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2020年04月19日

與那嶺恵理選手(Alé BTC Ljubljana) インタビュー/コロナ禍に翻弄されるレースシーンの今を訊く。

現在、オランダを拠点に女子ワールドツアーで走る與那嶺恵理選手(Alé BTC Ljubljana) 、そしてパーソナルコーチを務める武井きょうすけさんは、現在もロックダウンとなったオランダに滞在し、レースが開始されることを待ちながら選手生活を続けている。
そこで現在、どんな生活を送っているか、最新の状況を伺った。
何もなければ、現地のビールや美味しい話でも聞く楽しいインタビューをお届けしたいところでしたが、今は自転車競技はもちろん元の生活に100%戻れるかどうか先行きがわからない状況。
明るい話ではありませんが、ひとりのプロ選手とコーチの今をお届けします。

取材日:2020年4月16日

➖現在の状況は?

與那嶺恵理さん(以下、與那嶺):昨日(4月16日)やっと、スカイプでチームのミーティングがありました。先日『UCIレースの再開』についてオフィシャルのアナウンスがあり、その内容を踏まえて私たちはミーティングを行いました。
内容としては「とりあえず7月まではレースが無い。ワールドツアーは8月まで行わない」というもの。
たとえレースができたとしても、オーガナイザーが金銭的な問題でキャンセルせざるを得ないというレースも結構あります。
マネージャーやオーナーから言われたのは「私たちに聞かれても、申し訳ないけどわからない」。
チームメイトも「とりあえず最初のレースはいつなんだ?」とチーム監督に連絡していたらしいですが、監督も応えたくてもけどわからない。という状況です。

先週、連日のチームミーティングでチームGM、BigBossから状況の説明を受けました。
私の所属するチームのメインスポンサーはItaliaのAleとスロベニアのBTCショッピングモール 今回のコロナショックで大きな影響を受け、チーム運営が大変な状況に。
BigBossからは「あなた達、選手は私の娘だから、解雇するわけにはいかない」 「ワールドツアーライセンスも2023年まですでに購入をしているので絶対に活動は継続させる」 。
チーム側から給与削減を提案され、私達、選手も受け入れました。
4月から12月まで、通年を通しての給与削減。
仕方が無いです。7月からのUCIレース再開に向けて チーム活動が継続できるようにすることが最優先の選択。 混乱した状況は続いています。

➖そういう状況だと、他の選手たちはどういう反応や動きになるんでしょうか。

與那嶺:選手によりますね。

私は7月までレースが無いので、丸々3ヶ月間はレースがありません。実質オフシーズンより長いです。
私自身はインターバルトレーニングやレースに向けたコンディションをあげるトレーニングは現在行っておらず、体重を増やさないようにサイクリングレベルのペースでしかトレーニングしていません。
チームメイトや選手によってはチームのトレーニングコーチがついているので、インターバルをやったりしています。
そんな状況で昨日やっとUCIから発表があったわけですが、それまでは「6月に再開」という情報もあったので、みんなトレーニングは続けていました。 イタリアやスペインのチームメイトはまったく外で乗れない状況です。
ローラーでいくらインターバルをしても、やっぱり違うのですよね。特にワールドツアーのプロとしては。
だから、ちょっとみんな……不安な気持ちですよね。

➖ご自身の活動する地域は野外でトレーニングができるのですか?

與那嶺:オランダは、コロナのロックダウンが始まってからというもの、めちゃくちゃ天気がよくて。
オランダは外で走れるので、外でやってますけど……。ロングのトレーニングなんて全然行く気になれない……。トレーニング時間は2時間から3時間以内です。

©️Eri Yonamine

➖街の様子はどんな感じですか?

與那嶺:住宅街はちゃんとみんな住んでますけど、町の中心部はもうゴーストタウンみたいです。
スーパーマーケットとパン屋さんと肉屋さん、いわゆる食料品店しか開いていないので、そこへ行く人しか歩いていない。
市役所とかは開いています。が、行政はオンラインで済ませられることが多いので、よほどのことがないかぎり足を運ばなくて済むようになっています。
ただし流通は止まっていないので、アマゾンとか、こっちの楽天みたいなのはやってますね。

➖オランダは感染者数など状況はいかがですか?

與那嶺: 国民自体はある程度はコントロール下になっているように感じます。
人口が少ないので、感染者数は少ないけど罹患者(りかんじゃ)は普通に多いと思います。

➖そんな状況であって先行き不透明ですが、今できることや、やりたいことはありますか?

與那嶺:震災時はチャリティや目標などにむけてやってこれました。今、亡くなる人が増えてきたり、医療の現場で足りていないものがあるなど、情報は伝わっていますので何かできないかとは思うのですが、が、ロックダウンという現在状況を鑑みると、何も思い浮かばない。
チャリティをしようにも、どこかに行けるわけではない状況です。
Zwiftを使ってゲラント・トーマス選手がチャリティを行なっていましたけれど。
例えば地元のレストランが閉まってるからテイクアウトして支援したいと言っても、インスタにアップして“みんな行こうよ“って言える状況ではありません。
仮にポストしたとしても、地元の人しか行けない。だから結局なにもできない。逆に家に居ることが一番、自分の世界に引きこもることが今一番ベストなのかなという感じなので、家のなかで毎日暇つぶししています。

フェイスブックには現在の状況が綴られている。©️Eri Yonamine

➖できること…。コーチ推薦のエクササイズの配信とか、どうでしょう?

與那嶺:家にいないといけないから、みんな新しいことやってるじゃないですか。家でできるエクササイズとか。
普段やってないことをやると、違うところに筋肉がついちゃったりしますから。
変わったことを1ヶ月とか2ヶ月やり続けると身体が変わってしまう。
実は一般的なメニューが一番効果的なんですよね。あと、続けることが一番大事なので。
なので私はあまり行わないんですよ。プランクとアブローラーくらいしかしていません。
それよりも、歩くとか、走るとか、そっちの方をしています。

➖ランニングをやっているんですね。

©️Eri Yonamine

與那嶺:今やってますね。1時間弱くらいで、10kmくらい走ります。
走ったからといって、強くなるってわけじゃないですからね! 気分転換です。
まさにプロ選手の中にもうつ病になってしまう人がいると聞いています。
私も週に一回くらい、もう料理も何もしたくない、ってなります。外に飲みに行きたいんですけど、開いてないですから(笑)。

➖たしかにテレワークになって合理的だと最初は思っていても、長引くと閉塞感がある。ああ、日常の通勤をしているのも悪くなかったんだ、って。

與那嶺:人と関わらないと調子、おかしくなりますよね。

➖今後の予定は?

與那嶺:とりあえず、7月からUCIはレースをオープンにします、って言ってるんですけど、女子はレースカレンダーが出ていなくて、1ヶ月後、5月15日までには7月からのスケジュールを出しますって言っています。
昨日出た情報では、私たちに関わるのはナショナルだけなんですね。ナショナル選手権は8月22、23日までにナショナルフェデレーションが開催してくださいということのようでしたが、欧州でも各国が相次いでスポーツイベントの禁止を発表していて、ベルギーやドイツは8月末までスポーツイベント禁止なんです。日本でも延期してその上会場が取れるのか、という課題もあるのではないかと思います。
私の場合、出場するためにヨーロッパと日本の往復します。帰国したら隔離の様な状態になる可能性もありますので、まったく先が読めません。しかし来年はオリンピックが開催される。
今年の全日本でチャンピオンは取りたい。オリンピックイヤーなのにチャンピオンジャージじゃない状態でオリンピックに出る、というのは私はイヤなので。

➖しばらく帰国の予定はありませんね。

與那嶺:ありません。レースがいつ始まるかわからないので、日本に帰って、またオランダに戻ってくるときの状況がつかめません。今後の状況次第では、渡欧できなくなる可能性も。
今、日本の拠点となる場所もありませんし、オランダなら外で自転車に乗れるので、オランダの自宅に居る方がチームからの連絡も受けやすい。日本に帰ってしまうと、時差も出てしまいますから。
男子のレースは予定が出ていて、それと並行してアルデンヌやツール・ド・フランスの延期の日程も発表されました。
ツールが中心なんですよ。その周りにどのレースを入れて行くか、というのが現在の流れですね。
したがって今年のシーズンの最後が11月8日のリエージュ・バストーニュ・リエージュと決まりました。これは女子もあるのでリエージュがシーズン最後のレースということになります。
そのあと11月末までのオフが2週間。矢継ぎ早にチームキャンプ、チームプレゼンテーションという流れになるので、日本にゆっくり帰るというのはしばらくなさそうですね。

➖翌年以降のチーム契約の話はこの自粛中になるということなのでしょうか。

與那嶺:うちのチームは今年はもう捨てる年みたいになってるので、そのまま翌年に持ち越すような雰囲気があります。
選手自身も求職活動をしようにも、あっちもこっちもお金が無い、そもそもチームが無くなるかもしれないという状況です。
だから、私も動かない、動けない。
でも2020年で契約が切れる選手も多いです。わからないですね。

➖武井さんへ:なにか(明るい)話題を。地元の美味しいビールのオススメは?

©️Eri Yonamine

武井きょうすけさん(以下、武井):僕の家から、20kmほど40分くらいのとこにあるベルギーのトラピスト系ブルワリーのバルデユーがいい!
先日、向かったら警察に止められて……。国境を封鎖しているんです。レースで使うような鉄の柵が道路に置いてあって、大きな道には警察がいて。
僕たちは国境の近くに住んでいて、普段はベルギー方面にトレーニングに出かけてたんですけど、オランダ内しか移動ができないから、狭い範囲で走っています。
語弊を恐れずにいうと、僕らが生きているうちに第三世界世界大戦がやってきちゃった感じだよね。ヨーロッパのど真ん中にいると、ほんとのゴーストタウンになってしまっている。
テナントも潰れていっているし、空き巣といった犯罪も増えてきています。

➖では、ステイホームを余儀なくされているみなさんにコメントを。

與那嶺:健康を維持するしかありません。
ルールを守って、不要不急の外出をせず、時間が解決するしかないと思っています。人生の中で『失われた数ヶ月になるだけだ』と思って。

武井:8月頭からレースが始まるにしても、まだ4月。
コーチとしては、4月いっぱい休養してもらっていますが、レース負荷が入ってないんで、プログラム作るにもどうやっていけばいいのかな、と判断が難しい。
あとは選手に対しても、次のレースがこうだから、こういう準備をしよう、っていう話ができません。
だから大変ですね。プロスポーツはこういった情勢の影響が大きいと感じましたね。

©️Eri Yonamine

🦁🧡JUST LOVE IT 🧡🇳🇱My home town, It would be today in #Cauberg 🗻 So, share #goodvibes of last year 👏🏻🐶🚴🏻‍♀️🚴🏻..We can’t have #AmstelGoldRace 🍻 in spring. But, I believe to be back(hopefully in autumn 🍂) this atmosphere & race 🧡 ..I love to see many cyclists riding bikes in this area 💛 And happy to share how hard the Cauberg(also others) is 🙈 (for me it’s duty to ride up Cauberg every training day 😜sometimes pass it, though🤫)I can’t wait to be back lots of cyclists in Cauberg 🧡..去年の #今日のエリさん #AleBTCLjublijana #withDMT #rudyproject #cipollini #NK1K

與那嶺 恵理さんの投稿 2020年4月18日土曜日

関連URL:Eri Yonamine (與那嶺恵理)オフィシャルページ https://www.facebook.com/eri.yonamine.5
武井きょうすけさんインタビュー https://funride.jp/interview/takei_interview20191020/

写真:Eri Yonamine、Kyosuke Takei

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