2023年12月05日
ロードレースの魅力を広く発信した『THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023』
2023年12月3日、東京都で「THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023」が初めて開催された。TOKYO2020のコースを一部使用した多摩地域の8市を横断するワンウェイコースで争われ、国内のエリート男女選手が熱い戦いを繰り広げた。日本でも数少ない市街地でのラインレース開催に多くの観客が沿道に詰めかけ、自転車ロードレースの普及にも一役買ったかたちとなった。
エリート男子は兒島選手(ブリヂストン)、エリート女子は渡部選手(明治大学)が優勝
コースは、八王子市の富士の森公園をスタートし、多摩市、町田市、稲城市、府中市、武蔵野市、小金井市を通過、最後は2020東京五輪のスタート地点だった調布市の武蔵野の森公園前・スタジアム通りにフィニッシュする。東京近郊のサイクリストには馴染み深い尾根幹(南多摩尾根幹線道路)を走るほか、地域の主要道路を交通規制して開催された。
エリート男子のレースは、中盤に現全日本ロードレースチャンピオンの山本大喜選手(JCL TEAM UKYO)と兒島直樹選手(チームブリヂストンサイクリング)が集団からアタック。その後、山本選手が落車で後退すると、単独となった兒島選手は背後に迫る集団を抑えて、逃げ切り勝利を飾った。
パラサイクリング・タンデムは男女ともポーランド代表が優勝を果たした。写真:GRAND CYCLE TOKYO実行委員会提供
兒島選手「たくさんの方々に自転車を知ってもらえた」
今回のレースで画期的だったのは、日本では珍しいワンウェイコースで行われたこと。自転車ロードレースの本場ヨーロッパでは、都市と都市をつなぐラインレースが主流。世界最大のレースとされるツール・ド・フランスも、最終日のパリ・シャンゼリゼ通りの周回コースを除けば、他の20ステージはほぼラインレースで開催されている。
同様に日本で一般道を規制して行われるスポーツと言えば、箱根駅伝や東京マラソンなど陸上の大会がよく知られていて、沿道の住民の応援も風物詩となっている。フランス人がツール・ド・フランスを歓迎する気持ちに似ているのかもしれない。
しかし国内の自転車ロードレースに関しては、周回コースで行われることがほとんど。自転車に興味がない人には馴染みが少ない競技だけに、広範囲に交通規制を行ってラインレースを開催するには、周辺住民らに理解してもらい、歓迎してもらう必要がある。そういう意味で、この日、多くの観客が沿道からレースを観戦したことは、このスポーツの人気を高めるひとつのステップになったかもしれない。
優勝した兒島選手は「数少ない東京でのロードレースということで、たくさん沿道で応援していただいて、走っている僕たちもうれしかったし、応援が力になって逃げ切ることができた。たくさんの方々に自転車を知ってもらえたのはうれしかった」と振り返り、一緒に逃げた山本選手は「今日はたくさんの方が沿道から応援してくださって、選手も寒さを感じないぐらい熱い走りができた」と口をそろえた。
兒島選手と2位・岡本隼選手、3位・佐藤健選手(ともにAISAN Racing Team)の3人は、東京都世田谷区に拠点を置く日本大学自転車部出身。この日のコースは学生時代にトレーニングで使用していた道も含まれていただけに、勝手知ったるところでレースが開催されることには特別な思いがあったようだ。
岡本選手は「大学時代に毎朝通っていたところ。普段は朝でも車がすごく通っているのに、ここを封鎖して僕らのレースのために人が集まって見てくれるのが、すごく頑張りがいがあるというか、特別な思いがありましたね。片側2車線、全4車線を封鎖するのは、レースとして安全で実力が出せたと思います」と感謝を表していた。
佐藤選手も「今日通ったコースも在学中の練習で(兒島選手と)同じ班で競い合いながら走っていたこともあって、試走も含めて思い出しながら走って感慨深かった。僕たち自身も東京五輪で使われたコースをレースで走れるのは楽しいし、うれしい経験でした。たくさんの方に観戦していただいて、(ロードレースを)知っていただける機会が得られたのもすごくよかったです」と語っていた。
新城選手も観戦「走りたかった」
併催の「STADIUM FESTA」にゲストとして来場していた新城幸也選手(バーレーン・ヴィクトリアス)もこの日のレースを観戦。2020東京五輪代表として走ったコースに、再び多くの観客が集まり、選手たちが熱いレースを見せたことに気持ちを高ぶらせていた
「率直な感想で言うと、走りたかったなという思いがありますね。やはり東京オリンピックで大観衆の中、走った記憶がまだ鮮明に残っているので、今回はコースは逆走だったけど、また同じ光景を見ることができてうれしかったです」
そして、このレースがロードレースやサイクルスポーツの普及にも貢献するだろうと期待を寄せた。
「思っていた以上に観客のみなさんがすごく多くて、たぶん自分の家からマラソンや駅伝感覚で見に来たんでしょう。一般の人にロードレースを知ってもらえる機会になったと思うのでうれしかったですね」
「やはり自転車ロードレースは、多くの人が知らないスポーツ。このロードレースを見てもらって、ロードバイクに乗りたい、子どもたちがロードレーサーになりたいというきっかけになれば。e-bikeとか楽しい自転車も出ているので、サイクルライフを楽しんでほしいと思います。1回目の大会が天気もよくて大成功に終わったので、これが2年、3年と続いてほしいですね」
関連URL:THE ROADRACE TOKYO TAMA2023 HP
ロードレース・エリート(男女)、パラサイクリング・タイムトライアル(男女)レポート
https://www.the-roadrace-tokyo.jp/roadrace/849/
リザルト
https://www.the-roadrace-tokyo.jp/roadrace/870/
扉の写真:GRAND CYCLE TOKYO実行委員会提供
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。