2016年12月18日
自転車活用推進法 報告会 全文公開
12月16日自転車活用推進法案成立の報告会が開かれた。成立までの経緯は下記にて追っていくが9日に成立し、わずか1週間後に報告会が開かれた。招集も報告会実施数日前という非常にタイトながらも多くの関係者、取材陣が参議院会館に集まった。
臨時国会の本会議、各委員会の会期末処理が終わり、それぞれ地元へ戻ったり予算編成に向けて動いているなどして師走の多忙を極め、この報告会に出席する議員数は少ないながらも、各党の代表や主役は集結するという注目度の高い総会となった。
挨拶にさきだち、療養中の当議員連盟の谷垣貞一議長のメッセージを、穴見事務局次長から読み上げられた。以下、谷垣会長からのメッセージ全文である。
「第192回臨時国会の会期末も迫った12月9日、参議院で自転車活用推進法案が可決し、成立しました。私どもの3年がかりの課題がひとつ達成できました。このたび、法律成立の報告会が開催できます喜びをご臨席の皆様と分かち合いたいと思います。私の不在中に、代行に就任していただいた二階俊博先生を中心に、与野党、各党内で推進役となってこのたびの法律のために、ご尽力いただいた議連の先生方に経緯を表するとともに、会長として労をねぎらいたいと思います。本法律の内容につきましてはご承知と思いますが、概略を申せば自転車の活用の推進にかんし、基本理念を定め国の責務等を明らかにし、自転車の活用の推進にかんする施策の基本となる事項を定めるとともに、自転車活用推進本部を設置することにより、自転車の活用を総合的かつ計画的に推進するものであります。関係府省庁にはその準備、および法律、施行、本部発足後の運用において、十分に協力をしていただくようこの場を借りて、私ども超党派の議連からも強く要望いたしますとともに、関係の皆様すべてに深く感謝を申し上げます」。
いまだ病床に伏す谷垣会長の近況は、月曜日から金曜日まで毎日ハードなリハビリに励んでいるという。快復に向かって一歩ずつ前進されているようだ。
法案成立が成立するまでの経緯について
経緯について簡潔な説明がなされたので以下に記す。
平成25年4月、年次総会において谷垣会長の提案により、自転車活用のありかたについて提言をまとめるためのPTが発足。当時の事務局長は岩城光秀氏。PTの座長には小泉昭男氏が就任。
平成26年、提言を元にPTを中心に、自発的に新法の検討を開始。
平成27年4月、年次総会において、ほぼ現在の形になった法律案を報告し了承された。以降各党、党内手続きを始める。
平成28年5月、年次総会において法案提出のタイミングは委員長一任ということで了承。
同年11月10日、議員連盟の臨時総会が開かれる。選挙の改選後、各党人員がかわり議員連盟のメンバーの引退や補充、共産党も総出であった。議連は委員長提案で提出するという目標であった。改めて各党に相談をもちかけ、委員会に関係するすべての政党の先生方に役員にはいっていただき、臨時総会を開き、改めて1日も早い成立に向け動き出した。
与野党関係各位の尽力により衆議院国土交通委員会に委員長提案で提出。衆参共に全会一致で可決。
同年12月2日金曜日、国土交通委員会に委員長提案で可決。
6日衆議院の本会議で可決。
8日参議院の国土交通委員会で可決。
9日参議院の本会議で可決、成立。
各党代表、尽力された方がたのコメントを以下にまとめてみた
党議員連盟代表 幹事長
この自転車をどのように活用していくか、また法律が必要だということが言われてきた。PT(プロジェクトチーム)を発足し3年前からこの問題に取り組んできた。PT発足にあたり前法務大臣の岩城先生に基礎を作っていただきました。
私は山口県のサイクリング協会の会長もしており、自転車の活用にも深く関わってきたところ。超党派議連の意味もあって、全会一致で衆参両院を通過したということはうれしいこと。これから政府が中心になって、この推進本部において、この推進法案をしっかりとお願いをしたいと思っている。
PT発足の功労者、岩城光英事務理事長
本当に感無量であります。この法案成立に向けて様々な経緯があった。皆様方のご尽力が実りまして成立したことを本当にうれしく思います。これからは民間の一人として自転車活用の環境整備に力を注いでいきたい。
各党代表挨拶
公明党幹事長 井上義久氏
1990年に初当選し、そのころから自転車推進議連に。たまたま同じ選挙区に小杉先生がおり、お手伝いをしてきたが20数年経ってこういった法律ができるということには感無量。私もチャリダーの1人でございまして先月霞ヶ浦を1周した。おそらく96kmくらいあったと思う。非常に良く整備されていたこと、また走っていて気がついたのは、サイクリストの年齢の幅が広いこと。70に手が届きそうな方や、家族連れ、若い男女なども見受けられた。この法律ができることで推進本部ができる。自転車活用は幅広いものだが、そういったコースの整備がひとつひとつ仕上がっていくことによっても、自転車人口が増えていくのではないか。谷垣先生がこの場にいらっしゃらないのは残念だが、早く良くなっていただいてまた一緒に走りたい。
共産党幹事 国土交通部会長 本村伸子氏
大変うれしく思う。自転車というのは化石燃料を消費しない、国民の健康に寄与するという点で、自転車を活用しているというのは大事なこと。事故を減らし、すべての世代の皆さんが安心して自転車を利用できる環境作りに全力を尽くしたい。
PT座長代理 務台俊介氏
小泉座長に変わり、この法律の事務的な作業を行なった。デンマークに赴き、自転車の環境を見てきた。なんとしてもこの法律を仕立てたいという気持ちでやってきた。自転車活用を担う、行政組織のあり方の検討もある。いずれ国交省の中にも自転車局ができるのではないか、という大変な期待をしている。いずれにしても地方造成の入口として自転車活用というのは大事。私の地元の自転車イベントではすぐに定員が埋まってしまうということがありまして、大変な潜在的な需要があると思います。これがゴールではなくてスタートとして自転車振興が栄えることを期待している。
民進党 PT座長代理 泉健太氏
谷垣会長、そして河村先生をはじめ、多くの役員の皆様、長く取り組んでいただいた先人の皆様が努力をしていただいた自転車活用推進法がこうして成立を迎えたことは注目も高く、ぜひ具体的に推進していこうという気運になっていることをうれしく思う。民進党は環境問題に関心をもっている議員が多いこと、自転車を使うことで災害対策、環境対策.健康作り。つぎの大阪万博もテーマとして挙げられているのは健康長寿。自転車の分野も積極的にこの万博にも参入をしていくべきではないかと思っているところ。この法律が成立したことを心より喜びながら、そして国会の議員たちの中でも様々な自転車の活用を啓発するような取り組み。地域の自転車イベントに出るなどいろいろなことがあったが、さらにつながりを深めて、多くの国会議員、全国の自治体にも自転車の気運を伝えていきたい。
国内最高峰レースのジャパンカップを運営する栃木県サイクリング連盟会長も参列。LRT(次世代型路面電車システム)と自転車の相性の良さを強調した。
自民党 大岡敏教氏
地元滋賀県は琵琶湖という最髙の自転車資源をもっている。JRに自転車をそのまま乗せられないか、漁業者と連携して船に乗せて琵琶湖を渡せないかなど、ちゃんと現場で実績を出していこうということで動いている。どう自転車を使って琵琶湖の魅力を伝えていくか。
各関係省庁のコメント
国交省
自転車の利用は環境に優しく国民の健康増進、交通混雑の緩和、と様々な効果があり、公共の利益の増進がすすむもの。自転車の活用を一層進めるためには環境整備が必要。今回の法案では国土交通省が自転車活用推進本部の設置を仰せつかった。基本理念にのっとり、多くの関係省庁の関係者の協力をいただきながら、自転車活用推進計画の策定など活用推進にかんする総合的、計画的に実施をしていく。基本方針にも明記されているとおり、広範囲多岐に渡る。議連の先生方の引き続きご指導ご支援をお願いしたい。
内閣府 交通安全担当
関係省庁と連携をとり、この法案にもある自転車の安全な利用の教育、啓発を鋭意推進していきたい。
警察庁 交通局
警察としても自転車の通行空間の確保、あるいは特に交通安全に取り組んでいきたい。
金融庁 総務企画局
自転車による人の生命、身体が害された場合の保証精度について検討を行い、結果に基づき必要な案の措置を講ずること。これについて自転車活用推進本部と連携をとって対応していきたい。
文科省スポーツ庁
スポーツを通じた健康増進と言うことで取り組みたい.その中で自転車の活用を考えていきたい。
厚生労働省 健康局
健康日本21の第二次の目標値にはあと歩数が1000歩足りないと言われている。時間にして10分の運動が大事。サイクリングは平静時の8倍の運動活動量がある。法案の中にも自転車活用による健康保持増進とある。これを後押しいただきながら、国民の課題となる健康増進に取り組んでいきたい。
経済産業省
日頃から自転車業界とは意見交換をしている。より一層の連携を取り、業界とともにこの法律に基づいた必要なことを検討していきたい。
環境省
政策を実施できるように予算の確保、関係各所と連携していきたい。
「法案成立し報告の総会をやりたいということで行なった。来年は改めて自転車団体と連携をしながら明るい法案を成立した、前に向かっていくイベントを行なっていきたい」。と司会を務めた金子恭之事務局長は語り、総会は閉会となった。
(写真/編集部)
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得