2019年09月03日
地域密着型プロロードレースチーム、さいたまディレーブ設立
さいたま市に拠点を置く地域密着型 プロサイクリングロードレースチーム 「さいたまディレーブ」の発表記者会見がさいたま市で行われた。
チームを設立したのは、元ロード選手の長沼隆行氏だ。そして同氏が代表を務める株式会社オリエンタルスポーツがチームの運営を行う。
株式会社オリエンタルスポーツ代表取締役長沼隆行氏(左)、株式会社オリエンタルスポーツ、CCO,Co-Founder株式会社サイタマサイクルプロジェクト代表取締役の川島恵子氏(右)
冒頭、発表会に同席した一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)理事長、片山右京氏から新施策となる新リーグ構想について、国内ロードレースチームの位置付けをより明確にしたコメントが発信された。
「自転車競技においては世界のレベルと実力差を改めて感じている。100年に一度のイノベーションと言われるモビリティとしてEバイクという形で、環境が変わってきている。そういった意味で自転車はポテンシャルを秘めていると思っている。どういった形で成功させるべきか葛藤もある。経済的にも必要とされる、役に立つという側面がなければならない。そこで今、日本の代表チームを作ろうと夢を語る人たちが集まった。その一つが2021年からスタートするジャパンプロツアーに変わる新リーグのスタートだ。
新リーグは強い日本代表、日本人を作っていくひとつの方法。その一つの柱がチームだ。例として宇都宮ブリッツェンは発足時から見てきたが、自治体との連携、市民のサポートを受けながら、スポーツとしての自転車の形を作ってきた。地域密着型をベースとして、集合体としての組織が最終的な理想ではある。そこで選手が育ち、運営や競技に必要な計測や審判などを、大事に、かつ成長できる環境にする根本的な土台が必要だ。これは長い道のりで、たくさんの修正や改善を継ぎ足さなければならないだろうが、今回のチーム発足を迎えるにあたり、埼玉でのチーム作りは特別な形だと思っている。“スターが出ると一気に世界がかわる”。簡単なことではないが、環境作りにも力を入れてほしい。ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムなど、大きな財産を持つさいたま市は、ゼロから立ち上げるよりも市民からの支持も得やすいはずだ」。
一方、代表の長沼氏は新チーム発足の経緯を「さいたまの土壌にある」と述べる。「もちろんツール・ド・フランスさいたまも要因のひとつだ。これほど素晴らしい大会があるのに、地元に密着したチームがない、大きなレースでも活躍できていないのを残念に思っていた。埼玉で育った身としては、なにかできることがないかというところで、チーム発足の運びとなった」と話す。
チーム名「さいたまディレーブ」の由来は
埼玉県に残る、竜伝承にもとづく、ドラゴンの“D”とフランス語で夢を意味するRAVE(レーブ)を組みわせた造語だ。コンセプトカラーは、彩の国さいたまの“彩”で、この地の多彩な魅力を表現。メインカラーはグリーン/ブラック、セカンドカラーはゴールド。
かつて企業型のチームに所属した経験を持っているが長沼氏は「(企業型チームは)年間予算が決められており、社内で完結する。しかし地域密着型チームは1つの大きなメインスポンサーで活動するというよりも地域の皆さんに応援してもらうこと。そういう活動を継続したい」とコメント。宇都宮ブリッツェンを目指し、参考にしながらやっていく、と付け加える。
チームの役割は「リーグを盛り上げることにある。チームが育つことでリーグに貢献できたら」「地域密着型チームとして競技者として走ることも大事だが、人間的な成長のために地域と連携し、具体的には自転車教室を行うなど活動をしたい。地域の方々に認められ、憧れの存在となるようなチーム作りをしていきたい」。
片山氏は「組織が健全化するためには、大きな大会を持つ自治体などと協働していく必要があるが、それができる場所は日本でも少ない。その中でも埼玉は、だれも否定できないくらい進んでいると思う」。
株式会社オリエンタルスポーツ、CCO,Co-Founder株式会社サイタマサイクルプロジェクト代表取締役の川島恵子氏は「プロチームの存在は非常に意義がある。さいたま市民は運動不足の傾向にある。自転車は家から走ることができる。通勤や買い物、モチベーションがあれば運動につなげることができる。そこでプロのかっこよさと我々の活動で、市民の皆さんに自転車っていいな、サイクリングをしようかなという気持ちになっていただく活動を思いっきりできるという意味でも素晴らしい。平日活動できるスタッフや選手がいる。事業化しながら収益も上げつつ、かつ市民密着、地域密着、さいたまラブを掲げ、日本を代表するような地域を愛するチームとしてやっていく」と話す。
チームのビジョンは、
2020年よりJプロツアー参戦
2025年国内ロードレースを制覇
2030年ヨーロッパ遠征をスタート
2035年グランツール出場
を掲げる。
事業構成はプロチームの運営であるが、地域に自転車文化を根付かせるような自転車教室や、サイクリイベントなどを開催していく。
チームの始動時期は2020年1月1日。所属選手は10名を予定しているが、現段階での発表はない。しかし埼玉県にゆかりのある選手の獲得を目指している。
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得