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2016年07月11日

EDDY MERCKX / 2017年の布陣発表

近代プロサイクリングにおける最強の選手といえばエディ・メルクス(1945年6月17日〜)にほかならないだろう。そのどん欲なまでの勝利へのこだわりからカンニバル(人食い)と呼ばれ、プロアマあわせて525勝。そのおびただしい数の勝利数にはグランツールの総合優勝14回(ツールドフランス5勝、ジロディタリア5勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ1勝)も含まれている。また同年でジロとツールを制するダブルツールを3回達成(1970、72、74年 )している。ツールドフランスにおける区間優勝回数は通算34勝、年間最多勝利数は54勝。ほかあらゆるメジャーレースを総なめにしている(オリンピックはアマチュアのみ1964年東京でしか出場していない)。あらゆる数字が桁違いだ。圧倒的な力に加え、非常に機材にこだわるという一面をもちメルクスを語る上で欠かせないエピソードも多い。
引退後、1980年に自身の名を冠したブランド、エディメルクスサイクルを起こした。ブランド創設にあたり、現役時代にバイク制作を行なっていた一人、デローザの創始者のウーゴ・デローザ氏にフレームビルドのノウハウを乞うたという。そして機材にも非常に強いこだわりをもつメルクスだけに、そのラインナップはピュアレーシングモデルとして確固たる地位を築いた。経営者は代わっているが、現在もカーボンフレームを中心とした『レーシングフレーム』の制作を続けている。現在もメルクス本人がアドバイザーとして経営には関わっているという。

ブランドコンセプトとしては、ユーザーにプレミアムクオリティの製品を提供すること。
その要素としてはジオメトリー、剛性、安定性、安全性の4つだ。これらはすべて等しく同じくらい重要な事項だというが、多くのメーカーが高性能バイクの指針として挙げる要素『軽さ』『エアロダイナミクス』が入っていない。あくまでも前述の4つの要素を満たした上での軽さやエアロが本来の性能と品質基準を満たすものなので、優先順位としては低いのだという。また特徴的な立体構造のフレームは、優れたパワー伝達を具現化するためにデザインされたものだ。複雑な形は、コーポレートデザインとして開発されたものではなく、ライダーが思うがままに操れるライディングクオリティを保つためである。
そのフィロソフィはサイズにも及ぶ。大型フレームになると剛性は比例的に損失していく。サイズによってフォークのテーパリングを調整するなどし、フレームサイズ変動にともなう剛性の変動を防ぐ設計を施している。

エディ・メルクスの考え方としてはそれぞれのライダーにたいして、それぞれに合ったジオメトリーが必要だというのが根底にある。よって、すべてのフレームの生産プロジェクトを始めるときジオメトリーが最優先事項となる。オン・ザ・バイクではなく、イン・ザ・バイク、つまりバイクと一体となれるジオメトリーを目指し開発をしている。全体的な特徴としてはチェーンステーが若干長めになっている。トラクションのかかりのよさ、コーナリングでの操作性を重視している。基本的にはまずはレースに使えるバイクというのが前提だ。
そんなエディメルクスのラインナップは以下の通りだ。

2017年は既存モデルに加え、ディスクブレーキを採用したエントリー〜ミドルクラスが充実。そしてハイエンドモデルのEM-525がフルモデルチェンジを果たした。さらにタイムトライアルフレームもフレーム形状をブラッシュアップ。レーシング色が強いラインナップといえる。

2017LINE UP

◆パフォーマンス
EM-525(フルモデルチェンジ)/価格(税抜):399,000円(フレームセット、ディスク)、370,000円(フレームセット、キャリパー)
サンレモ76(NEWディスクモデル)/価格(税抜):298,000円(フレームセット、ディスク)、278,000円(フレームセット、キャリパー)、368,000円(アルテグラ完成車、キャリパー)
◆エンデュランス
ムーラン69/価格(税抜):299,000円(105完成車、キャリパー)
◆グランフォンド
サランシュ64(NEWディスクモデル)/価格(税抜):298,000円(105、ディスク)、268,000円(アルテグラ、ディスク)、236,000円(105完成車)
ブロックハウス67/価格(税抜):148,000円(ティアグラ完成車)
◆ウーマン
ミラノ72/価格(税抜):236,000円(105完成車)、198,000円(ティアグラ完成車)
モントリオール74/価格(税抜):188,000円(105完成車)、148,000円(ティアグラ完成車)
◆ヘリタージ
リエージュ75/価格(税抜):270,000円(フレームセット)
ルーベ70/価格(税抜):270,000円(フレームセット)
◆ユース
プティアンギャン61/価格(税抜):115,000円(ソラ完成車)
◆タイムトライアル/トライアスロン
ルガーノ68/価格(税抜):278,000円(フレームセット)、350,000円(105完成車)
◆クロス
エークロ70/価格(税抜):359,000円(アルテグラ完成車、ディスク)、319,000円(105完成車、ディスク)、160,000円(ティアグラ完成車)
◆グラベル
ストラスブール71/価格(税抜):280,000円(105完成車ディスク)
◆トラック
コペンハーゲン77/価格(税抜):280,000円(フレームセット)

今回行なわれた2017年のプレスローンチでお披露目となったEM-525の詳細をはじめ、ミドルクラス、グラベルロード、シクロクロス、TTフレームなどを紹介しよう。

EM-525

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フルモデルチェンジを果たしたハイエンドモデルのEM-525。設計コンセプトは1台であらゆるシチュエーションに対応できることだという。4種類の展開がある。まずはキャリパーブレーキかディスクブレーキタイプ、さらにジオメトリーでヘッドチューブの長さが異なる2タイプを用意している。短いタイプはパフォーマンス(レース向け)、長いタイプはエンデュランスモデルとなる。ハイエンドモデルはレースで使うことが前提となる。ハイエンドモデルはヘッドチューブが短い設計のものが多い。ライディングポジションを合わせるためにスペーサーを入れてスタックを調整することもできるが性能をスポイルしかねない。そこでヘッドチューブの長いモデルであれば最適な性能を発揮できる、という意図で2タイプのジオメトリーを用意している。
プロチームヘのサポートも行なっており、代表的なサポートチームはベルギーのプロコンチネンタルチームのトップスポーツ フラーンデレンだ。今シーズンの終わりにはNEWフレームが供給される予定だという。前評判では非常に高剛性なフレームということだ。

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ヘッドチューブは1.5を採用する。クラウン回りにはフレームとの段差をスムーズにするスカートが配置される。

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屈曲した特徴的なバックステーの形状。

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ヘッドチューブにはケーブルを内蔵する穴が設けられている。

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BB規格はプレスフィット86を用いている。

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トップチューブの下側に見えるのは内蔵式シートクランプだ。

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ディスクブレーキ台座はフラットマウントを採用している。

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フロントフォークもリアもアクスル径は12mmとなる。

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フレーム名でもある525はメルクスの競技通算の勝利数だ。ダウンチューブにも誇らしげに刻まれている。

サンレモ76 ディスク

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ミドルグレードのサンレモにもディスクブレーキタイプが登場した。剛性およびパワー伝達性に優れるフレームである。

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特徴的な横扁平加工を施したバックステー。ディスクブレーキ化に伴い、ブリッジは廃止された。

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ダウンチューブからシフトとブレーキケーブルが内蔵される。ディスクブレーキ専用の設計だろう。

 

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上位モデル同様にフラットマウント、アクスル径12mmを採用した。

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EM-525と同じく、トップチューブの下からシートの固定を行なう。

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スムーズな外観、および水の浸入を防ぐカバーを被せる。

サンレモ76(キャリパーブレーキタイプ)

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ブロックハウス67

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各社にランナップされている超軽量アルミフレームに対抗するために開発された高剛性アルミフレーム。エントリーグレードに属しているが、重量も軽くフレーム単体で1150gに仕上がっている。

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素材は違えどサンレモと同様のバックステーの形状を用いている。

 

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ケーブルを内蔵して外観をシンプルに。

 

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プレスフィットBBを採用する。

エークロ70

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エークロはカーボンフレームとアルミフレームをラインナップしているが、ディスクブレーキを搭載しているのはカーボンフレームのみ。2017年モデルクイックレリーズからスルーアクスルへ変更された。カンチブレーキを採用しているのはアルミフレームタイプとなる。2015年のマスターズ全日本シクロクロス優勝バイク。

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ストラスブール71

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オフロード走行に特化したレーシングフレーム。アルミフレームを用い、どんな悪路でも安心して走行することができる。フラットマウントのディスクブレーキ採用。コミューターバイクとしても最適。

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ボリュームのあるカーボンフォークが特徴的だ

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スルーアクスルを採用。

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ヘッドチューブは1.5を採用した。

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BB規格はプレスフィット86である。

リエージュ75

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コロンバス製のゾナを採用したスチールフレーム。フォークはフルカーボンフォークだ。ヘッドチューブは長めの設計で、快適なライディングポジションをとりやすい。カラーはメルクス全盛期のモルテニチームカラーを用いた。

ルーベ70

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リエージュ75同様のコロンブス製スチールチューブのゾナを採用している。

ルガーノ68

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トライアスロン用エアロフレーム。ヘッドチューブ回りがブラッシュアップされた。UCI基準に遵守するため、ステム回りの形状が新しくなった。

コペンハーゲン

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トラック用カーボンフレームで、今季より日本でもリリースされる。競合するトラック用カーボンフレームよりもリーズナブルな価格なのが特徴。トップスポーツ フラーンデレンでも使用されている。


問:深谷産業 http://www.fukaya-sangyo.co.jp/

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