2020年06月16日
レジェンド三船雅彦が指南する月間走行距離の伸ばしかた
現在、FUNRiDEでは、TATTA RIDE for Mt.富士ヒルクライムという、走行距離ランキングを実施している。7月5日まで長期間行なっているランキングだが、どうやって取り組めば面白いだろうか。
そこで、ロングライドといえばこの人、元プロロードレーサーの三船雅彦さんに、走るための心得や、楽しく走るための秘訣を伺ってみた。
「ランキングはデータを取っていくことを、 毎日継続することで当然、距離や数値が伸びていきます。そういったものの積み重ねることで達成感が得られます」
それがモチベーションに変換できる人なら、ゲーム感覚で楽しめてどんどん距離を伸びていく、と三船さんは分析している。
「こういうTATTAのようなアプリを用いたりするのはいいことだと思います」
18歳から日記を書いているという三船さん。現在は手書きをやめて記録するのはSNSアプリに変わった。
「日記が1日でも途切れるのが嫌。毎日続けることで、明日も頑張ろうとモチベーションになっています」
生活の軸がぶれないような設計を
あるひとつのことに夢中になって生活習慣に支障が及んでしまう…..そんな経験は誰でもあるはず。
「生活の軸がどこにあるのか。それを支えるもう1つの軸がどこにあるのか。
まずひとつめの軸は仕事でしょうか。例えば朝9時から始まるのに、朝練は何時にできるか? 朝は走った方が気持ちよく仕事を始められると思えば、朝練がもう1つの軸になるでしょう」
「私の場合は、今月は獲得標高を、先月は走行距離をテーマにしていますが、そういった目的を達成するための必要な時間を割り出しておきます。
仕事の時間は決まっていますから、出発時間が変わってきます。ここ2ヶ月くらいは朝4時起きですね。朝に仕事のメールチェックなどをして、おそくても5時半には家を出るというスタイル。
9時半から仕事ですから3時間は走れます。あくまでも仕事という軸があって、走りたいという軸がある。
30分しか走れないとか、梅雨のさなかの大雨でも、走りたいなら走るし各々の気持ちの組み立て方の問題ですよね」
積算させる距離が伸びたり、日々の継続が楽しいと感じれば、1日30分でも乗りたくなる。それは良いことだが、生活の軸がぶれないようにしたい。
目標設定のしかた
「目標設定は難しいです」と三船さんはいう。それはどういうことだろうか。
「低すぎても続かないし、無理があっても続かない。高い目標に向かってチャレンジしていく中で広がりをみせるパターンもありますが、総じて目標設定は難しいですよね」
専属トレーナーでもついていない限り、他人に決めてもらうものでもない。前述した生活の軸を元に組み立てていくのがよいだろう。
「このTATTARIDEの中心年齢でもある40代くらいになると様々な経験をしているので自分ができることは想像しやすいと思います。
できないことはチャレンジしませんよね。毎日でなくても週に3回くらい….と自分の長続きできそうな目標を吟味していきましょう。
50代になったら明らかに健康面で劣ってくるのがわかります。毎日がんばって続けたほうが身体にとってはいいことだと私は思います。
曖昧にはなりましたが、適切な目標設定というのは大事ですね」
ビギナーは「ちょっと頑張る」を目標にしてみよう
「初心者は自転車で走る筋肉が発達していませんから鍛えるという意味でも、少しでも多く乗った方がいいですね」
これは距離に対してではなく、頻度のことだ。
「いきなり200km乗るのはNG。身体に長時間走るための耐性ができていません。毎日1時間でもいいのでサドルに跨ってみることを目標にしてもいいですね。
しかし、仕事をしながらとなると、打ち合わせや会合もあり帰りが遅くなることもあるでしょう。
そういう人は週に3回、4回で良いでしょうし、普段3回乗れる日があるなら4回にしてみるなど、ちょっと頑張ったら続けられるかな? が目標としては良いと思います」
距離より時間を
距離より時間で。まさに生活の軸は時間によって決められている。三船さんが現役の頃は時間で練習量を管理していた。
「最初は距離で見過ぎないほうがいいと思います。自転車は走行距離で物事を見てしまいがちですが、距離はその時のコンディション、コースや向かい風など気象条件によって変わりますが、時間軸は一定です。結果としての距離と考えます」
距離にとらわれすぎるとどうなるのか?
「頑張りすぎてしまうのです。
また、せっかく景色が良い楽しい道があるのに、距離を稼ぎたいから平地で距離を選んでしまう、というのはもったいない。
楽しい道を走った方が長続きすると思うのです。1回のライドあたり1時間、2時間という時間軸の中で距離を稼ぐという気持ちで楽しみたいですね」
コースの取り方についても三船さんの反面教師のエピソードがある。
「かくいう私も獲得標高を稼ぐことに注力していて、往復で同じコースを走ってばかりで飽きてきたりしました。
未知なるコースを走ると、新鮮だしあっという間に時間もすぎる。近所にこんなお店が、景色があったのかという発見も自転車の楽しみなのです」
流行のインドアライド
最近はホームトレーナーでトレーニングをしている人が増えています。その影響もあって実走をしている人は減っている気がします。
それだけで楽しんでいる人たちのことを否定はしませんが、屋内練習のしすぎは発汗量が多くミネラルも抜けやすいので身体に負担がかからないよう配慮しましょう。
公道を走るならライトに投資すべし
自転車に係る交通ルールが今話題となっているが、まず根本的になにが必要かエンデュランスライドの第一人者はこう言う。
「当たり前ですが、イベントではなく普段の走行では保安部品としてライト、尾灯、ベルが必要ですね。
チューブ・ポンプはいうまでもなく必携…..タイヤはパンクしづらいタイプを選んでいます」
これらのなかでひとつだけ深掘りするなら、それはライトだという。
「自転車での旅感覚がない人は、ライトのスペックに手抜きをしがちな傾向があると思います。
ナイトライドをしない人ならもちろん過剰なライトは要りませんが、日曜日にロングライドに出かける時など、日が落ちることも想定しておきましょう。
公道を走るためにはスポーツカーだとしてもライトはちゃんとついていますよね。ライトの性能は命に関わることなので、1つはちゃんとしたモノを揃えておくと安心ですね」
タイヤで大失敗したエピソード
「昔、タイムトライアルをやるようなレース用の細いタイヤで小豆島1周に出かけたことがあります。島には大阪城を作るための石切場が多く、鋭利な小石でパンクをしたことがあり、車で迎えにきてもらったという苦い経験もあります。
ホイールにかんして言えばカーボンホイールの走行性能は否定しませんが、普段のライドではアルミリムでいい。
なぜかというと何かあった時の対応がしやすいからです。
カーボンリムの場合は破損すると走れなくなる可能性が高いからです」
「保安部品や装備は念入りにしておくこと。リスクを課して得たスピードよりも、トラブルに合わない確実なスピードのほうが結果的にスムーズに走れると思います」
写真:三船雅彦さん提供
関連URL:http://www.masahikomifune.com/
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著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得