2018年06月25日
【第87回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース】男子エリートは山本元喜が制す
1周14.2kmのコースを15周213kmで行われた男子エリート。プロツアー所属の別府史之、新城幸也を欠く全日本選手権となったが、昨年覇者の畑中勇介(チーム右京)、先週行われたタイムトライアルを大差で制した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)らの存在感が強い下馬評となった。出走は119名、完走は31名。昨年の階上で行われた全日本選手権よりも厳しいコースという評価であったが、完走者は11名多い結果となった。コースの厳しさに加えて、選手によるレース展開が結果に大きな影響を及ぼす。
先頭集団を牽引したフルタイムワーカーの井上亮(Magellan Systems Japan)と高岡亮寛(Roppongi Express)。両者は序盤から中盤にかけて上りで先頭にでるシーンが多く見られた。
スタートして、上りの後の平坦でブリヂストン勢の攻撃で10人ほどの先頭集団ができ、それにジョインする形で2周目で30人以上の先頭集団が形成された。80人の後続との差は一気に開き、レース中盤までに後続との差は7分まで開いた。タイム差がジリジリと広がりながらも小康状態が続き、ペースは緩く中盤まで大きな2つの集団でレースが進む。先頭集団はフルタイムワーカーの井上亮、高岡亮寛が上りで先頭を引く姿が目立つ。後続の大集団は談笑するようなペースもみられ、終わってみれば序盤でレースはすでに決まっていたのだ。それでも気温が非常に高く、消耗し中盤以降は脱落する選手が出始める。
きついアップダウンの周回コース。ジリジリと気温が上がり、強い日差しがレースをより厳しくさせる。
10周目に入ると、先頭集団の動きが活性化。アタックが繰り返され12周目、補給エリアの上りで小石がアタックすると先頭集団は崩壊した。
小石の強烈なアタックで集団が崩壊。軽やかなペダリングから勝利を予想したが…
ここから山本元喜(キナンサイクリングチーム)と小石祐馬(チーム右京)の2人が先行。30秒ほどの差で佐野淳哉(マトリックスパワータグ)、新城雄大(キナンサイクリングチーム)、石橋学(チームブリヂストンサイクリング)、小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)の4人が追走。残り2周となる14周目に入ったところで、佐野と新城の2人が先行する山本と小石に合流する。
ラスト2周の4人先頭集団から佐野がアタックをする瞬間。新城が反応するも、脚を攣ってしまったという
ラスト2周、7km地点の上りで佐野がアタック。山本が追従し、さらに新城が続いて3人が先行して最終周回に入る。その直後の上りで山本がアタック。佐野が追うものの引き離され、山本が独走態勢に入る。40秒ほどのアドバンテージを保っておよそ1周を逃げ切った山本は、独走力に優れる佐野と同等以上のパフォーマンスを見せて単独でフィニッシュ。2018年のロードレース全日本チャンピオンジャージに袖を通した。
他のカテゴリーのレースから推測すると、序盤から動いた選手は潰れていたが、エリート男子はこの大きな分裂で前にいたか後ろにいたかで明暗を分けた。
山本と、3位に入った新城。キナン技ありの勝利だ
2位の佐野は2度目の全日本タイトルをもう一歩のところで逃したが、そのパワーは強力で衰えを知らない。
明暗を分けた序盤の動き
各チームの実力が伯仲するなか、窪木・畑中・入部という優勝候補のにらみ合いのような状態に映った今回のレース。実際に最終展開までのこったフルタイムワーカーの一人、高岡によれば、エース級は2チームのみ。32人の大集団だと大き過ぎて皆がローテーションに入る事はなく、ホビーレーサーが前に出て牽くので、後ろ20人くらいは頑なに前に出てこない展開だったという。このメンバーで行くだろう、と佐野との会話もあり、自身も積極的にローテーションに加わったようだ。また序盤は、後ろとのタイム差も安定しなかった。後方集団の煮え切らない雰囲気が眼に浮かんだという。
このように中盤までクラブチームの選手が牽引するなどしたが、終盤の勝負どころではプロチームが決定的な動きで勝負を決めた。が、後続ではチームUKYOをはじめエース級を残したチームは、身動きがとれなかったという。小石を先頭に送り込んだUKYOは畑中が動きたくてもチェックされるのは決まっている。ブリヂストンの窪木もしかり。序盤でエース級は明暗を分けた形となった。入部の強烈な後半の追い上げを見ると、確実にレースを動かす力を持っていたことがわかる。第六感? レース勘というべきか、嗅覚の鋭い選手が積極的に前へ上がり、今回の「勝ち逃げ」を得ることができたようだ。
山本元喜は現在26歳。2010年、鹿屋体育大学在学時には、学生初のツール・ド・北海道区間優勝を記録。過去U23で2回、全日本タイトルを、U23個人タイムトライアルを制している。NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザに所属時の2016年にはジロ・デ・イタリアに初出場、完走を果たす。2017年はタイトルには恵まれなかったがアジアツアーで入賞多数。2018年、全日本選手権エリート男子を初めて勝利した。過去全日本のエリート男子では2014年の個人タイムトライアル3位、個人ロード3位の成績が過去最高だった。
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著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。