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2018年11月02日

【カーボンドライジャパン】早川洋文さん “スポーツ自転車に対する想い”

未熟な市場に一石を投じる

早川 責任をもって売るということができないと、市場として成熟しないと思っています。
メーカー側としては新車セールスの支障になるのではないか、新車が売れなくなるのではないか、という心配があるかもしれませんが、いろいろな選択肢を増やすことで多くのユーザーが自転車業界に留まりやすくなります。

まさに我々の補修ビジネスはその概念です。
開始当初は業界内で風当たりが強かったですが、フタを開けてみると我々の取り組みは認められました。

山本 何が起きたのですか?

早川 お客様が買い換えられない状況だったら、自転車から降りるしかない。補修して乗れるようにして、買い替えの時期が来たら新しい自転車を買いましょうと。つまり自転車業界にお客様が留まることができるんです。
「自転車が壊れたが、買い換えしか選択がない」とお金に余裕があるお客様はいいですが、ない人はどうすればいいでしょうか。諦めて降ります……。でも、それではいけないでしょうと。
語弊を恐れずに言うと、元々はオートバイ業界や自動車業界を見てきて、やってきたからこそ、自転車業界のなかでモノ・コトが確立されていないと思います。とはいえスポーツ機材という特異性もありますが。

偉そうに発言をしていますが、根本的なところを述べると、お客様の選択肢を増やしていったほうが、自転車業界が明るくなると思うのです。年々、スポーツ自転車の市場はマイナス成長傾向になってきていると感じます。そこでお客さんにどのようにして留まってもらうかということを考えています。

『価値のなくなったものに、価値を取り戻してあげる』

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セレクトパーツとしてビンテージフレームも展示される。かの有名ブランドの名車も

山本 どのようにして、集めるのですか?

早川 CDJには750店舗の提携ショップがあります。遠方のショップはメールや電話での対応も可能。ショップ・個人からの依頼も買取サービスとして受け付けます。修理できる商品であれば、買い取ります。ショップに滞留している商材も多くあるはずです。これらは買い取り、あるいは委託販売を行っています。
長年やっているショップは、年々の積み重ねてしまった在庫というものがあるはず。それをCDJが媒体となって違うチャンネルで提供したら売れるのはないか。

山本 在庫に埋もれてしまい、本来欲しい人がいるはずなのに世に出ないことも多いですね。

早川 いちショップが情報を出してもお客様がなかなか見てくれないということもあります。地域で閉塞感が出てしまっているショップも多く、『個人では限界がある』というショップ店長の声も聞きます。
『価値のなくなったものに、価値を取り戻してあげる』壊れた=ゴミではなく、リサイクルできる商材です。CDJではリバイブといっています。CDJリバイブプロジェクトでは、CDJ認定フレーム、CDJセレクトパーツ、買取サービスというカテゴリーで構成しており、商品を再生していこうと。

山本 気になるのは壊れたフレームを仕入れ、修理する。値付けはどうしますか?

早川 買取においては新車価格と比較した中古市場の価格は無視できない。完璧に修理をして1年保証をつけるのでしっかりとした価格をつけたいですが、『基本は損傷したフレームでしょ』という、ユーザー意見もある。基本的には新車価格以上はないでしょう。当然コストはかかるので、新車〜中古相場の価格をベースに考えて、買取額を提示します。

山本 売値は数万円のものでも、補修代金が乗ってしまうと割に合わないということも生じますね。

早川 修繕できないものや販売に適さないものはゼロ査定という判断もあります。カーボンサイクル事業という違う分野でのリサイクルも行なっていますので、処分のための引き取りは可能です。CDJの場合は多くのショップさんとのやりとりがあり、中立的な立場です。

CDJセレクトパーツは売るにしても面白いものじゃないとつまらない。やるんだったら変わったものや珍しいもの。もともと僕が四輪やオートバイ関連のデッドストックとかビンテージなどに携わっていた経験もあって、そんな感覚で面白いものを集めてご案内したい。『これはイカすじゃん』というものを集めたい。だから買い取りから委託まで行っていく。

これもまだまだこれから。CDJのスタッフが取引のあるサイクルショップなどを回って、パーツを掘り出していきます。『こんなものがあるんだな、すごい! 』みたいなものをもっと扱えれば(笑)。

例えば、このフェラーリとのダブルネームのサドルも、フェラーリユーザーから見たらビンテージパーツとしてグッとくるはず。サイクリストから見たらただの古いものだね、で済んでしまうしれないけれど、違うアングルからだと、すごく面白いものに見える。ビンテージというレトロだけを強調するだけじゃなくて、違う角度からの面白さもCDJならではのチャンネルに提供していきたいですよね。これを一つの考え方として、広めていければと思います。

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取材協力:カーボンドライジャパン
CDJサテライトストア大須

写真と文:山本健一

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