2017年05月25日
【6.11 Mt.富士ヒルクライムに向けて】今中大介さん&片山右京さんの秘策とは
Mt.富士ヒルクライムに今中大介さんと片山右京さんが挑む!
2017年の富士ヒルにも挑戦していただくお二人。ともにロードレースとF1というジャンルは違えどグローバルなプロレーサーとして厳しい世界を渡ってきた共通点があり、様々な経験を積まれています。
今中さんは元プロロードレーサーとしての経験を生かし、現役から退いて20年立った現在でも勢力的に走り込んでいます。片山右京さんはF1ドライバーとして培った緻密な測定かつ大胆な方法で、もっている知識を惜しむことなくロードバイクに投じ、トレーニングを行っているようです。
自己ベストはもちろん、昨年以上のタイムを狙うお二人は今やよきライバルであり、今年もお互いを意識しつつタイムを狙うとのこと。選抜クラスの勝敗も気になりますが、レジェンド2人の勝負は、注目のカードじゃないでしょうか! そこで、それぞれの秘策と参加者へのアドバイスも含めて語っていただきました。
現役時代から行っている、自分に向いている練習を【今中大介さん】
編集部:昨年のレースを振返ってみて、どんなことを思いだしますか?
今中さん:2つ失敗があります。まずは選抜クラスに出ようと誘われて、自分は絶対無理だと思っていたけど、右京さんに誘われたら出ないといけないなということで出たけど……。序盤から集団から遅れて一人になったのが一番辛かったですね。富士ヒルのコースは平均勾配が5%くらいだけど、気流が高まるところがあって風が強いときに向かい風だと失速してしまう。そこを単独で走っているとキツいよね。
あの選抜クラスの集団に食らいつくように右京さんは粘っていた。自分はそこに行ったらオールアウトすると思った。現役時代より4割くらい有酸素能力が落ちているのは数値でわかっているので、この心拍数では無理だなと自分で集団から離れました。そして右京さんは前に見えるけど、なかなか追いつかないなという展開。
まず選抜に誘われて出ちゃったのが失敗かな。
編集部:なるほど……右京さんのお誘いが選抜クラス出走のきっかけだったんですね。
今中さん:もうひとつの失敗というのは、酸素が薄いところでの順応性が弱まってしまったこと。これは今回の試走のときから感じていたけど、去年からその感じが強くなった。レース当日も心拍は上がっていないけど、手足に痺れたような感覚が10分くらいつづいて、まさに酸欠だなと。これまではそんなことはなかったし、選手の頃のイメージでいくと、このコースなら3回でも4回でも走るよという状態だから。それから比べたら、こんなにキツいんだと。
レースが終わって下山した後、右京さんと一緒に会場に戻りました。そこで“実は今回は、発売前のこんなものを使ったんだよ”とパワプロのオキシドライブを見せられて、さらにショックで(笑)。えっなんで黙っていたの? 親友じゃないのと(笑)。
編集部:なんと、昨年秘策を練っていたのは右京さんだったわけですね。
今中さん:選手の頃は自分のコンディションで走っていくのは当然だけど、市民レーサーは藁にもすがる思いで走りますよね。今はその気持ちと一緒なので、そういうものを摂取していたんだ、と知るとさらにショックで。
そこで、今年はオキシドライブを僕も試しています。
これを飲むことと、飲むことによって自分の気持ちが切り替わったという効果があります。やっぱりメンタルのスポーツでもあるので、なにかをきっかけに動機付けも変わるということがあります。
編集部:現役時代はどのようなサプリメントの取り方をしていたのですか?
今中さん:自分たちにとって大事なもので、ヨーロッパに行ったらなおさらで、サプリメントの取り方というのを習いました。暑い中、レースが1週間続いていくなかで、ミネラルがどんどん排出されてしまいます。“それを体内に入れる”という積極的な意識が、回復やコンディションの上り調子につながる。サプリメントを摂るというのは“ステージレースを走った後には、絶対に調子が仕上がっていくというリズムを作る準備”だったりする。だから今でも、サプリメントを取り上げられたら、身体を維持することができないでしょうね。ビタミンやミネラルはもちろん、パワプロのエキストラ アミノアシッドなどのサプリメントは支えになりますよね。
編集部:さて、Mt.富士ヒルクライムに向けて、トレーニングは進んでいますか? 今回も右京さんとのバトルが気になりますが。
今中さん:右京さんは年に抗いながら〜、という話をよくする。僕は今年53歳で、夏には54歳になる。やっぱりちょっと何かしないと、という気持ちはあります。
日々の練習としては、目下ダイエット中で実はあまり進んでいないのです。というのも4月まで気温が低い日が続いて。僕は寒さに弱く、そんなとき人間はどうなるかというと蓄えたくなるので、食欲を抑えることができなくて。でも、温かくなって距離を走るとやっぱり身体は変わるよなあ、っていうのは実感していますね。ベースを作るのはちょっと遅かったけどがんばります。
Mt.富士ヒルクライムに向けてのトレーニングとして時間がないときは、20秒くらいの短時間インターバルをやっています。時間があれば50分くらい平坦から上り基調でのタイムトライアルなどをやっています。
編集部:50分のタイムトライアル! これはハードですね。
今中さん:タイムトライアルでタイムを計るときは、週末までにコンディションを仕上げていくような感じで調子を整えて、しっかりタイムを出すようにする。タイムが悪いときはそれを受け入れて、調子がいいときにはそれがモチベーションになる。
この練習方法は競技を始めた学生のころ、弱くて高校生に負けちゃうくらいのときからやっていて、強くなった。でもシマノに入ってからもこの練習方法は続けていましたね。自分には適したトレーニングだと思っています。
編集部:一般の参加者に向けてヒルクライムトレーニングについてアドバイスを!
今中さん:Mt.富士ヒルクライムと同じ時間を続けて走れるコースというのはなかなかないので、日々のトレーニングでは半分か、1/3くらいの時間のタイムトライアルをやります。そこまでも難しいという方には、5分走、3分走というものも効果がありますね。この練習はスピードを養うためにとても良い練習。その短時間にスピードをどーんと上げるのが練習のコツです。
いろいろな方と走って感じるのはスピードが足りないかな、ということ。そもそもスピードに対してコンプレックスをもっている方が多いといったら失礼になるけど、まずはスピードをつけた方が良いという人が多いですね。高いスピード域の経験がないと、自分の単調なペースに留まってしまいます。これは僕にも言えることで、パターンの決まったトレーニングをしていると陥りやすいですね。プロならそれはそれでハイレベルですが、現役時代から見て6割くらいのレベルで、ある程度維持しているというパターン化したレベルだと刺激が足りない。ときには思いっきり馬鹿みたいに追い込んでいくというのも必要だったりします。とはいえ、それができるのはある程度、身体が仕上がってきてからがいい。
まずはベース作りが大事だし、ときにスピードアップというのはまずは必要なところですね。あとは10分間を保てるペース走を2回がんばる。人それぞれだけど、刺激になると思います。
体幹に不安がある人は。トルクをかけたペダリングを坂道で行うといいですね。脚を鍛えるという意味だけじゃなくて、体幹を鍛えるという理由もあるので。心拍数を上げる必要はないので、筋力を高めるようなトレーニングをやっておきましょう。
最後にトレーニングをやった後は、適切な栄養素を摂りたい。運動しただけ得られるモノがないと無駄になってしまう。練習が無駄にならないように栄養をしっかり摂りましょう。
編集部:さて、早いものでレースまでひと月切りました。これから何ができますか?
今中さん:まずは試走に行ってみるというのもいいですね。できれば3週間前までに試走に行っておきたい。大会1週間前になると気持ちがそわそわしてくるというのを抑えるためにも、自分の気持ちをヒルクライムモードにするためにも、どこかで試走にいくというのがよい。そこでタイムをおおよそ計ってみます。まだ身体ができていないなら、集中的なトレーニングをするけど、3週間前だったら負荷が高すぎても十分な回復期間があるので、1週間くらい回復に努めれば問題ない。
これを読んで、ハタと気づいてがんばってもらえれば幸いですね(笑)
あとは、運動強度のメリハリが大事。追い込み過ぎが許されるのは3週間前まで。2週間前までやっていると身体に堪えます。気持ち的には焦りもありますが、最後の1週間はリハーサル的な試走でもいいし、いつも走っている山でタイムトライアルをやってみる。それから水曜日まで休んで、ちょっと刺激を入れておきましょう。疲れているならイージーに走るだけでもいいですね。現地にはレース前日に入って試走をするけど、山頂まで行くのはちょっとやりすぎ。イメージをつかむために1合目まで行っても良いけど、料金所まで走って戻るくらいでも良いですね。前日はあまりがんばらないこと。早寝早起きも基本です。午前7時スタートだから少なくとも朝4時には用意を始めたい。できることなら身体を朝型にしておきたいですね。
2017年の秘策はロッキー!?【片山右京さん】
編集部:右京さんはチームUKYOの運営や、F1の解説など多忙を極めていますが、いつ自転車のトレーニングを行っているんですか?
右京さん:練習する時間が限られていますから、今年はオンライン・インドアトレーニングのZWIFTを取り入れて毎朝、山岳コースを1時間くらいこなしています。
山岳コースはおよそ6〜7%くらいの上りを27分間くらいで上り、下ってから15分ほどの13%の上りを走る山岳コースを走ります。それを始めた頃は平均130〜170Wで選手に笑われるくらいでしたけど、今はとても疲れていたとしても、180〜200Wくらいで走れて、調子が良ければようやく240Wで40分くらい走れるようになりました。
そんななか、久しぶりに大観山を上ったんです。ZWIFTをやっているから脚の調子は良いんですが、外を走っていないから腕が弱っていて。普段は朝1時間も乗っていないので、1時間を過ぎてからの激タレの仕方がすごい。これはヤバいと。
まあ現時点では、ね。去年は4合目までを50分で走れていたので、これは良いタイムが出るかも、って思っていたけど、1時間すぎたところでバックファイヤーしてしまっているから、その反省は活かすつもりです。
編集部:今中さん対策としては、どんなことをしていますか?
右京さん:ライバルの(Mt.富士ヒルクライムでは)今中さんはロッキーだからね。ロッキーのトレーニングって、ほら、岩を持ち上げたり、木に登ったり原始的でしょ? だって現役のときの今中さんは月に6000km走ったと言っているし。
そこで俺は最新のZWIFTで、パワーメーターをみてデータで管理して。今年はケイデンスも出力しっかりと把握して、1時間10分はパワーが保てるような科学的なトレーニングを駆使して挑む(笑)
編集部:でも映画の筋書き通りだったらロッキーが勝利しちゃいますよね?
右京さん:あれも古い映画だから。ロッキー2017 in Mt.富士ヒルクライムでは違う結果にね……。
そもそもお二方は公私とも、とても親しい関係。ですが、Mt.富士ヒルクライムにかんしては忙しい仕事の合間を縫ってトレーニングに励み、お互いの走力を意識しながら走っているそう。そんななか、昨年はバトルという展開になりました。さて、舌戦?も過激になってきましたが、今年もお二方のバトルが実現しそうですね。来月には嫌でも結果が出ます。さて、どんな展開になるのか今から楽しみです。
写真:江西伸之 文:編集部
協力:江崎グリコ http://www.powerproduction.jp/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。