2016年01月07日
苦手なシチュエーションを克服しよう!【ファンライドアンケートより】
ファンライドアンケートでみなさんに苦手なシチュエーションを聞いたところ以下の結果となった。
「苦手なシチュエーションはどこですか?」(複数回答あり)
1位 上り 89人
2位 下り 49人
3位 コーナー 39人
4位 とくになし 14人
5位 平地 9人
6位 交通量の多いところ 5人
7位 向かい風 2人
この結果やそれぞれの苦手な理由を踏まえ、ウォークライドの須田晋太郎コーチにアドバイスをいただいた。
編集部(以下 編):今回アンケートで上記の結果が得られました。普段から多くのサイクリストのコーチングを行っている須田コーチの感想はどうでしょうか?
須田コーチ(以下 須):うちにいらっしゃるサイクリストの方が感じている苦手なところの割合も似たような感じですね。「とくになし」と答えている方が、本当に走りに問題がないのか、自覚していないだけなのかは気になりますね。
ちなみに私が一番に苦手なのは向かい風です。意外と同志が少ないなあ(笑)
編:(手元の資料を見せて)それぞれの苦手な理由も聞いていますが、結構理由はさまざまです。
須:そうですね。いろいろな理由が挙げられていますが、解決の方法の根本は共通するものが多いです。テクニックとして習得が難しいのは何人かが挙げているブレーキングとシフトチェンジあたりでしょうか。これらは別の機会に解説したいなと。
編:“体重が重いから上りが走れない”人や“下りがこわい”方などは、同じ解決方法があるのですか?
須:厳密に言えば、問題点は人それぞれで、解決方法もまたそれぞれです。共通したものではないと思います。ただ、改善するためにまずバイクライディングの基礎を知っておくことはとても重要です。
編:その基礎とは?
須:重要なポイントは2つあり、『バイクのセッティング(セットアップ)』と『身体の使い方』です。
バイクのセッティングは間違った方向性や、間違った知識から正しく乗りにくいセッティングになっている人が多く見受けられます。ウェブや雑誌などでいろいろと知識を身に付け、自己流でセッティングをいじっている人などは要注意です。
編:具体的にはどのような間違えが挙げられますか?
須:たとえば、空気抵抗を軽減して、高速巡航力をアップさせたいと、ブラケットの位置を前に出したり低くする方がいます。たしかに若干フォームは低くなるかもしれませんが、コーナーリングでのバイクコントロールが難しくなりますよね。あとはバイクの見た目がかっこいいからといって、ハンドルとサドルの落差をかなり出して、ハンドルに寄りかかるようなフォームになっている方も多いです。
編:バイクセッティングで重要なことはなんでしょうか?
須:基本に忠実なセッティングをすることです。バイクのセッティングと身体の使い方は密接に結びついていて、セッティングが間違っていると身体は上手には使えません。バイクセッティングというのは何かに特化させるとそのぶん性能が落ちるところが必ず出ます。たとえばタイムトライアルバイクというのはその顕著な例ですよね。
まずは信頼できるショップで正しくバイクをセッティングしてもらいましょう。
編:それでは、もう一つのポイントである『身体の使い方』とは?
須:身体の使い方で基本となるのは重心コントロールです。重心コントロールが正しくできれば、上りでも楽にぺダルが踏め、下りでの安定感が増します。
ここからは実際にバイクに乗りながら解説していきます。
STEP1
まず平坦でのバイクの重心位置を知ろう
はじめに止まった状態でバイクの重心位置がどこにあるのかを知りましょう。地面に脚で立つというのは誰でもできることだと思います。これは地面が動かないので、安定した重心位置を見つけやすいからです。
バイクの場合、クランクが上下前後に動き、バイク自体もいろいろな方向に動くので重心位置を見つけづらいのです。
バイクが安定する重心位置を見つけるために、クランクを前後にし、なるべくハンドルから体重を切り離した状態で立ってみましょう。そのときに前後のペダルに均等に体重をかけられ、安定して立てる位置が、バイクの基本となる重心位置です。
(写真上)体重がペダルに均等に乗っている正しい重心位置(写真下)体重がハンドルにかかってしまっている。これだとバイクは安定しない
STEP2
サドルに座ってみよう
基本の重心位置がわかったら、サドルに腰を下ろしてみましょう。STEP1と同様になるべくハンドルには体重をかけないように注意します。ただし、ハンドルへの荷重をゼロにしようとすると、身体が起き上がり、体幹への負荷が大きくなるので、注意が必要です。ぺダリングでは体重を踏み込む側のペダルに乗せるイメージをもちましょう。
STEP3
上りでの重心位置は?
上りでの重心の位置というのは上り勾配によって重心のある腰周りが後ろに下がる為、それに合わせて重心位置を前にずらす必要があります。
このことを理解せずに、平坦と同じ重心位置でぺダリングしていると、ペダルを前に蹴り出すような形になり、体重をペダルに乗せる事が難しくなります。「上りでの脚力不足」を苦手な理由に挙げていた方などは、ぺダリングで体重を上手に使えず、脚の筋力を使ってしまっている可能性が高いです。
またダンシングの方がシッティングよりも体重移動の幅が大きくなるので、難しく感じるということも覚えておきたいです。
(写真上)上りの傾斜に合わせて重心が前に移動している正しい例(写真下)平地と同じ重心位置のためぺダリングが前に蹴り出すようになってしまう
STEP4
下りでの重心位置は?
上りとは反対に下りでの適正な重心位置は傾斜がつけばつくほど、後ろへと下がっていきます。
平地と同じように座っているだけでも、結果的に重心が前に前に行ってしまうので、ハンドルに体重が乗ることでコントロールしずらくなります。「下りがこわい」という方は、下りに対応した重心移動ができていない可能性が高いです。
(写真上)下りの傾斜に合わせて重心が後ろに移動している(写真下)平地と同じ重心位置だとハンドルに体重がかかってしまう
STEP5
コーナーでの重心移動
コーナーではコーナリングの動作に入るまでに自分の曲がれるスピードまで減速し(※)、コーナーの種類、路面の状況によってコーナリング方法の使い分けをします。一般に外脚荷重と言われますが、クランクを平行にして曲がる方法もあり、バイクと身体を倒していく(リーンウィズ)、身体だけを倒していく(リーンイン)など、まずは試してみるのがおすすめです。
基本的には荒れた路面ではバイクを起こしたままのリーンインを、キレイな路面ではリーンウィズを使うといいでしょう。どれだけ倒すかはコーナーのアールなどで判断します。
まずはコーナーの状況をしっかり確認し、進入していく
(左上から時計回りに)外脚荷重のリーンウィズ、脚を平行にしたリーンウィズ、脚を平行にしたリーンイン、外脚荷重のリーンイン
(※)ブレーキをかけると重心が前に行くので、あらかじめ適正位置に重心を置く事を意識しましょう。コーナリングに入る時に正しい重心位置にいることが重要です。
(写真上)ブレーキをかけると重心が前に移動するので、あらかじめ適正位置に重心を置く(写真下)ブレーキをかけるだけだと、重心がハンドルにかかってしまう
以上が、重心コントロールの基本となります。まずはできるスピードから試してみましょう。
ウォークライドシクロアカデミア・須田晋太郎
ロード、シクロクロス、MTBでの選手経験があり、幅広い指導スキルをもつプロコーチ。ウォークライドではシクロアカデミアにて、一般サイクリストへのセミナーなども行なう。
ウォークライドシクロアカデミア http://walkride.jp/academia/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。