2019年11月15日
【インタビュー】2019全日本王者・入部正太朗 NTTプロ・サイクリングで新たなチャレンジ!「夢だったので、迷わず行きたい」
世界最高峰のUCIワールドチームのひとつ、NTTプロ・サイクリングは、全日本チャンピオンの入部正太朗(シマノレーシング、30歳)と契約したことを2019年11月14日に発表。翌15日、入部とチーム代表のダグラス・ライダー氏が都内で取材に応じた。入部は「夢だったので、迷わず行きたい」と意気込みを語った。
南アフリカに拠点を置くチームは今季までディメンションデータとして活動していたが、12日に日本の通信大手NTTをタイトルスポンサーに迎え、ロンドンに拠点を置く「NTT Ltd.」の出資でNTTプロ・サイクリングとして2020年から活動する新体制を発表したばかり。日本人選手の加入についても期待が寄せられていた。
入部は、早稲田大学から2012年にシマノレーシングに加入。今年6月の全日本選手権で優勝したほか、ツアー・オブ・タイランドやツール・ド・熊野などUCIアジアツアーのレースでもステージ優勝を挙げるなど国内トップクラスの選手として活躍してきた。
契約の経緯について
「決まったのは昨日(12月14日)です。7月くらいから(移籍の)可能性はあり、エージェントを通して話を進めていましたが、そこからは進展がなかった。ジャパンカップが終わったぐらいからまた話が進んで、面談をして昨日サインしました。
話を聞いたときから僕は行きたいと即答していていた。言語も頑張るし、夢だったので迷わず行きたいと熱意は伝えていた」
と説明し、自身も熱望しての移籍だったことを明かした。
契約期間は1年。
ロードレース最高峰へのステップアップについて
「プレッシャーは当然あります。いただいたチャンスでチャレンジするだけです。国内でずっと活動を続けていて、30歳で世界に挑戦するのは簡単ではないと十分承知している。ワールドツアーの世界がいかに厳しいかは十分に想像がつく。楽しみ半分だけど、正直不安もある。でも、みなさんのおかげで夢の第一歩を進めることができたので、全身全霊をかけて可能な限りチャレンジして頑張っていくつもりです」と意気込みを語った。
さらに「アジアのレースではこの数年で勝負に絡めたり、勝利を挙げたりして、自信を持つことはできていたが、今年の(ナショナルチームの)ヨーロッパ遠征ではアジアとレベルの違いを感じた。ワールドツアークラスのレースは未知で衝撃を受けると思うが、そこで戦うと決めたので決してあきらめずにチャレンジしていきたい。
競技を始めたころから僕の目標は大きく3つあります。全日本選手権優勝、ワールドツアーのチームに入って世界を見ること、オリンピックに出ること。そのうちの2つ目を達成できたことにプレッシャーよりも楽しみが大きいので、僕らしく頑張っていきたい」と、力強く語った。
現全日本チャンピオンとしての世界挑戦について
「ワールドツアーチームでナショナルチャンピオンジャージを着れることは、選手にとっては一生の宝だと思う。
それゆえに見られるプレッシャーもあるわけだから、責任感も計り知れないと思う。あの日本人選手、頑張ってるな、すごいなと思われるように走らないとダメだなと思っています」と話した。
目標とするレースについて
「3大グランツールは誰にとっても憧れであるし、ツール・ド・フランスを目指していきたい。まだまだ実力不足ですけど、グランツールは走ってみたいです」と夢を語った。
ライダー代表は「現時点で唯一の日本企業スポンサーのワールドチームに、日本人選手が加入したのはすばらしい機会だと思う。我々は別府や新城などの日本人選手を数年間にわたり見てきたが、日本人を再びツール・ド・フランスに出場させる可能性を得られたことにワクワクしている。彼と会って、彼の走りの特徴を見て、とてもアグレッシブで明るく前向きで、我々のチームのカルチャーに合っていると思う。2020年はジャパンカップにも出場したいし、日本の自転車界のチーム、クラブ、イベントとパートナーシップや協力関係を築いていくことにもワクワクしている。NTTが新しいことを始めるにあたりそのプロセスを支援してくれるだろう」
と、入部とともにチームが日本と世界の自転車界の架け橋になると語っている。
入部は、12月9~20日にスペインで行われる合宿からチームに合流する予定。
ライダー代表は「この合宿で各選手の来シーズンのプランを決める。かなりハードなライディングのキャンプとなるが、彼のトレーニングを見て、どのレースが彼に合っているかベストなプログラムを組みたい。いくつかワールドツアーのレースに出ることも期待しているし、ヨーロッパやアジアのレースもあるだろう。6~8日のステージレース、ハードなワンデーレースなど、彼は6時間走り続ける能力があるハードワーカーだから他の経験ある選手をサポートできるだろうし、エースを任される可能性もあるだろう」
と入部に期待を寄せていた。
写真と文:光石達哉
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。