2018年08月22日
【第18回アジア競技大会(2018ジャカルタ・パレンバン)速報現地レポート】女子個人ロードレース 與那嶺 恵理が銅メダルを獲得!
(写真)表彰式。左より銀メダルの普訳嫺(プー・イーシェン 中国)、金メダルの羅亜凜(ナ・アルム 韓国)、銅メダルの與那嶺恵理
インドネシアで行われている第18回アジア競技大会。22日は女子個人ロードレースが行われた。
会場はMTBに引き続きジャカルタから直線距離で100kmほどのスバン。スバンの町を西に走り、折り返し地点から再びスタート付近へと戻り、バンドンへ向かう山道を終盤に使用した全長104.4kmのコースだ。
前半から中盤までがほぼ平坦でわずかなアップダウンが続き、後半に上りが待ち構えるオールラウンダーとしての能力と優れた戦術を必要とするハードなコースだった。
日本チームは、唐見が序盤から積極的に動き集団の主導権を握った
スタート直後から飛び出したのは、地元インドネシアのヤンティ・フチアンティ。その逃げが容認され、およそ65kmの道のりを逃げ続けることになる。
スタートからアタックをかけて60km以上逃げ続けたインドネシアのヤンティ・フチアンティ。この行動が各チームの戦術を狂わせた
中盤までのフラットなコースでは、メイン集団を唐見実世子が積極的にコントロール。前方とのタイム差が3分以上に広がるとメイン集団ではアタック合戦が始まるが、逃げは容認されないままフチアンティを吸収した。大きくレースが動いたのが、後半戦の上りに差しかる部分。
與那嶺恵理と韓国の羅亜凜(ナ・アルム)がコントロールする先頭集団が形成され、徐々に人数を減らしていく。ゴールまで5km地点の手前の上りで羅がアタックをかけて、そのまま逃げ切り金メダルを手にした。
2位争いは與那嶺と中国の普訳嫺(プー・イーシェン)によるゴールスプリントとなり、ゴールライン手前で普が與那嶺を差しきり銀メダル。與那嶺は銅メダルを手にした。中盤までに大きな活躍をした唐見は20位でフィニッシュした。
中盤まではスバン市内を横断しUターンするコースで、フラット基調のなかわずかにアップダウンが続いた
チームカーからの補給を受ける唐見。日本チームは暑さ対策として氷を用意していて、首の後ろなどを冷やした
唐見(中央)は終盤の上り坂に入る前まで積極的に集団を引いて、アタックがかかりにくいペースを作った
上りに入った直後にできた7人の逃げ集団で積極手にリードする與那嶺
公道を規制して行われたレース。沿道には多くの住民たちが詰め寄り応援していた
與那嶺(右)と韓国の羅が協調して前を引き、集団は最終的に4人に絞られる
ラスト5km手前地点でアタックをかけて、2位に1分20秒もの差をつけて韓国の羅(ナ)が金メダルを獲得した。2016年に日本で行われた“アジア自転車選手権”で優勝、2017年のバーレーンで行われた“アジア自転車選手権”では2位を獲得している
與那嶺(左)と中国の普(右)によるゴールスプリント。競り勝った普が銀メダル、與那嶺は銅メダルを獲得した
與那嶺 恵理(BIKE SHOP FORZA/Wiggle High 5 Pro Cycling)のコメント
もちろん金メダルを獲りにきたので悔しさはあるが、何もないよりは銅メダルを獲れてよかったと思う。ヨーロッパからインドネシア入りして日も短く、上りのコンディションはあまり良くなかった。そこで平坦な中盤までで逃げ集団を作りたかったが、しかしそれを容認する意志が各国チームになかった。それで上りに入るところが勝負のポイントになって、各国チームが追ってきた。平坦な部分までは、唐見さんが自分の求める動きを話さずとも積極的にしてくれて、すごく走りやすかった。
上りでもう少し早めに集団を削りたかった。でも2人までは連れてきていいというプランをコーチと話しをしていて、結果的に5人の集団となったがよい展開だったと思う。レース終盤で自分のいたトップ集団が4人になったとき、韓国の羅選手と私以外は前を引かない意志を明確にしていたので、後方集団に吸収されないように2人で積極的に集団をコントロールしてレースを進めた。
最後の一番きつい上りでトップ集団から羅選手がアタックをかけたときに、先に行かせる判断をした。自分の脚もあまり残っていなかったなかで、前を追って4位になるよりも表彰台に上がれることを優先した。最後に得意な上りがあるのがわかっていたので、先駆けして自分の脚が残っていなかったら、再度集団に加わる作戦でゴールを目指した。
最後はゴールスプリントになったが、いままでのレース経験のなかで初めてだった。ゴール手前で中国の普選手に抜かれしまったものの、メダルを獲ることができた。
明後日には同じ上りを使用するタイムトライアルもあるので、TTバイクを使うか、ロードを使うか明日試走して決定したい。いつもどおりやるだけだと考えている。
唐見 実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)のコメント
スタートからのインドネシア選手のアタックが予想外だった。ノーマークの選手で、はじめは途中で捕まえられると思ったが、どんどん差が開いていった。日本のほかは韓国やベトナムが協調したものの、ほかのチームがあまり前を引かず踏んでも全然追いつかなかった。脚を使って積極的に追い始めたが、意外に早く65km地点あたりで捕まえることができた。しかし、ここで脚を使ってしまったことが大失敗だった。
與那嶺さんに脚を使わせたくなかった。香港と中国が後方で脚を貯めているのがわかっていたので、カウンターアタックを仕掛けられないように、アタックできないペースで集団を引いた。そこで與那嶺さんの脚を残しながら山の麓まで連れて行こうと思った。與那嶺さんが各チームからマークされていたので、私が動かない限り集団はまとまらないと考えていた。
與那嶺さんも自分の脚を結構使いながら集団をまとめてくれた。そういう意味でいいレースだったと思うし、メダルを獲ってもらってよかった。
柿木 孝之(JCFロードコーチ)のコメント
スタートしてすぐのインドネシア選手のアタックが想定外だった。
タイム差が最大で3分以上になるなかで、それ以上広げられないように唐見にはローテーションに入ってもらった。タイム差1分以内で後半の上りに入れればいいと思っていたが、20kmほど手前で追いついてしまい、そこからアタック合戦になってしまった。
日本チームのプランとしては、ある程度集団を維持したままで2人の脚を残して上りに入りたかった。しかし與那嶺も唐見も対応してくれて、上り区間からは力勝負になった。最後、残り5km手前で韓国選手がアタックをかけたあとの2位集団に與那嶺が入っていたが、ほかはすべてスプリントの強い選手だった。
そこからスプリントでは最も不利な與那嶺が、うまく立ち回ってくれてメダルを獲ることができた。勝てなかったのは残念だがメダルを獲るためにクレバーに動いてくれたと思う。
写真と文:猪俣健一
関連URL:https://www.joc.or.jp/games/asia/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。