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2020年05月28日

“Ship &Ride”新しい自転車の遊び方を提案する複合施設WAKKA、しまなみ海道にオープン!

瀬戸内海に浮かぶ6つの島を結ぶ、しまなみ海道。愛媛県今治市と広島県尾道市にまたがる全長約70kmあるサイクリングロードの中間地点となる愛媛県の大三島に、宿泊施設、カフェ、更衣室、ランドリー、休憩スペースを併設したサイクリスト向け複合施設「WAKKA」がオープンした。

しまなみの景勝地にオープンした、サイクリスト憩いの施設

大三島と隣の生口島をつなぐ多々羅大橋のたもとから1km強の距離にあるWAKKA。遮るもののないオーシャンビューの約4000平方メートルの土地に、コテージとドミトリー、グランピングテントとタイプの異なる宿泊施設(合計最大33名収容)、テラス席含めて60席あるカフェ、ランドリー、誰でも無料で使用できる更衣室や休憩スペースが配置されている。ニュアンスのある白で統一された建物はヨーロッパのビーチリゾートを思わせる空間は、スタイリッシュながら木の温かみが感じられ、サイクリング途中にふらりと立ち寄って海を見ながら休憩するのにぴったりだ。

宿泊コテージのテラスからの眺め。多々羅大橋の絶景が間近に
ドミトリー ©️WAKKA
ドミトリーの室内。
定員4名で、3名以上で貸切も可能

WAKKAのサービスでもっとも特徴的なのが、タクシーや船を使ったサイクリングサポートシステム。例えば、天候不良や体調不良、自転車の故障などでサイクリングを中断せざるをえなくなったなどリアタイアをサポートしてくれるだけでなく、好きな場所で乗り捨てしたレンタルバイクの返却も代行してくれる。この制度を利用すれば、復路はタクシーと割り切って長距離で自由に周遊コースを設定でき、レンタルバイク利用の場合でも、バイクを返却するためだけにコースを往復する必要もない。

さらに、瀬戸内海ならではのサイクリングの楽しみとして、船移動をプラスしたシップ&ライドに注目したい。WAKKAは敷地内から発着できる9名乗り(自転車を積んだ場合は乗客5名定員)の船を所有しているため、しまなみ海道のサイクリングコース以外の島にも自由に行き来ができる。このサービスを利用すれば、WAKKAから自転車を積んで橋の開通していない周辺の島へ向かい、ぐるっと周遊サイクリングしたり、無人島に出かけて海水浴やBBQをしたりすることも可能。しまなみ海道を走り慣れたリピーターにとっても、瀬戸内海の魅力を再発見できる、新たなサイクリングの楽しみ方となるだろう。

ハイエースなら7名+7台の自転車を、コンパクトSUVなら4名+3台の積載が可能。料金は通常のタクシーと同様
敷地内の小さな桟橋から発着するマイボート。しまなみ海道のほとんどの島の港から目的地の港まで輸送してくれる
株式会社わっか代表の村上あらしさん。経営していたネット決済システム企業を売却し、WAKKAを設立。
家族とともに大三島に暮らす

サイクリングの魅力に惹かれ、ゆかりの地で

こういった、サイクリストの“かゆいところに手が届く”サービスを展開できるのは、オーナーの村上あらしさん自身がサイクリストだから。WAKKAをオープンする前、東京で会社経営をしていた村上さんは、ある日友人が購入したロードバイクに興味を持ったという。

「僕は酒もたばこも大好きで、それはそれは不健康な生活を送っていました。健康的なことをしている人を見ると“違う世界の人”と感じるくらい(笑)。でも機械をいじるのが好きで、ある日友人が買ったロードバイクを見て『こんなに美しいものがあるのか』と強く感動しました。シンプルで美しいのに、乗ってみるとびっくりするほど速い。すぐにバイクを買って、練馬から新宿までの13kmを通勤で乗りはじめると“どはまり”して、休日には100km、200kmのロングライドに出かけるようにもなりました。しばらく続けていたら、健康診断の結果がびっくりするほど良くなったんです。自転車の魅力を知り、そこから自転車のビジネスをやりたいと思うようになりました」 

村上さんが、WAKKAをしまなみ海道で立ち上げるに至った理由は、もうひとつある。村上さんの祖父が大三島の2つ隣の島、大島の出身で、江戸時代から続く豆腐店を営んでいたのだ。幼少期から親しんでいた土地であり、サイクリストとしても、しまなみ海道にサイクリングに何度も足を運んでいた。

国道沿いのエントランスから続く回廊を抜けると、芝生の広場とカフェが待ち受ける

しまなみ街道のHUBとなりサイクリングの輪を広げる

「実際に走っていると、しまなみ海道は全長70kmもあるのにその中間地点にサイクリスト向けの施設が足りなくて不便という印象がありました。(広島側の発着地点である)尾道にはU2があるし、今治側にはサンライズ糸山がありますが、初心者が1日で70km走るのはハードルが高いし、中間地点に施設があったら、もっとサイクリングの幅が広がるのではないかと考えたんです」

それから何年かかけて構想を練り、地元の人とも交流を重ね、2016年に土地を購入。満を持して2020年6月にオープンを迎えた。今後は、ホテルやタクシー業だけでなく、旅行代理店として、国内外のサイクリストに向けたさまざまなツアーを提案していく予定だ。

「これまでにもシンガポールの顧客向けに、4泊5日のツアーを企画し、アテンドしました。サイクリング以外に厳島神社や道後温泉など観光もたっぷり楽しんでいただくツアーだったので、人の移動、自転車の移動、機材の移動をすべてバラバラにしてこちらで管理。しまなみ海道のサイクリングのときには、ゲストは身ひとつで現地に向かえば、自転車と必要なものは現地にスタンバイできているといった具体です。瀬戸内海には、さまざまなアクティビティがあってどれも魅力的なのですが、どう組み合わせるか、移動をどうするかというのが肝になってきます。その編集の部分をこちらで提案し、ゲストには思いっきり楽しんでもらうという提案ができれば、瀬戸内海の観光やサイクリングがもっと大きく発展できると思います」

サイクリストのレベルにかかわらず、瀬戸内海のあらゆる楽しみ方を提案し、宿泊施設、陸海の移動手段を提供してくれる、WAKKA。それらがワンストップで利用できるのもありがたい。しまなみ海道初心者も、リピーターも、Ship&Rideの新しい自転車遊びを体験してみてはいかがだろうか?

緊急事態宣言の解除に伴い、2020年6月1日より感染防止対策をしたうえでの営業再開を決定しました。
くわしくは公式ページへ。
https://wakka.site/news/2278/

写真:山本健一
文:山本章子

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