9/23-9/30 オーストリア・インスブルックにて実施した2018年UCIロード世界選手権大会/2018 UCI Road World Championshipsの、アンダー23、エリート男子、女子の日本選手のレポートとコメントがとどきましたので、お届けします。
男子U23 ロードレース
・レース結果
1 マルク・ヒルシ/HIRSCHI Marc (スイス) 4:24:05
DNF 石上優大、大前翔、山本大喜、松田祥位、渡邉歩
/出走178人
リザルト
UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会、9月28日(金)第6日目は男子U23カテゴリー(23歳未満)のロードレースが開催された。コースはクーフシュタインからスタートし、インスブルックの周回コースを4周回する179.5kmで合計獲得標高は2910m。52カ国から178名が出走したが、ヨーロッパの強豪国には、すでにUCIプロチームで活躍する選手も多く含まれており、非常にレベルの高いレースとなることが予想されていた。日本ナショナルチームは、U23アジアチャンピオンの山本大喜(奈良・KINAN Cycling Team)、U23全日本チャンピオンの石上優大(神奈川・EQADS)、松田祥位(岐阜・EQADS)、大前翔(神奈川・慶應義塾大学)、渡邉歩(福島・GSC BLAGNAC)の5名でチームを編成し、好調な山本を軸に戦う作戦でスタートした。
90kmのライン区間を終えて、スイスの1選手が先行する展開で周回コースへと入ったが、60km地点のグナーデンヴァルトの上りで渡邉が遅れてしまう。周回コースに入っても集団はつねにハイペースを刻み、2周回目に入ると、大前、松田、石上もメイン集団から脱落。山本も懸命に食らいついていったが、周回コース終盤の道幅の狭い登坂区間で遅れ、渡邉が1周回完了時、山本と松田は2周回完了時に足切りとなった。石上と大前が3周回目に入ったが、大前は登坂区間で大きく遅れたために頂上でリタイア、石上も3周回完了時に規定のタイムリミット(先頭から15分経過)に達していなかったものの足切りとなった。石上は8月のツール・ド・ラブニールで落車し鎖骨骨折した経緯があり、万全とは言えないコンディションでの今大会出場だった。
メイン集団は2周回目の下りからアタックの攻防が始まり、3周回目の登坂区間では完全に集団は崩壊。最終周回の登坂区間で3名の先頭集団が形成され、下りに入るとマルク・ヒルシ(スイス)がアタックを仕掛け、圧倒的な下りのスキルを活かして一気に後続を振り切り、独走で優勝した。完走者は90名だった。
監督・選手のコメントなど続きはこちら
女子エリート ロードレース
・レース結果
1 アンナ・ファンデルブレッヘン/van der BREGGEN Anna (オランダ) 4:11:04
79 與那嶺恵理/YONAMINE Eri JPN +20:47
DNF 金子広美、唐見実世子
/出走149人
リザルト
UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会は、残すところあと2日となった。9月29日(土)の大会第7日目は近年人気が高まる女子エリートのロードレースで、クーフシュタインからインスブルックの周回コースを3周回する155.6km、合計獲得標高2413mのコースで開催された。48カ国から149選手が出走し、日本からは全日本チャンピオンの與那嶺恵理(茨城・Wiggle High5 ProCycling)、金子広美(三重・イナーメ信濃山形)、唐見実世子(茨城・弱虫ペダルサイクリングチーム)の3名が参戦し、與那嶺をエースとする作戦でスタートを切った。
60km地点のグナーデンヴァルトの登りの前にコロンビアとポーランド、2名の逃げが形成され、登坂区間の麓では個人タイムトライアル覇者のアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)が巻き込まれる落車が発生。登坂区間に向けてのペースアップと合わせて集団から遅れる選手が増え始め、落車の影響を受けた唐見もここで遅れてしまう。
金子は與那嶺とともにメイン集団前方でグナーデンヴァルトを登っていったが、頂上を前に失速。メイン集団も頂上ではいくつもの小集団に分断され、與那嶺は2つめの集団、約40番手で下り区間へと入った。その後の下り区間で小集団はまとまっていき、フィニッシュラインを過ぎて周回コースに入るときには、メイン集団は與那嶺を含む70名ほどとなり、新たに4名の逃げが形成された。
周回コースの登坂区間に差し掛かると集団は活性化し、登坂区間もハイペースで進んだため、次々に選手が振るい落とされていった。ベストなコンディションではなかった與那嶺は、1周回目の上りから少しづつ遅れていった。
レースが大きく動いたのは2周回目の登坂区間。優勝候補であり、リオ五輪の金メダリストであるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)がメイン集団から追走を開始し、先行していた選手を追い抜いて単独で先頭に立った。フィニッシュまで約40kmを残してのアタックだったが、ファンデルブレッヘンに追いつける選手はなく、差を広げながら、最後は後続に3分42秒差の大差で悲願の世界チャンピオンに輝いた。
集団から遅れながらも、諦めずに走り続けた與那嶺は、20分47秒遅れの79位でフィニッシュ。唐見は1周回完了時、金子は2周回目の山頂でリタイアとなり、完走者81名の厳しいレースだった。
監督・選手のコメントなど続きはこちら
男子エリート ロードレース
・レース結果
1 アレハンドロ・バルベルデ/VALVERDE Alejandro (スペイン) 6:46:41
DNF 中根英登
/出走188人
リザルト
・レポート
UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会は1週間にわたり熱戦が繰り広げられてきたが、9月30日(日)に最終日となる第8日目を迎え、目玉種目である男子エリート・ロードレースが開催された。走行距離258km、合計獲得標高4670m、レース時間は7時間近くにおよぶ、長く、厳しいレースで、約90kmのライン区間を終えてから周回コースを6周回、最後は通常の周回コースに“地獄”を意味する“Höll(ヘッレ)”と名付けられた最大勾配28%、7.9kmの厳しい登坂区間が加わったロング周回をこなすコースレイアウトだった。
スタート時間は午前9時40分。スタートとなったクーフシュタインの街中には太陽の光が届かず、気温は10度程度。秋の深まりを感じる気候のなか、44カ国、188名の選手が母国の代表ジャージに身を包んでスタートを切った。世界選手権男子エリートロードレースは、国別ランキングによって出場枠が変わってくる。強豪国が8名選手を揃えるのに対し、今年日本が獲得できた出場枠はわずか1枠。アジア大会でその優れた登坂力をアピールした中根英登(愛知・NIPPO VINI FANTINI EUROPA OVINI)が、貴重な世界選手権への出場切符を掴んだが、チームワークが重要なロードレースにおいて、単騎での参戦は不利な状況だった。
序盤のライン区間で11名の逃げが形成され、タイム差は最大で約20分と大きく開いた。周回コースに入り、集団は少しずつタイム差を詰めていったが、本格的な追走体制となったのは3周回目から。ペースが上がっていき、この動きにより中根は集団から遅れ始め、5周回完了時に足切りとなった。
最終周回に入っても、序盤から逃げていたデンマークとノルウェーが先行を続けたが、登坂区間に入ると活性化した集団により吸収。激しいアタックの攻防となり、大会最大の見どころとなるヘッレの上りで、先頭はロマン・バルデ(フランス)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、マイケル・ウッズ(カナダ)に絞られ、下り区間でトム・ドゥムラン(オランダ)が追いつき、最後はこの4名でのゴールスプリントの展開となり、38歳のバルベルデが悲願の世界選手権初優勝を飾った。
監督・選手のコメントなど続きはこちら
写真と文:JCF
関連URL:JCFホームページ http://jcf.or.jp
JCF Twitter (速報配信中) https://twitter.com/JCF_cycling
著者プロフィール
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得