2025年12月18日
【ワールドマスターズゲームズ関西2027&UCIグランフォンド世界選手権】日本でマスターズの世界大会が開催。日本人が勝つためになにが必要か

2000年までプロサイクリストとして活動していた藤田晃三さん。選手引退後は所属先のブリヂストンサイクルの社員として様々な活動に取り組んできました。2025年、同社の中経に沿った事業計画を経て、退社を選択し長年温め続けた「ライフワーク」へ向けて新たな活動を開始しています。
その内容こそ、自国開催されるマスターズの世界大会で日本人チャンピオンを組織で生み出そうというもの。どういった内容で、どのような目標を掲げているのか伺ってみました。
活動を経て、実現したいこと

1967年生まれ。岩手県花巻市出身 1992年バルセロナ五輪ロードレース日本代表 2000年に現役を引退 。 2007年Mt.富士ヒルクライム アスリートクラス優勝。2025年12月をもってブリヂストンサイクルを退社され、自国開催世界大会に向けた構想を練っている。
来年、再来年に国内でマスターズの世界大会が2つ開催されます。それに向けての取り組みです。2026年8月にはUCIグラングランフォンド世界選手権はニセコで。2027年にワールドマスターズが日本で開催されますが、ワールドマスターズゲームズについてはあまり周知されていないように思えます。
まずはそういった大会があるということを知ってもらうためです。
しかもワールドマスターズゲームズはエントリー時期が早い。前回(2021年)延期になった際にエントリーをしていた方向けの優先エントリーが26年の1月に、一般エントリーが3月に開始します。なおかつ枠はすぐに埋まるでしょう。そうなると意識を向けていないと出ることすらできない。
情報共有するというのも目的のひとつです。
当初は2021年に開催されるはずでしたが、コロナ禍において中止を余儀なくされました。当該大会からは2027年開催に向けて情報がメルマガで届きますが、この数年間でメールアドレスが変わっている人には届かない。その辺も情報共有しないと。優先権を持った人でもうっかり忘れるということもあります。
マスターズの世界大会が日本で開催されるのは、知る限りでは初めてです。UCIグランフォンド世界選手権についても初めてのこと。これは日本人が世界一になる大きなチャンス。世界大会に出られるというのも、一般の人にとってはそう多い機会ではないでしょう。せっかく日本で開催されるので知ってほしい。
最終的には、開催国である日本がちゃんと成績を出せるようにしたい。これはみんなが考えていることですが、そうするために何をすればいいか。
「大会にむけてトレーニングする」というのは当たり前のことですが、いま必要なのは情報収集です。
例えば、どんな練習をするか。強い選手の練習方法などは雑誌やネットを見ればわかりますが、 マスターズの選手は年齢を重ねると若い選手と同じように回復するものではないし、怪我のリスクも高くなっていくので当てはまらないことも。情報共有をすることでトレーニングの精度も高められると思います。
私も50代ですが、同年代で「腰が痛い」、「膝が痛い」などでエントリーしていたけど出場しないとか、そういう話がよくあります。身体を壊さないように、年齢にあったトレーニングをしていかないと。そこはいろいろな人の情報共有が必要で、そうした場を作りたいです。

先日開催されたニセコクラシックで先頭を走るのは、2024年UCIグランフォンド世界選手権(44-49)で優勝した高岡亮寛さん
具体的な計画
2026年のニセコクラシックについて
まずニセコクラシックに関しては、大会に出場するまでのストーリーがあります。予選大会として予定されているツール・ド・ふくしまでレースの上位25%以内に入らないと出場権が得られません。UCIグランフォンド世界選手権に出るための必須条件です。そのためにまず予選のコースを攻略するために、対策トレーニングを行います。また、主催者と協力しながらトレーニングキャンプを行うとか、コースを試走する機会を作るとか、世界選手権に向けた取り組みをやっていきたいと思っています。
このようにまずは予選大会に向けて何らかのアクションを複数回実施することを検討しています。そこもあくまで大会主催者と連携しながら考えていきたい。
ニセコクラシック対策もやりたいと思っていますが、バジェットや労力も大きく、ニーズがあるかどうか慎重に考えたいです。
いずれにせよ、まずは予選を通過しないと話が始まりません。

藤田さん自身の目標
UCIグランフォンド世界選手権(ニセコクラシック)は来年(2026年)の話です。年齢カテゴリは55-59歳。私は59歳になる。カテゴリでは最年長になるので、優勝を狙うのは簡単な話ではありません。
種目は個人タイムトライアルとロードレースの両方に出たいですが、個人タイムトライアルにフォーカスすることを考えています。ロードレースでは日本人が勝てるようなアシストをするというか、集団の中で日本人が有利になるような動きができればと思います。
日本人参加者は同じ日本代表ジャージを着て走るので、集団の中では組織立って動きたい。そのためには事前にネットワークを作っておく必要もあります。日本人同士で潰し合いだけはしたくないですよね。
ライフワークとして
2000年まで現役選手として活動し、その後は仕事をしながらトレーニングを続けて、アマチュアレースのヒルクライムやトラックレースである程度の成績を残してきました。ただ、すべて時間が短い競技でした。ヒルクライムだって長くて1時間。トラックでは30分も走っていないですよね。
その点、グランフォンドは2時間以上高強度で走らないといけない。それに向けたトレーニングの量と質の確保が必要です。
2025年末で会社を辞めますので、今後はトレーニングをメインに時間を使えます。トレーニングの合間は、自転車チーム運営のお手伝いをしたりという生活になってきます。今まで以上に距離に対しての思いは強くなっていくでしょうね。
今までは、どちらかというと惰性で走っていましたが、それとは意気込みが違ってくるでしょう。

「もう一度、盛り上げたい」
結局は、若いときから自転車競技を続けてきて、ひとつの生き方になっています。年を重ねるにつれ、人とのつながりも自転車関係がメインになってきていて、今後の人生にとっても仲間というのが、生きがいとか張り合いになってくると思いますね。
そんなところでも横のつながりも作っていかなければいけないし、どんどん巻き込みながら自転車を続けていくという風土を作っていきたいですね。
また自転車競技者の人口が減ってきています。業界も不況に苦しんでいるので、長く自転車業界にいた人間としてはもう一度盛り上げたい気持ちもあります。
メーカーも販売店もつらい状況になってきています。みんなが自転車に乗る環境、楽しめる環境を。横のつながりを強めながらやっていくというのが重要です。そこを、つながりを強めるような活動ができるように準備を進めています。
当初の考えから変化している
当初はこのプロジェクトに販売店やメーカーからパートナー協賛を募ろうと検討していましたが、かなり市況が悪くハードルが高いというのが見えてきています。
スタッフ人員も減らし、なんとか営業をしているようなショップも多く、かつて土日に行っていたようなクラブライドも「スタッフがいないからできない」と活動も縮小したり。そういう状況が見えています。
どちらかというとイベント主催者と連携を取るのがWin-Winの関係にはなりやすい。当然、自転車店もメーカーもWin-Winにならないことには協力できません。協力を得るためにも、ある程度の実績を作ることが大事です。何か小さいことからでも形にすることが必要です。
将来的な展望
世界大会や世界選手権に向けては、今は選手が個々で動く必要があって苦労していますよね。
先々のことではありますが海外遠征のときにはチームジャパンとして、ある程度まとまって動けるようになれば、安心感が出てくると思うんですよ。
個人で参加する場合、手弁当で行うためとても労力がかかりますよね。遠征したことがない人が世界大会に出ようと思ったら、それは大変です。
ツアー的なもので遠征のサポートをすれば参加しやすくなると思います。通訳を頼むにしてもチーム単位でお願いすればコストも抑えられます。
世界に挑戦しやすい環境を作り出せればいいなと思っています。
私はこれまで組織で動くのが当たり前の環境でしたので、アマチュアの皆さんが個人で遠征をしていることには脱帽しています。
また仕事として海外イベント参加ツアーなどを旅行会社と共にデザインをしていたこともあるので、間違いなくツアーのほうが労力が少ないことが分かっています。そのノウハウは生かせると思っています。
例えば海外に単独遠征中にレースで落車した場合どうするのか。旅行会社が入っていればその後のケアはしっかりやってくれる。つまり安心して動くことができます。
海外でケガをして入院した場合、航空券の手配やホテルの手続きなどは一人で行ったら自分ですべてやらないといけない。リスクでしかないということです。レース遠征はただの海外旅行とは大きく違います。ですから組織立って動ける環境が整えば、世界へ挑戦しやすくなると考えています。
まずは2026年のUCIグランフォンド世界選手権、2027年のワールドマスターズゲームズ2027関西に向けての活動がそのきっかけとなれば。
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。