2016年10月27日
【LAMPRE×秀光】自転車競技にスポンサーを行なうメリットとは/新城幸也ショートインタビュー
ランプレ、秀光はどんな企業? そんな質問を受けて即答できるのはコアな自転車ファンか、あるいは工業系にお務めの方くらいだろう…..。
スポンサーメリットとはなにか。スポンサー企業がどんなことをやっているのかを知ってほしい。そんな想いから(株)秀光によるイベントが実施された。
イタリア企業ということで、マルコ・ファヴァロさんの司会の元、自転車競技の歴史、スポンサー変遷などが紹介された。参加したのは自転車専門メディアだけでなく、秀光関連のクライアントも名を連ねていた。自転車メディアの記者なら知っていて当然の内容であったが黎明期からの流れを一気に見ると改めてプロロードレースは興行であり、技術開発の歴史であることがわかる。そこでスポンサーにまつわるトークセッションが行なわれたので、その一部を紹介しよう。
秀光のことをご存知ない方は多いと思いますが、家具メーカーです。銀行のインテリアに特化しています。
ランプレとの関係は、ランプレのマテリアルの優位性を10年くらい前に見つけまして、それから弊社の商品に導入しました。用途はオフィスや銀行の中、そのなかでもATMコーナーの6〜7割は当社のもので、いわゆるカラー鋼板というものを使っています。これはみなさんの身近にありますね。
ランプレメリダが日本で活動するときにはスポンサーとして活動しています。ですから日本で走るときには、ジャージの袖に秀光というロゴが入るのです。
ジャパンカップでスポンサーを行なったのは5回目です。自転車ファンの中では私どもの会社の名前は認知され始めています。これからはもっと宣伝ができたら良いな思っています。自転車競技というのは、ヨーロッパでは人気があり、社会的にも機能しています。日本でもこれからヨーロッパに近づいていけたら面白なという想いもあります。タイミングよく新城選手も加入し、東京オリンピックも控えています。スポーツと企業がよい関係になれたらいいと感じています。
ランプレメリダ ジェネラル・コーディネイターのアンドレアさん。
ランプレ社がどうして自転車チームを支えるか。
ランプレの社長はセリエAのキーパーでした。その背景からサッカーは好きです。でもサッカーにスポンサーをするか、別のスポーツするかスポンサーを考えた上で自転車に行き着きました。その理由はサッカーにはフーリガンがいるが、自転車は紳士的なスポーツであること。精神的にもクリーン、そして誰にでもできる、しかし暴力的な面がないところが決め手でした。
まずは、コルナゴ社が近かったので、エルネスト・コルナゴ氏と相談し、ゆっくりと始めることにしました。
スポンサーを行なったメリットはというと、鋼板は一般の家庭向けの商品ではない。普通の人はわからず、イタリア人にどんな企業か聞いても知らない人が多かった。ですが知名度が上がったことで企業相手の商談などビジネスとして非常にやりやすくなりました。名刺を出すだけで、あのランプレですね! と言われるようになりました。スポーツが魅力的なのは企業の広告ツール、知名度を上げるためのひとつの大きな手段になり得るからです。ですからランプレは20年にわたって自転車競技を支えています。
チャンピオンシステムはサードスポンサーとして、チームに3年前からウエアを提供しています。どちらかというとBtoCで自転車に関係がないという企業が多いのですが、私たちは自転車に関わってらっしゃる方向けの宣伝として、活用しており、効果はあると思います。5年前にチャンピオンシステムコンチネンタルチームがありました。他の小さいコンチネンタルチームにたくさんスポンサードはしてきましたが、大きなプロコンチネンタルチームに挑戦してみようという試みでした。実際に2年間活動を行なったのですが、非常に苦労しました。苦労した割りにはアジア圏にしか有名にならなかった。あらためてプロツアーチームでないとダメだということになり、同じ金額や労力を費やすならと、3年前からスポンサーを行なっています。そこに新城さんが加入したことで、効果はいままでの5倍近くになりました。
選手たちを工場内へ案内……
まさに工場見学でした。隣にいるジャーナリストはやや興奮気味。鋼板にラミネートされていく様子や、色々な部材を加工する様子が見られた。マヌエーレ・モーリ選手が好奇心旺盛で、いろいろと試しているのが印象的でした。
「こういったスポンサーの働きかけはいままでありましたか?」と、新城選手に伺うと「コルナゴではありましたけど、ほとんどこういった機会はないですね」とのこと。
新城幸也選手にショートインタビューを敢行。来季について少々伺った。
新城:決まっていることは、今日(10月25日)からチームの合宿がコルシカで始まりました。4日間の日程なので僕は参加できないんですけど……。全員ではないですけど、選手が集まります。そこではジャージやバイクのフィッティングをやっています。自転車はメリダなので、今のまま大きくは変わらずにいけるでしょう。ただメリダはラインナップの中で、味付けを変えるところがあるので、その違いはあるかもしれないですね。
ーチームメイトが非常に豪華ですよね。特にニバリ、ロドリゲスは日本人が特に好きな選手だとおもいます。そして我らが新城幸也。彼らとの連携は? もうドキドキしていますが。
新城:それが未知数。ワールドツアーになるかがどうかまだ分かりません。ほぼ間違いはないと思いますけど、ワールドツアーチームになれるかどうかが決まってからレーススケジュールも固まると思います。僕としては12月からタイへ合宿に行き、ダウンアンダーに呼ばれてもすぐに行けるように準備を整えています。“遅くでいいよ”ということだったら、ゆっくり年明けにタイへ行って、調整をすすめようかと。2月にアジア選手権があり開催地はバーレーンなので……、これは行かないといけないですよね(笑)。ですから初戦がアジア選になるか、ツアー・ダウンアンダーになるか、まだわかりませんね。
ー2年契約について、ご自身で考えてみてどうですか。
新城:まあ、新しいチームは2年じゃないと行かないですよ。新しいチームで1年契約ではなにも保証がないですし、準備ができていないチームで走れと言われても、走るのは難しいですよね。それはもちろん無いとは思いますけど。ほとんどの選手は2年契約だと思います。それとは別に、いい選手が集まってきているので、そこは心配ないです。
ー来年走りたいレースは?
新城:まずは今年出られなかったアルデンヌですよね。
ーつらい時期でしたね。
新城:とくにアムステルは出場したら上位でゴールできているので、次の段階は先頭集団に入れるかどうかというところ。先ほどの話に戻りますが、新しいチームなのでまず成績を出すことが大事ですね。やっぱりスポンサーあってのチームですから、2年契約だから、というところに甘えず、1年目がヤッパリ大事。成績を残さないとスポンサーは離れていってしまうので。僕が自転車を続けるためにも、このチームで走り続けるためにも1年目はとても重要だと思います。
(写真/編集部)
取材協力;秀光 http://www.shukoh.co.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得