2022年11月08日
3年ぶりの熱狂のイベントが復活 「2022ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」
「2022ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が11月6日、さいたま新都心で開催された。コロナ禍を経て3年ぶりに行われた今大会も、本場ツール・ド・フランスで活躍したプロ選手たちがさいたま新都心の高層ビル群を駆け抜け、沿道に詰めかけたファンを久しぶりの熱狂に包んだ
スター共演のクリテリウム! フィリプセンがヴィンゲゴーらを抑えて優勝!
2013年にスタートし、コロナ禍の中断を経て今年8回目の開催となったさいたまクリテリウム。天候にも恵まれ、沿道は3年ぶりの開催を待ち望んでいたファンで埋め尽くされた。
今大会も、豪華な顔ぶれが集結。今年のツールで総合優勝を挙げたヨナス・ヴィンゲゴー、ツール制覇4度のクリス・フルーム、ツール区間34勝の最多タイ記録を持つマーク・カヴェンディッシュ、現全日本チャンピオンでツール出場7回の新城幸也など、これだけの選手を日本で見られるのはまさにこのイベントの醍醐味だ。
メインレースのクリテリウムは、ツール・ド・フランスに出場した海外6チームに加え、国内6チーム、今大会のみのスペシャルチーム2チームから計52選手が出場。さいたま新都心をめぐる1周3.5kmのコースを17周する59.5kmで争われた。
スタート直後から多くの選手が逃げにチャレンジするが、終盤にマイヨジョーヌを着るヴィンゲゴー、2018年ツール王者のゲラント・トーマス、今年のツール区間2勝のヤスパー・フィリプセンの3人が飛び出す。最後はこの3人の争いとなり、フィリプセンがスプリンターの底力を見せて優勝した。
さいたまスーパーアリーナの中を走る集団。建物の中をロードレースが走るのも世界的に珍しい
今シーズン限りで引退するヴィンチェンツォ・ニバリ、アレハンドロ・バルベルデの両レジェンド。中盤には2人で逃げて、観客を沸かせた。レース後には両雄の引退セレモニーも行われた
フィリプセン、ニバリ、フルーム、ヴィンゲゴー、バルベルデ。トップ選手の走りに熱い視線が注がれる!
序盤から積極的に逃げにチャレンジしていた新城は、敢闘賞を獲得。「3年ぶりの開催だったけど、変わらずたくさんの方が沿道にいて、走っていて楽しかった。オープニングセレモニーでは(今回同じチームだった)フィリップセンやマーク(カヴェンディッシュ)も驚いていた」とファンに感謝していた
山岳賞ジャージのゲシュケ、ツイッターで「ガンズ・アンド・ローゼズ」来日公演のチケットをゲット!
さいたまクリテリウムと同じ週末の11月5、6日、さいたまスーパーアリーナのメインアリーナではアメリカの人気ロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」の来日公演が行われていた。
これに反応したのが、さいたまクリテリウムに出場するコフィディスのシモン・ゲシュケ。ツールでは過去にステージ優勝経験もあり、今年は山岳賞2位(繰り下げで、さいたまでは水玉ジャージ着用)に入った実力者で、独特の風貌から「ヒゲのゲシュケ」として自転車ファンには知られる存在だ。
さいたまクリテリウムは5回目の出場のゲシュケ。熱心にファンサービスを行っていた
そのゲシュケが実はガンズのファンで、ツイッターに「泊まっているホテルの隣で、ガンズ・アンド・ローゼズのライブがあるのを発見した。誰かチケットを売りたい人がいたら、大ファンをハッピーにしてくれ」と、自らがガンズのTシャツを着た写真とともに投稿し、アピールしていた。
幸運にも5日公演の余ったチケットを売りたいと日本語でツイートした人を見つけ、「まだ手に入りますか?」と連絡を取り合い、無事にゲットできた様子。クリテリウム前夜祭で浴衣を着て、手にチケットを持つ写真を投稿していた。
その後もライブを楽しんだ様子を投稿したゲシュケ。
ライブの興奮の余韻が残っていたのか、翌日のさいたまクリテリウムでは逃げを決めて山岳賞をゲットと沸かせる走りを見せた。
表彰式後、ゲシュケにこの件について聞くと「とても楽しかったよ! 長年待ち望んでいて、初めてガンズ・アンド・ローゼズを生で見たんだ。ツイートした後、大会運営の通訳の人が代わりにチケットを受け取ってくれたんだ。ありがたいよ。突然のことで何も特別なお返しはできなかったけど、もちろんチケット代はお支払いするよ」と笑顔で話していた。
昨年の東京五輪ではドイツ代表として来日するも、新型コロナ陽性となりレースを走れず、ホテルで隔離生活を送りながらトレーニングする様子が話題になったゲシュケ。今回の出来事で、日本での思い出がいい方向にアップデートされたことだろう。
一般体験走行のサイクリスト、沿道のファンも3年ぶり開催を満喫
さいたまクリテリウムのサブイベントとして一般体験走行が行われ、約250人が参加。子どもから大人まで様々なサイクリストが、プロと同じクリテリウムコースを走った。ここでは一般体験走行の参加者や沿道の個性的なファンの声をお届け。
さいたまクリテリウムのオープニングを飾った一般体験走行。さいたま市の清水勇人市長(中央)らが3.5kmのクリテリウムコースを走った
小学3年生のシュウヘイくんとお父さん。「幼稚園のときから自転車が得意だったし、サングラスとジャージを買ってもらって出てみようかなと思いました。これからもいろんなところに行きたい」と自慢のスタイルでポーズ。
栄北高校自転車競技部で活動する中山くんと大久保くんとそのお父さん。「プロの選手が走るコースを走ってみたいと思って参加しました。みんなから手を振られて緊張したけど、楽しかった」
内山さんご夫婦とその義理のお姉さん。お姉さん(右)は6度目の一般体験走行参加で「ほぼ毎年出てますけど、今日は天気もよくて風もなくて最高でした。選手はいつも出ている新城とフルームぐらいしかわからないけど(笑)、自転車は好きです」。旦那さん(左)は富士ヒルにも出場経験があり「最後の方でスタートしたら制限時間に間に合わなかったので、次は早めに出ます!」とリベンジを期す。
パラサイクリング4km個人パーシュート(MC5)の全日本チャンピオン福富伸彦選手と息子さんたち。「今回、新城さんが全日本ジャージで参加されるし、ツール・ド・フランスの選手たちの走りも見たい。パラ選手の走りも応援しています」と福富選手。子どもたちは「真っすぐと下り坂は楽しかったけど、上りがチョーきつかった!」と言いながらも、元気な笑顔。
東浦和から参加の土浦さん親子(右2人)。「もともと子どもと一緒に自転車で走っていて、貴重な機会なので応募してみました。こちらが手を振ると沿道のみなさんが笑顔で振り返して応援してくれて、少しだけ選手の気持ちを感じながら走ることができました」とお父さん。所属クラブのAMBCOは東浦和で30年以上続く埼玉県内でも随一の歴史を持ち、今回はサポートライダーとしてもクラブ員が参加。
お手製の応援グッズで選手たちにパワーを送る武樋さん(右)と仲間のみなさん。「みんなでフランスで現地に応援しに行ったのがご縁で仲よくしています。2014年に一緒に行ったときは序盤でリタイアしたカヴェンディッシュ、フルーム、コンタドールに会えなかったから、今日はカヴとフルームに会いたい。今年3年ぶりに開催されてうれしいし、盛り上がってますね」、
アニメ「バンドリ」の氷川紗夜の痛チャリで観戦していたのは台湾のサイクリスト黄さん。「2週間、日本をサイクリングで旅していて、アニメの聖地巡礼をしています。ニバリが台湾に招待されたときに見に行ったけど、こんなに多くのプロ選手が見られるレースは台湾にないので、楽しみに見に来ました」。
関連URL:ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム https://saitama-criterium.jp/
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。