2019年03月19日
【Mt.富士ヒルクライムを支える人】山梨県立甲府工業高校 早川誠司先生
山梨県立甲府工業高等学校の早川誠司先生はMt.富士ヒルクライムでは実行副委員長を務めていただいています。
早川先生は甲府工業高校の自転車競技部の顧問を務めており、精力的に自転車競技の活動を行なっています。そこで、高校自転車競技部の今はどうなっているのか、お伺いしました。
ー 顧問の早川先生ご自身について質問をさせてください。
早川先生:昭和60年3月に日本大学を卒業しました。もちろん自転車部所属です。 昭和61年、山梨県で国民体育大会「かいじ国体」が開催されました。
このような背景の中で、自転車競技の指導者がいなかった山梨県に普及と選手育成の目的で、当時の大学の監督(竹花敏氏)に奨められ山梨県に高校の教員として赴任しました。
これまで山梨県の4高校へ赴任し34年間、高校生の指導にあたっています。
山梨県立甲府工業高等学校 顧問 早川 誠司先生
ー 教育方針としての自転車競技はどのようにお考えですか?
教育方針というようなものでは無く、まず自転車競技の楽しさを知ってもらうこと。卒業後も自転車競技に携わった仕事、趣味でも何でもいいので生涯を通して自転車競技と出会って良かった。と思ってもらえるよう考えている。また、競技力の向上は当然目指しますが、何より「人」として成長して欲しい思いは強いです。
ちなみに 甲府工業高校の信条「技術者となる前に 人間となれ」です。
ー 競技部としての日課はありますか?
現在、生徒には1年間毎日1ページを目標に練習日誌を書かせています。これは練習だけでは無く、身体的変化・食生活・悩み何でも記録することを習慣となるよう意識させています。
書くことが目的ではなく記録することから見えてくる改善点、不調になった時の振り返りなど自転車競技に関するヒントが隠されています。
ただただ根性で練習するのではなく「考える」ことをしながら練習に繋がればという思いで行っています。
また、試合後の日はミーティングをして大会の振り返りを行います。個人・チームあらゆる角度から自分の動き・戦略を分析したもの、また他の部員の動きなど気づいたことを書き出します。
部の組織構成を教えてください。
主顧問 早川 誠司(56歳) 社会科
副顧問 前嶋 完(54歳) 電気科※北富士工業高校時代 自転車部顧問に
副顧問 河野 豊史(23歳) 機械科 本校卒業生(サッカー部OB)
部員数は3年生9名(男子8名・女子1名)、2年生2名(男子2名)、1年生7名(男子5名・女子2名)です。
部員数はこの13年間大きな変化はなく、学年で少ない場合があります。
現在の2年生の学年カラーが青色なのですが、何故か過去も青色学年時は2名の時が多かった。不思議ですが(笑)。
中学校にクラブ活動が無いので勧誘は基本的には行いませんが、あらゆる方面から情報が入ってくることがあるのでその場合は動きます。
つねにアンテナは高く張っています。
ー 目標を教えてください。長期的・短期的でお願いします。
長期的には「志は高く、腰は低く」
高い志をもって練習に臨み、常に謙虚な姿勢で満足すること無く日々精進!
最近、相撲の貴景勝のインタビュー時に語った言葉も印象強く、現在の部員にもそのように成長して欲しいと思いから、
「勝って奢らず、負けて腐らず」
つねに向上心を持って練習に臨むには必要なことだと思っています。
短期的には、4kmチーム・パーシュートで関東大会連覇を狙いたいですね。
ー トラック競技、ロード競技、どちらに力を入れていますか?
トラック競技・ロード競技どちらかというと難しい選択ですが、大集団の長丁場のレース展開から両手を掲げゴールを切る姿はやっぱり感動します。
また、トラック競技でもそれなりのスタミナが無ければ自分の考えるようなレース展開に持って行けないことを考えるとロード競技に重点を置いた方がいいのかなとつねに考えています。
平成30年度の関東高等学校自転車競技大会では4kmチーム・パーシュートにて県高校記録となる4分31秒472で優勝を飾った。
過去の戦績
ー どのようなトレーニングを実施していますか。1週間の具体的なトレーニングメニューを教えてください。
大きく分けてシーズン中、オフシーズンと二通りのトレーニングメニューを実施しています。
斬新さは、これと言ってありません。しかし、つねにマンネリ化しないように新しいものを取り入れようとは心がけています。
〈インターハイなどピークに向けてのトレーニング〉
1日の前半は、団体種目を中心とした練習で費やします。特に山梨の夏は厳しいので十分な休憩をとって1回1回を大切に取り組みます。団体種目の練習は個々の力量にも大いに関係しているので一番力を入れています。後半は個々の種目に関わる練習に取り組みます。
〈山梨の気候に関して〉
夏のバンクは照り返しが暑くてたまりませんが、こまめに水分補給をとらせるようにしています。学校の製氷機の氷の争奪戦には負けないように頑張ってます。ロード練習はちょっと校外に行けば山岳地帯ですので涼しい中でロード練習ができる環境なのでいいと思います。
冬は、寒さよりも盆地のため日が落ちるのが早く放課後はほとんど走行する時間がありません。室内でのマシンでのトレーニング・ウエイトトレーニング等が主となります。あまりマンネリ化しないように冬には水泳トレーニングを行っています。中には泳げない生徒もいますがビート板を使用してのトレーニングですので大丈夫です。泳げない者もはじめは溺れているようなぎこちない泳ぎでもオフシーズン後半には結構上手になっています。
ー 強くなる選手に特徴はありますか? 一定の法則などはありますか?
34年間生徒達を見てきて、この子は強くなるなと思った生徒の特徴は、
・練習が好きで指導者側がさすがに抑制するタイプの生徒
・コソ練(練習時間以外も個人でトレーニングする)をする生徒
・明るい生徒(試合に負けても腐らずチームを明るくできるムードメーカー)で信念を持っている生徒(ここ一番で力を発揮)
・練習日誌を強くなろうとう高い意識で記録する生徒
・何に対しても負けず嫌い(学業においても)な生徒
・謙虚さ(今の自分に満足しない)
・気持ちを切り替える柔軟性(マイナス要素を引きずらない)
以上を備えた人物は最強です。
ー 指導をしている部員たちにはどのように成長してほしいですか?
自転車競技を通じて得た経験を誇りとして、人生の苦難を乗り越えられる前向きで自信に満ちた人となって活躍して欲しいと思います。
写真と文:編集部、山梨県立甲府工業高等学校
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得