2016年06月30日
シマノ・デュラエースがフルモデルチェンジ。R9100へ
シマノのロード用コンポーネントとして誕生してから9度目のモデルチェンジを果たしたデュラエース。品番はR9100系となり、2016年6月30日に発表された。最高峰のレースであるツール・ド・フランスの開幕に合わせてリリースされた情報を紹介しよう。
究極のスプレマシー(情熱)を実現する。テクノロジーの亢進こそがシマノの情熱といえる。デュラエースはシマノが最高のテクノロジーを駆使して具現化したコンポーネントだ。9000シリーズをベースにパーツの各部分を徹底的に解析し、さらなる進化を促した。それぞれのパーツが統合され機能するように設計することで、比類なきパフォーマンスを発揮するように相互的に強化されているのが特徴だ。つまりは、これらはバイクの潜在能力を引き出し、ライダーの出力をすべて推進力へ変換することを目指したもの。
品番はR9100。従来のメカニカルにDi2、そして油圧ディスクブレーキ仕様が加わった。ブラッシュアップされたことが外観でもわかるようにこれまでの色調は打って変わって深みのあるブラック基調になった。
トピックスとしては
・ドライブトレイン Di2シンクロシフトの導入
・形状設計の変更
・パワーメーター導入
・油圧ディスクブレーキのラインナップ
などだろう。変速段数は引き続き11スピードとなる。
BB-R9100
ドライブトレインはメカニカルとDi2がラインナップされている。
クランクアームは軽さと駆動効率のバランスを最適化したホローテックIIクランクセットFC-R9100。アーム部分の成型方法を変更し、BBとあわせて約7gの軽量化を実現した。この再設計によりO.L.D135mm、短いリアセンター410mmにも対応できるようになった。
歯数構成は現行モデル同様に5種類用意している。
カセットスプロケットはワイドレシオに11-30Tが加わり、トータルで5種類となる。
ワイドレシオ:11-28T/12-28T/11-30T
クロスレシオ:11-25T/12-25T
またCFRPとアルミ製スパイダーアーム、チタン製スプロケット(ロー側5枚)を採用し軽量化にも余念がない。
Di2はより直感的でシンプルな操作が可能になった。
XTR同様のシマノシンクロナイズドシフティングを採用している。特徴はどちらか左右の変速で自動的に前後のギアポジションを計測する点。もっとも効率の良いギアポジションを算出し、ライダーはライディングに集中することができる。
リアディレイラー変速を基準にフロントディレイラーがシンクロするフル シンクロモード(XTR同様)と、フロントディレイラー変速を基準にリアディレイラーがシンクロシフトするセミ シンクロモードが用意されており、これらはE-tubeシステムでフルカスタマイズが可能だ。
シマノとしては初のパワーメーターは、シマノ品質による信頼性、バイクフィッティングから得た正確性、コンポーネントの外観を損ねない一体性の3つの柱からなる完成度の高いパワーメーターだ。品番はFC-R9100-Pとなる。外観は変わらないが、左右のクランクアームの間にセンサーを配置する構造となっている。充電式バッテリーを内蔵、チェーンリングを交換しても影響を受けにくい安定したパワー計測を可能にした。ブルートゥース、ANT+の電波方式を用いていてガーミンなどのコンピュータでも使用できるだろう。Di2ファームウエアはワイヤレスで更新が可能だ。
シャドータイプのリアディレイラーはコンパクトで直線的なデザインになった。正面からみるとディレイラー本体のはみ出しが少ない。これは外部により接触するリスクを減らし、前面投影面積=空気抵抗の削減にも繋がるといえる。
Di2用フロントディレイラーもよりコンパクトに剛性も高めた。高トルク時でもスムーズな変速を可能にしている。
メカニカル シフト機構もブラッシュアップが施された。ブラケット形状はより握りやすく、変速もショートストローク化。またレバーの位置は微調整可能で、+14mmのアジャストができるようになった。そしてフロントディレイラーはイージーセッティングと安定した変速性能を提供する。
リアディレイラーはシャドータイプ。さまざまなケーブルルーティングのフレームに対応するのもうれしい配慮だろう。
ST-R9170
デュラエースとして初めて油圧ディスクブレーキが導入された。ワールドツアーにおけるレース中の落車などで一時使用が中止される自体にもなっているが、ディスクブレーキがもたらすメリットは計り知れないところもある。
流行のきざしがあるグラベルロードやアドベンチャーなライドではこのディスクブレーキの恩恵に授かれることだろう。
ディスクブレーキ対応は
・メカニカル×油圧ディスクブレーキ
・Di2×油圧ディスクブレーキ
の2タイプ用意され、
デュアルコントロールレバーはキャリパー対応を含めると合計4タイプラインナップするという大所帯となった。しかも油圧ディスク用のレバー形状はメカニカル用とほぼ同じ形状になった。
高い放熱性のディスクローターはアイステクノロジー フリーザーと呼び、高い放熱性で現行製品よりも-30度の冷却性を実現している。
タイムトライアル用のSTIレバーもより握りやすく軽量となった。
DHポジション用のスイッチもよりコンパクトに軽量になった。STI、スイッチともにワンボタン仕様となり、フロント変速にかんしてはシンクロシフトで対応する。またTTバイク用油圧ブレーキ仕様も用意された。
シフティングシステムの要でもある、E-tubeも一新。これに対応するにはワイヤレスユニットと新型バッテリーユニットが必要になる。
ブレーキシステムにも変更された。アームのたわみを抑えるために、ブースターを内蔵し、ケーブルテンションが非常に高いとき、現行モデルよりも43%のたわみを抑えることに成功した。またアーム形状も28Cサイズのタイヤも使用できる設計となった(ダイレクトマウントブレーキも同様)。
ホイールシステムも一新
自転車の抵抗は空気抵抗と加速抵抗の2つに大きく分かれる。空気抵抗を最小限に抑えることでライダーは勝利へと近づくことができる。
エアドラッグを抑えるために、最新鋭の風洞実験をくり返し、28mmのワイドリムへとたどり着いた。そこで現行の4パターン(24mm、35mm、50mm、75mm)からC24、C40、C60の3パターンへ変更となった。リム自体は大きくなるが、カーボン積層を再設計したことで、軽量に仕上げている。風洞実験では平地でのスプリントで、横風角度7.5度、タイヤサイズ25Cの条件で、WH-9000-C50TUよりも、C60TUは16w、C40TUは2Wのパワーセーブを実現している。ラインナップはリムブレーキ(WH-R9100系)、ディスクブレーキ(WH-R9170系)の2つの仕様で大きく分けられる。リムの構造はリムブレーキはクリンチャーであるのに対し、ディスクブレーキはチューブレス対応など、それぞれ異なっているのも大きな特徴だろう。
気になる販売時期は
デュラエース 機械式:2016年11月予定
デュラエース Di2:2017年2月予定
デュラエース ロードディスク系:2017年春発売予定
販売予定価格(2016年6月30日現在)
メカニカルタイプ(価格は税抜)
デュアルコントロールレバー
ST-R9100/機械式シフト、機械式ブレーキ、FRセット、デュアルコントロールレバー/51,644円
ST-R9120/機械式シフト、油圧ブレーキ、リア、デュアルコントロールレバー/32,076円
機械式シフト、油圧ブレーキ、フロント、デュアルコントロールレバー/32,076円
フロントディレイラー
FD-R9100 34.9㎜/12,131円
31.8/28.6㎜12,190円
直付/11,226円
クランクセット
FC-R9100/165~180㎜、34-50、36-52、39-53 55,980円
165~180㎜、42-54、42-55 58,239円
FC-R9100-P/パワーメータータイプ 価格未定
ボトムブラケット
BB-R9100/BC137/3,715円
36X24/3,715円
リアディレイラー
RD-R9100/21,492円
カセットスプロケット
CS-R9100/11-25/24,056円
11-28/25,242円
11-30/26,089円
12-25/24,056円
12-28/25,242円
チェーン
CN-HG901-11/4,723円
ブレーキキャリパー
BR-R9100/キャリパーブレーキ、FRセット/35,883円
BR-R9110-F/ダイレクトマウント、フロント/18,816円
BR-R9110-R/ダイレクトマウント、リア、アンダーボトムブラケットタイプ/18,365円
BR-R9110-RS/ダイレクトマウント、リア、シートステータイプ/18,816円
ディスクブレーキキャリパー
BR-R9170/油圧ディスク、フラットマウント、フィン付、フロント/14,388円
油圧ディスク、フラットマウント、フィン付、リア/14,072円
ペダル
PD-R9100/ノーマル /23,322円
4㎜ロングアクスル/23,560円
ローター
SM-RT900/160㎜ローター/7,330円
140㎜ローター/7,330円
Di2タイプ(価格は税抜)
フロントディレイラー
FD-R9150/直付け/38,333円
リアディレイラー
RD-R9150/62,041円
デュアルコントロールレバー
ST-R9150/Di2、機械式ブレーキ、左右セット、デュアルコントロールレバー/64,307円
ST-R9170/Di2、油圧ブレーキ、左、デュアルコントロールレバー/38,536円
Di2、油圧ブレーキ、右、デュアルコントロールレバー/38,536円
TT,トライアスロン用デュアルコントロールレバー
ST-R9160/Di2、機械式ブレーキ、TT,トライアスロン用デュアルコントロールレバー/価格未定
ST-R9180/Di2、油圧ブレーキ、TT,トライアスロン用デュアルコントロールレバー/価格未定
TT,トライアスロン用リモートシフター
SW-R9160/リモートTT、トライアスロンシフター/価格未定
内蔵バッテリー
BT-DN110/内蔵バッテリー/14,412円
外装バッテリーマウント
BM-DN100/ロングタイプ、内装ケーブル式/10,606円
ワイヤレスユニット
EW-WU111/ワイヤレスユニット/7,958円
ホイール ラインナップ(価格未定)
WH-R9100-C24
リムブレーキ、カーボンラミネートリム、クリンチャー
WH-R9100-C40
リムブレーキ、カーボンラミネートリム、クリンチャー
WH-R9100-C40
リムブレーキ、フルカーボンリム、チューブラー
WH-R9100-C60
リムブレーキ、カーボン/アルミコンポジットリム、クリンチャー
WH-R9100-C60
リムブレーキ、フルカーボンリム、チューブラー
WH-R9170-C40
センターロックディスク、12mmE-THRU、フルカーボンリム、チューブレス
WH-R9170-C40
センターロックディスク、12mmE-THRU、フルカーボンリム、チューブラー
WH-R9170-C60
センターロックディスク、12mmE-THRU、フルカーボンリム、チューブレス
WH-R9170-C60
センターロックディスク、12mmE-THRU、フルカーボンリム、チューブラー
(写真/シマノ)
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得