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2019年03月18日

栗村修JBCF理事に聞く 「新リーグ構想とロードレースのこれから」

kurimura

全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)主催による「JBCFサイクルロードシリーズ」が3月16日の「修善寺ラウンド」で開幕し、10月まで全国50レースで熱戦が展開される。このシリーズはトップカテゴリーの「Jプロツアー」を頂点とし、おもに市民サイクリストを対象とした「Jエリートツアー」、さらに「Jフェミニンツアー(女性)」、「Jユースツアー(18歳以下)」と幅広い層にレース参戦の機会を提供する仕組となっている。さらにJBCFは3月初旬、2021年からの「新リーグ設立」を発表した。その目的は何か? ロードレースのテレビ解説者としてもおなじみ、JBCF理事を務める栗村修さんに話を聞いた。

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シーズンが始まるとJBCFの理事、TOJのレースディレクター、ツール・ド・フランスなど海外レースの解説と休む暇のない毎日が続く

FR 2021年からのスタートを発表した「新リーグ」の目的を教えてください。

栗村 まず選手強化、次に普及。言い換えれば「自転車文化」の定着です。当然そのための財源確保も重要です。

FR プロによる新リーグと聞くとJリーグなどが想定されます。

栗村 「プロを頂点としたサイクリストの仕組み」と考えていただければ。プロリーグが頂点にあって、その裾野としてプロを目ざす選手や市民サイクリストが参加できるレースがつながるイメージです。これまでの課題を解決する仕組にしたいと考えています。

FR これまでは何が課題だったのでしょうか。

栗村 私自身、選手生活を経て、宇都宮ブリッツェンの監督や、ツアーオブジャパン(TOJ)のレースディレクター、日本自転車普及協会の活動などを通じ「強化」と「普及」に取り組み、いくつかの成果を挙げられたものの、正直に申し上げてまだ道半ばの状態でした。そんな中、昨年、片山右京氏がJBCFの理事長に就任するなどJBCFを取り巻く環境の変化があり、強化と普及に向けた新リーグ構想が徐々に具体化していきました。2021年スタートと期限も明確にしました。絶対に実現しなければなりません。

FR 構造改革を歓迎する意見の一方で、批判の声はありませんか。

栗村 もちろんあります。とくに現在の「Jプロツアー」に所属するチームからのご意見です。「プロ」と言っても現在の日本はショップ主体のチーム、企業チーム、地域密着型のプロチームなど、その形態は様々です。発表直後は説明が不足していたこともあり批判やご意見もありましたが、各チームのご意見を聞き、対話をさせていただくことで自分たちの計画が具体化していった側面もあります。その点で批判的なご意見には感謝しています。

FR 普及の側面からうかがいます。「東京マラソン」のようなエリートと市民が一緒に走るレースを作るなど、市民サイクリストとの融合計画などはありますか?

栗村 ぜひ取組みたいところです。Mt.富士ヒルクライムとJBCFが一緒にレースを開催してプロの走りを見てもらい、市民サイクリストに上位カテゴリーを目ざすきっかけにするなど、いろんな方法があると考えています。

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9月開催の「まえばし赤城山ヒルクライム(群馬県前橋市)」はJプロツアーと市民レースが融合した成功事例のひとつだ

FR 今シーズンは年間50レースですが、地方開催が多く首都圏など人口が多いエリアからは参加しづらい印象を受けます。

栗村 その点も課題です。現状では既存のレース開催で手一杯で新しい会場探しや交渉に手が回らない実状があります。そういった課題を民間や自治体など外部の力をお借りして解決していきたいと思っています。

FR お話をうかがっていると「実業団」としての取り組みというより「ロードレース」全般に特化した取り組みに思えます。

栗村 これは個人的な意見ですが「実業団」という名前ではなくてもいいと思っています。日本では「ロードレース」「サイクルロードレース」など様々な呼称があるように、ロードレース文化が定着しているとは言えません。目的を「強化」と「普及」の両輪に置いているのは、その両輪があって初めて「ロードレース文化」が定着すると考えているからです。

FR 最近はショップチームに参加せず、レースも練習も単独というサイクリストが増えています。

栗村 ネット通販やSNSで情報が取得できる時代背景もあるのでしょう。普及には安全面を中心とした講習活動は必須です。以前は仲間と走ることで自然に身についた走り方を伝えていく仕組づくりも重要ミッションです。

FR フランスなどヨーロッパではトッププロを頂点にしたサイクリストの仕組みがあると聞きます。海外は意識しますか?

栗村 もちろん勉強もしていますし、私自身ヨーロッパで走っていたので理解しています。ただ海外の事例をそのまま持ってきてもうまくいかないでしょう。日本には日本のやり方があります。時間はかかるでしょう。私は今47歳ですが、イメージとして60歳までにはきちんとした仕組にしたい。今年は重要な1年になると思って取組んでいます。

◆新リーグ構想とは?

JBCFが発表した2021年からの新リーグ構想は以下の通り。
・プロフェッショナルカテゴリー(現在のJプロツアーに相当)
1部リーグから3部リーグまでのプロクラブ(原則)が参加。各クラブは本拠地(ホームタウン)と一体となったクラブづくりを行う。
・エリートカテゴリー(現在のJエリートツアー/Jフェミニンツアー/Jユースツアーに相当)
4部リーグから8部リーグまでで構成。競技志向のサイクリストが参加するカテゴリー。
・オープンカテゴリー(現在のJチャレンジツアーに相当)
昇降格なしのカテゴリー。レース参加のステップとしての位置づけ。

栗村修(くりむら・おさむ)
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1971年生まれ、横浜市出身。15歳よりロードレースを始め、高校を中退して単身渡欧。フランスのクラブチームに所属する。その後はポーランドのプロチーム「ムロズ」や、国内でもシマノレーシング、ミヤタスバルレーシングチームなど国内外のチームで活躍。2001年の引退後は宇都宮ブッリッツェンの監督、TOJのレースディレクター、日本自転車普及協会での活動のほか、Jスポーツでのテレビ解説など幅広く活躍。親しみやすい人柄から市民サイクリストの人気を集めている。 

◆JBCFサイクルロードレース専用サイト
https://jbcfroad.jp/

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