2016年05月26日
雨と白樺のツール・ド・八ヶ岳にリベンジした
私にとって「ツール・ド・八ヶ岳」は思い出深いレースである。
4年前の同大会で初めて“ヒルクライムレース”に出場したのだ。しかも大会4日前に届いたはじめてのMy Bike(KUOTA KEBEL)に対して、はじめてインプレッション原稿なんてものも書いた(今読み返してみると、インプレッションというより、ほとんど自分のバイクが手に入った喜びが綴られていただけだが……)。とにかく、私にとっては「はじめて尽くし」のイベントだったのだ。
ちなみに本サイトで連載中の日向涼子さんも、同大会でヒルクライムデビューを果たしたが、私とはちがい、初ヒルクライムで初入賞と、現在の活躍の片鱗を当時から見せていた。
肝心のレースはというと、前日の積雪の影響でフルコースのフィニッシュである麦草峠までは走れず、ハーフコース(八千穂高原スキー場フィニッシュ)での実施となった。初ヒルクライムがコース短縮となってしまい、残念だったかというと、そのような想いは全くなく、心底コースが短縮されたことにホッとしたことを覚えている。
4年前のリベンジは4年前からの仲間と
今回4年ぶりにツール・ド・八ヶ岳に参加したのは、4年前にも誘ってくれた、自転車仲間が声をかけてくれたからだ。それにやはり、日本の国道で2番目に高い麦草峠(2127m)フィニッシュは一度は味わっておかねばならぬという心持ちにもなっていた。
前日の受付はハーフコースのゴールでもある八千穂高原スキー場。会場に足を運ぶと、4年前の記憶が蘇り、「そうそう、これこれ」とひとりごちた。いい意味で、ローカルで手作り感のある会場は4年前と変わらない。
ふと大会看板を見ると、“第30回”の文字が目に留まる。4年前は気づかなかったが、どうやらツール・ド・八ヶ岳と私は同い年だったようだ。そんなことで、また親しみが湧く。
会場となる八千穂高原スキー場内レストハウスに協賛ブースが並ぶ
レース当日は怪しい雲行き、再びコース短縮!?
レース当日は朝から空を厚い雲が覆い、何やら不穏な雰囲気。天気予報によると、なんとか天気は持ちそうだが、強風が吹くとのこと。会場に向かいながらも、再びコース短縮かと心配になってくる。
会場に着くと予報よりだいぶ早く降り出した雨。しかも土砂降り。ウォームアップもそこそこに雨宿りしながら、スタートを待つ。どうやら、今年は麦草峠まで走れることが分かり、ホッとした気持ち半分。この雨のなか走るのかとゾッとする気持ち半分……。
走り始めると、シーズン初レースということもあってか、身体が重く、キレが全くない。心拍もすぐに上がりきってしまった。序盤でタイムを狙うことは諦め、淡々とマイペースにペダルを回し続ける。コース中盤、左右に広がる白樺林が雨靄によって幻想的に映える。そんななか、降りしきる雨の音が周囲と自分とを遮断しているような、不思議な感覚のまま走り続ける。走っている間は、蒸し暑く感じるほどで、むしろ額に当たる雨粒が心地よかった。
雨で際立つ白樺林の白さ
60分ほど走り続け、ハーフコースのフィニッシュである、八千穂高原スキー場を通り過ぎる。雨にも関わらず、スキー場には大勢の応援の方々が。苦しい思いをしているときは、声援の声が何よりも力になる。引き攣っていたかもしれないが、笑顔で応援に答えて、先へ進む。ここから先は4年前は走れなかったコースだ。
後半は徐々に風が強くなり、ときおりバイクを振られるような突風が吹く。前半よりも勾配がきつい箇所もあり、歯を食いしばりながら走り続ける。もう、周囲の景色を見ている余裕もあまりない。気がつくと、視界の端で「あと500m」の旗が揺らめいている。最後は、ダンシングでもがき、麦草峠の頂へと飛び込んだ。4年前のリベンジを無事達成。
あと500mの旗。最後の力を振り絞る
標高2127m。麦草峠にフィニッシュ
レース終了後は最後まで会場に残るべし!
下山はさすがに寒く、震えながらコースを下っていると、徐々に天気が回復し、あれだけ空を覆っていた雲もどこかへ去り、日光が顔を出す。イベント終了後に天気が良くなるのは、自転車イベントではよく起こる「あるある」だ(笑)。
レース終了後は、八千穂高原スキー場で表彰式やじゃんけん大会が行わられる。このじゃんけん大会がツール・ド・八ヶ岳の裏の目玉。とくに2度目の抽選会は実施時間が遅いので、会場に残る参加者が少ない。一方で、地元の特産品やスポンサーからの提供商品はものすごく多く、大盤振る舞いなのだ。結果、抽選会に参加した人のほぼ全員が何かしらの賞品を手に入れることができる。そんな様子も4年前と変わらなかった(来年から最後まで残る人が増えたらすみません)。
30回記念大会としてスペシャルゲストの栗村 修さんがじゃんけん大会に参加。栗村さんはじゃんけんが強すぎて、仕切り直しが頻発……
これからもツール・ド・八ヶ岳は変わりなく、地元に根付いたイベントとして、開催し続けて欲しいと思う。地元の人たちがサイクリストを温かく歓迎してくれていることを肌で感じられる、おすすめのイベントだ。
次はお互い「35歳」になったときにでも、会いに行こう――。
(写真/編集部、ツール・ド・八ヶ岳大会実行委員会提供)
イベント情報
大会名:第30回 ツール・ド・八ヶ岳
開催日:2016年4月17日(日)
開催場所:長野県南佐久郡佐久穂町八千穂高原
コース:フルコース(約25km・平均勾配5.4%・獲得標高 約1300m)
ハーフコース(約15km・平均勾配5.3%・獲得標高 約800m)
定員:2200名
大会HP: http://www.rising-publish.co.jp/tdy2016/index.html
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。