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2023年06月09日

【第19回Mt.富士ヒルクライム 詳報#1】青空の下での高速ヒルクライムバトル。 22年全日本TT王者・金子宗平さんがシン・富士ヒル王者に!

今年も様々なドラマが生まれた「富士の国やまなし」 第19回Mt.富士ヒルクライム(6月4日、富士スバルライン)。ここでは主催者選抜クラス男女、ビオレーサードリームチーム、現役ロード選手らが務めた90分完走ペースメーカーの表情や奮闘ぶりを紹介しよう。

主催者選抜クラス男子、社会人レーサー金子宗平さんが初優勝!

今年の富士ヒルは前日3日の朝まで台風2号の影響による悪天候が続き、開催が危ぶまれたが、地元関係者らの協力のもと無事開催。当日は朝から青空が広がり、富士山が悠然と見下ろす中、約8,000人のサイクリストがスタート地点の富士北麓公園に集まった。

最強ヒルクライマー決戦のひとつである主催者選抜クラス男子は、106人が出走。ディフェンディング王者の真鍋晃さん(EMU SPEED CLUB)を始め、森本誠さん(GOKISO)、兼松大和さん(Infinity Style)、田中裕士さんら歴代富士ヒル王者が名を連ね、さらに全国各地のヒルクライムで好成績を残してきた健脚たちがスタートラインに並んだ。

中でもライバルたちから注目を浴びていたのは、昨年の全日本選手権タイムトライアルを制した金子宗平さん(群馬グリフィン)。昨年の乗鞍も制するなどヒルクライムでも実力を証明済みで、今春に大学院を卒業して就職した社会人レーサーでもある。

レースは、序盤から金子さんが積極的に仕掛ける展開。2018年王者の田中さんが振り返る。

「金子君が最初、逃げていました。僕はしんがりから出たので、逃げているのを知らなくて、先頭に追いついて逃げているのが金子君と聞いて、そこからヤバいと思って追いかけました」

レース中盤は金子さん、田中さんが中心になってペースを作り、先頭集団は人数を増やしたり減らしたりと激しい攻防が続く。

田中裕士さん(左)、金子宗平さん(右)が積極的にレースを動かす

「3合目ぐらいでもう1回アタックして4人になって、また吸収されたりと、出入りが激しいレースでした」(田中さん)

4合目からは金子さん、田中さんを含む3人の争いに絞られる。再び田中さんが振り返る。

「そこからは金子君と自分が中心でした、奥庭(残り約2.5km)で2人になって、最後はいつもどおりスプリントになって、見送るしかなかった。いつもどおりの2位ですね(苦笑)。まあ、楽しいレースでした」

そのまま金子さんが10秒以上の差をつけて、優勝。タイムは57分26秒。コースレコード(56分21秒、2021年、池田隆人さん)には1分ほど及ばなかったが、堂々たる勝利だった。

ゴール前の争いを制し、トップでフィニッシュに飛び込んだ金子さん

金子さんは「最後5kmぐらいで3人ぐらいで抜け出して、2㎞ぐらいで2人になって、500mぐらいから(スプリントを)かけた感じです。最後のスプリント勝負になれば行けると思ったので、自分の展開に持ち込めたのかなと思います」と勝利を振り返り、「富士ヒル出場は4回目ぐらいで、2015年ぐらいからたまに出ていますが、優勝は初めて。一番目標にしているレースのひとつなので、勝ててうれしいです」と喜びを表した。

なんと、金子さんは富士ヒルの後にも別のレースに出場するという。「この後、午後1時45分から修善寺で実業団のレース(日本CSCロードDAY2)があるので、これから移動します。110kmで3000mぐらい上るので、あと富士山3本分ぐらい上りますね(笑)」と語っていたが、そのレースでも7位に入るなど1日を通して大活躍だった。

主催者選抜クラス男子表彰台、左から2位・田中裕士さん、優勝・金子宗平さん(群馬グリフィン)、3位・板子佑士さん(ソレイユ/JETT)

混戦の主催者選抜クラス女子、佐野歩さんが2連覇!

前半は集団での駆け引きが続いた主催者選抜クラス女子のレース

10人が出場した主催者選抜クラス女子は、混戦模様。メンバーこそ違うものの、昨年同様、佐野歩さん(Infinity Style)、手塚悦子さん(IMEレーシング)、三島雅世(Cycling-gym)、宮下朋子さん(TWOCYCLE)からなる4人の先頭集団がレース大半をリードする。

「4合目までは4人で回してたんですけど、そこから三島さんがペースを上げてグイグイと来られた。ついていくのでギリギリだったけど、なんとかついていきました。その後、手塚さんが前に出てくださって、私は後ろにつかせてもらった。残り3つ目のトンネルを出たところで仕掛ける予定にしていたので、様子を見つつ最後の力を出し切りました」

そう語る佐野さんがライバルを振り切り、1時間13分20秒で同クラス2連覇を達成した。

2位に11秒差をつけて2連覇を達成した佐野さん

去年、優勝させてもらって連覇を目指してやっていたので、練習も早い時期から始めて、今日は勝てると自分に言い聞かせて走りました」(佐野さん)

主催者選抜クラス女子表彰式、左から2位・手塚悦子さん(IMEレーシング)、優勝・佐野 歩さん(Infinity Style)、3位・三島雅世さん(Cycling-gym)

女子19~34歳クラスでは、木下友梨菜さん(あたおかロングライダーズ)が1時間06分44秒、石井嘉子さん(アーティファクトレーシング)が1時間06分45秒でフィニッシュ。(当時は女子クラスでの出走だった)東京五輪代表の金子広美選手が持つ1時間7分45秒の富士ヒル女子コースレコードを、ついに更新した。

ビオレーサードリームチーム、夢に向かってスバルラインを力走!

夢に向かって頑張るサイクリストを応援する『Mt.富士ヒルクライム・BIORACER選抜“DREAMTEAM”』。3期目を迎えた今年は総勢18人のメンバーがオリジナルワンピースに身を包み、スバルラインを駆け上った。自らの目標を達成できたメンバーも、そうでなかったメンバーもいたが、ゴール後の声をいくつかお届け。

オリジナルデザインのワンピースを身にまとい、スバルラインを上るドリームチームのメンバーたち

昨年の富士ヒルは1時間15分ジャストでゴールし、ほんのわずかにシルバーに届かず涙を飲んだあっきーさん。今年は1時間09分43秒と大幅にタイムを短縮し、文句なしのシルバー獲得!

「ドリームチームのえーぞうさん、みつぱわーさんと走って、みんなで最後まで走り切れたのがよかったです。絶対コンマ何秒縮めると練習もみんなと一緒に頑張ってきて、その上で目標も達成できたので言うことは何もない、やりきったという感じです。頑張ろうと声をかけあいながら、一番上まで行けたので力になりました」

フルマラソン2時間38分の実力を持つ市民ランナー、安達律郎さん。自転車での初イベントとして富士ヒルに挑戦し、1時間24分01秒でブロンズ獲得とポテンシャルの高さを見せてくれた。

「完全未経験だったのでペーサーに食らいついて行こうと、最初10kmぐらいはペーサーの集団と一緒に上ったんですけど、途中できつくなって千切られてしまいました。でも、15km手前からいい感じになって、千切られたペーサーも追い越しました。初レースで自分でもわからなかったので、ブロンズという結果でよかったです。次帰ってくるときはシルバーを狙いたいけど、ワンランク、ツーランク上の練習が必要ですね」

5年ぶりに富士ヒルにエントリーした横山貴範さん。自己ベスト更新を目指したものの、トラブルに見舞われ1時間04分13秒と惜しくも達成ならず、悔しそうな表情。

「ダメでした。途中で脚がつってしまいまして、機材トラブルもありまして、ゴールドは取ったと思いますけど自分の目標とするところには全然行かなかった。カミさんにいい報告ができなかったので、頑張ったとだけ言っておきます」

全力でチャレンジする姿を見せてくれたドリームチームのメンバーたち

【SUB90】増田選手らがブロンズ獲得を目指すサイクリストをサポート!

今年の富士ヒルでは、現役ロード選手をはじめとする8人のアスリートがブロンズ獲得(完走タイム:90分切り)を目指すサイクリストたちのペースメーカーを務めた。

その顔触れは、中村魁斗選手(宇都宮ブリッツェン)、増田成幸選手(JCL TEAM UKYO)、才田直人選手(ベルマーレレーシングチーム)、花田聖誠選手(キナンレーシング)、桂慶浩選手(埼玉那須サンブレイブ)、杉本浩選手(フォルジーク山梨)、夏目天斗選手(レバンテフジ静岡)、エース栗原さん(プロアスリート)ら豪華なメンバーで、各スタートごとに分かれて参加者を先導。ペースメーカーの集団には参加者であれば誰でも入ることができ、各スタートには100人前後が集まっていた。

第4スタートのペースメーカーは、才田直人選手(左)と増田成幸選手(右)。目印として数字入りの風船を着けて走った

東京五輪代表の増田成幸選手は、グローブの下の手の甲に90分ペースをメモし、準備万端。

「メモも作ってあるし、平均ワットとかも頭に入っているんで、それで行きたいと思います」

昨年10月のレースで大ケガをした増田選手は、現在は復帰に向けてトレーニング中。今回が久しぶりに大きなイベントの参加となったが、元気な表情を見せていた。

「4月に骨盤を固定している金属を抜いてから、今までの痛みがウソだったように消え去りました。今は一生懸命練習してるんですけど、いかんせんブランクが長かったので、体力戻すのに苦労してます。後は上げていくだけだと思ってしっかりやっていきたい。今日は約8000人参加とこんな大規模なイベントは僕も久しぶりなので、僕自身も楽しみながらみなさんをエスコートしたいと思います」

増田選手のペースに合わせて走る集団。多くのサイクリストからブロンズ獲得できたとの声が聞かれた

第19回Mt.富士ヒルクライムレースレポートはこの後も随時アップデートいたします!

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