2025年10月07日
【第2回八ヶ岳ロングライド】「Road to 富士ヒル」目標達成への第一歩は八ヶ岳から! スペシャルなセミナーを参加者だけに

「第2回八ヶ岳ロングライド」が、9月27~28日、山梨県北杜市で開催。今大会は、「Road to 富士ヒル」をテーマにMt.富士ヒルクライムの公式イベントとしてリニューアル。別府匠さんによるセミナーなど、来年の富士ヒルに向けた様々なイベントが行われた。
「富士ヒル攻略に向けて」別府匠さんが徹底解説!
今大会も昨年に続き 「第22回Mt.富士ヒルクライム(2026年6月7日開催)」 の優先エントリー権を付与 。今回は参加者全員だ。富士ヒルへの熱い想いをたぎらせるおよそ650人が集まった。
前日受付が行われた27日、メイン会場の清里の森のステージでは「富士ヒル攻略に向けて」と題したセミナーを開催。講師は、元プロ選手で2022年まで愛三工業レーシングチームの監督を務めた別府匠さん。現役時代の2007年には富士ヒルの招待選手として当時のコースレコードとなる58分35秒を記録するなど、国内屈指のクライマーとして活躍した。

セミナーは約1時間半に及び、多くの参加者が真剣に耳を傾けていた。ここではその一部を抜粋してお届け。
標高が上がると有酸素能力が下がる「高地効果」を肝に銘じる!
富士ヒルの舞台となる富士スバルラインは距離24km、平均勾配5.2%、獲得標高1270m。山岳カテゴリーでは超級に分類されるという。
別府さんは標高が上がることによって、パフォーマンスが下がる「高地効果」に注意すべきと説く。
「気圧の低下、酸素含量の低下によって体に酸素が取り込めなくなると、当然、有酸素運動能力が落ちます。その結果、後半ペースが落ちて目標のタイムやリングを逃してしまう人も多いと思います」
「標高が上がるとパフォーマンスが下がるという現象は『高地効果』と呼ばれます。科学的に実証されていて、計算で求めることができます」
それでは、標高0m地点と比較してどれほどパフォーマンスが低下するのか? 富士スバルラインの場合、計測開始地点の料金所で―5.3%(0km、標高1050m)、ほぼ中間地点の三合目(12.8km地点、標高1786m)で―10.4%、五合目のフィニッシュ地点(24km、2305m)では―14.4%も低下する計算になる。
「高地に強い人、弱い人で5%ぐらいの個人差があると言われているので、あくまで目安ですが、富士ヒルは最初から5%ぐらいパフォーマンスが落ちている状態でスタートし、さらに上っていくとどんどん下がっていって、最後は15%も落ちている。結構大きいですよね」
つまり、最近主流のパワーを指標にする走り方では、フィニッシュまで持たないケースが多いということだ。
「パワーを目安に走っている人は、標高が上がると目標とするパワーが出ないと考えた方がいいです。富士スバルラインを攻略するには、後半いかに体力を温存しながら走れるかがポイントです」

心拍数を基準にベーストレーニング
富士ヒル攻略に向けて別府さんが立てたトレーニングスケジュールでは、12月~2月の冬の期間はパワーではなく心拍数を基準にしたベーストレーニングをお薦めしている。
「ヒルクライムでは高地効果で狙っていたパワーが出せない。なので、心拍数で強度を管理する方がペースの維持がしやすくなると思います」
ベーストレーニングは、心拍数のゾーン2で行う。心拍数のゾーン2は最大心拍数の60% ~ 70%。最大心拍数が180bpmのときは108~126bpmとなる。
「脂肪燃焼効果がある心拍数のゾーン2でトレーニングすると、毛細血管を活性化させて体中に酸素が行き渡るようになるので脂肪が燃える。さらに脂肪を燃やしながら筋肉がつくので、その効果で持久力が強くなる、軽めのギアで行うことでペダリングスキルが向上する、など様々な良いことがたくさんあります」
自分の「VAM」を知ろう!

また、別府さんはヒルクライム能力を測る指標として「VAM(Velocità Ascensionale Media)=平均上昇速度)」を紹介。これは、1時間あたりどれだけ標高差を上ったかを計算した数値で、富士ヒルのリングで計算すると下表のとおりになる。
タイム | VAM | |
90分 | 800m/h | ブロンズ |
75分 | 960m/h | シルバー |
65分 | 1108m/h | ゴールド |
60分 | 1200m/h | プラチナ |
58分35秒 | 1229m/h | 別府匠 |
56分21秒 | 1278m/h | 池田隆人さん(現富士ヒルコースレコード) |
40分 | 1800m/h | タデイ・ポガチャル(参考) |
「タデイ・ポガチャル選手(ツール・ド・フランス総合優勝4回、世界選手権2連覇)はVAMが1800 m/h出るらしいので、スバルラインを40分で走る計算です。すごいですよね。日本の富士ヒル参加者も、いつかこのぐらいで走る日が来るんでしょうか」
今回、八ヶ岳ロングライドでは終盤の海岸寺の坂でSTRAVAの「八ヶ岳ロングライドセグメント:海岸寺」のセグメントを設定。別府さんは、この区間を意識して走ることを参加者に薦めた。
多くのサイクリストが利用するSTRAVAだが、有料のサブスクライブ登録をしていなくても、PCサイトからログインして当セグメントを見ると、「平均上昇速度」の項目で自分のVAMを確認できる。

「VAMがわかればどのぐらいのタイムで走れるかという参考になるので、ぜひ試してみてください」
また他の距離や勾配が違う上りセグメントでも、自分自身のVAMはある程度の範囲内の数値に収まるので、普段練習コースで使っている峠などで定期的に計測することで自分のトレーニングの進み具合の確認や、富士ヒルの目標設定に活用できるだろう。
エアロロードか、軽量オールラウンドモデルか? 呼吸の整え方は? 質疑応答も活発
質疑応答セッションでは、参加者から積極的に質問が投げかけられ、別府さんも丁寧に回答していた。その一部をご紹介!
Q:シルバーのタイム(75分)は、機材がエアロと軽量のどちらがいいのかちょうど境目と言われているが、女性で軽量でハイケイデンス型の場合、どちらを重視したらいいですか?
A:極力、後半まで脚が残せた方がいいので、エアロを使うのであればめちゃめちゃトレーニングしていて豪脚な人ならいいと思う。そうでなければ、オールラウンド型の軽量バイクの方が後半に脚を貯めやすく、最後の最後で力を出せると思います。
Q:呼吸がハアハアと苦しくなったときに、それを落ち着かせた方がいいのか、もしそうなら呼吸を整える方法はありますか?
A:呼吸を整えるためには、できるだけ吐くことです。吸う方が強くなると酸素が入ってこないので、できるだけ落ち着いて吐く方がいいですね

関連URL:Mt富士ヒルクライムHP
八ヶ岳高原ロングライドHP
著者プロフィール

光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。