りに歓声が。以外にも集団がばらけるシーンが多かった。高強度に得意不得意が如実に現れるか。スプリンターを多く擁するチームが有利だろう。ある選手の話では、バンクに慣れているか、または戦術もかなり結果に影響しているとのこと。力はもちろんのこと得意な展開へレース運びする技術も重要だろう。
初戦の参加チームは以下のチーム。今回の初戦にはキナンサイクリングチーム、宇都宮ブリッツェン、シマノレーシング、愛三工業レーシング、チームブリヂストンサイクリング、マトリックスパワータグだ。
リーグ総参加チームは上記チームに加え、チーム右京、那須ブラーゼンが加わり、合計8チームとなる。
ROUND1当日は、天候不良で雨模様となったが白熱したレースが行われた。
予選リーグを勝ち抜いたのはシマノレーシングと、宇都宮ブリッツェン。
そしてバンクリーグROUND1、つまりは栄誉ある初の勝者となったのは、シマノレーシングだった。
初戦を迎えるにあたり加藤GM、今回解説者として参加したJBCFゼネラルマネージャーの廣瀬佳正さんにお話を伺った。
「こういう企画を考えているんですが、『やりませんか?』という話を各所でしました。一発目をやるなら宇都宮しかないな、と思っていまして。廣瀬さんに相談しまして、昨年、宇都宮競輪場でテストイベント「トラックフェスティバル」を実施。その流れからの約一年後が本日です。
準備には3年くらい時間をかけました。そういうゲームを作らないといけないから、と、マトリックスパワータグの安原監督にも相談し、今はなき一宮競輪場で数チームで何回もテスト走行を行い、ブラッシュアップして出来あがってきたのが今回のゲームです。もちろん続けていくうちにもっともっといい方向に改善できるものだと思います」
ーロードバイクで行うことについては、ロードチームだから?
「ロードバイクでバンクを走ることについて。構想ではピストレーサーの方が、速いうえに迫力もある。バンクの形状にも最適でしょう。
各チームともピストレーサーを用意するなど準備を進めていますが、現在は巡業という位置付け。そもそも新競技なので世の中の皆さんに知ってもらう時期。
また、どうしても各チームのスケジュールが合う場所というのが限られている。ROUND3の広島はJBCFの翌日、ROUND4の宇都宮はジャパンカップの翌日というスケジュール。つまりロードレースの翌日なのでピストの機材を持ち込むことが非常に負担が大きい。そのためロードバイクで今回のリーグは実施することにしました。チームの運営は現在はスポンサーに依存している。しかし、今のままでは選手のサラリーも上がりません。スポンサー収入以外にもチームの収益を得るという『他のスポーツで実現できていることを僕らもできないか』というのが、最初のきっかけです。
しっかりとホーム&アウェイの形式でリーグが成り立つようになってきたときにはピストレーサーでレースを走るというのが理想です」。ー観客の力が選手の力になりますね。
「不安でいっぱい。緊張でしかありません。どんな大会になるか」と加藤GM。
JBCF・広瀬GMもコメントを加える。「平日の夜というのは集まりにくいですよね。本当の意味で自転車の価値ってお客さんの数で、我々もわかってしまう。それをしっかり現実として受け止めて、いままで自転車買いは、チケッティングやサービス、お客さんをどう獲得するか、いままでロードレース業界がやってこなかった領域にチャレンジしています。
日本はアリーナ型スポーツに見慣れているので、一般のお客様にとっては、競輪場や自転車競技場は街中にあるので、こういったレースを見てもらって、それがきっかけになり、ラインレースのロードレースを知ってもらう。360度見渡せるバンクリーグで、この雰囲気を楽しんでもられるといい。
どう成長していくか。我々の熱量としっかり継続をしていって、ファンや地域を巻き込んでいけるか、がテーマです。時間はかかると思います。それでも試行錯誤していきます。
コンチネンタルチームがひとつになってなにかをやろうということは今までなかったこと。各チームの連携、選手の意識レベルも変わってきたりする、いいきっかけになると思います」
リーグの終わりに、現実的な意見もあった。
「作戦を考えたりする深みがあるように感じた。観戦している人がどこまで理解できたか、選手は楽しいと言っていて、ハンマーシリーズのようなイメージにだったのだろう。あとはどういう方向性にするのかということ。あと3回やってみてどうか。今日は天候も悪く初回ということで客足も少なかった。新しいお店と一緒で、続けていくことで、だんだん口コミで広がっていって…….。果たしてどこまで広がるか。そのためには僕らも活躍しないといけない。そのために準備も進めていく」
ただ、筆者が記者としてではなくファンとしてみた場合、スピーディなレースやすべての展開が見渡せるロード選手のレースは新鮮だった。映像よりも現場で見ることに価値があるイベントと思えた。競技の発展のために、どうすればいいのか。必要なもの(競技力・資金力)は“鶏が先か卵が先か”にしばしば置き換えて議論される。しかしバンクリーグというチャンスを得たことには違いない。
「去年のテストレース。初めての試みだったので、どういうレースなのか知る意味でも参加しました。今回は関してはルールも変わった初戦ですが、基本的には同じ。チームでバンクを走るという形式はそもそもない形式なので、これから発展していくためにどうしていったらいいかということも探れるかなと。いずれはトラックバイクでやってほしいとは思っています。トラックの強化もしつつ、こういった、ロード競技の普及にも協力して、自転車界の発展に貢献できれたらいいなと思っています」と、チーム監督は述べる。
オープニングセレモニーではファンとの交流も
くじ引きでリーグ分けを行う。レース前の緊張しながらも、どこか和やか。
予選リーグも熱戦が繰り広げられる。予選だからといって手を抜くとリーグを勝ち残れない。全力で繰り広げられるショートレースは見応えがある。
ハーフタイムには名古屋ピストマニアレースが行われた。ピストレーサーを用いたケイリンのエキシビジョンレースを披露。名古屋市でカフェを営む筧五郎さんの実兄、筧太一さん(BUCYOCOFFEE)も参加。
名古屋競輪場に掲げられる心得が、身を引き締めます
敢闘門から選手が入場。
決勝戦はシマノレーシングVS宇都宮ブリッツェン。シマノレーシングのチーム力が勝利した。先行を許さず、パーフェクトな勝利。
本日のMVP、黒枝選手
「ショートレースの特徴上、なにが起こるかわからない。監督の指示ではなく選手が四人で想定を何度も話し合って走った」と野寺監督。
「すべての展開を想像して話し合い、僕たちのやるべきことはわかっていた。市丸選手とクロエだ選手にポイントを取ってもらうという形通りのことができた」とキャプテンの木村選手はコメント。
トラック中長距離で活躍するシマノレーシング・一丸選手にヒーローインタビュー。
「初出場で初優勝は気持ちいいですね。日頃のトラックレースでは味わうことができない雰囲気、お客さんの声援を受けて走ることができ楽しかった」
シャンパンファイトならぬ、バンクに優しい炭酸水ファイト。クリーンです。
次戦のバンクリーグは、8月30日(金)松坂競輪場で開催。
公式グッズ販売なども行なっているので、関連ページでチェックしてみてはいかがでしょうか。
関連URL:https://www.jcspa.or.jp/bank-league
https://www.facebook.com/BANKLEAGUE/
写真:山本健一
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得