2022年11月21日
【JCMC 2022-23YOKOHAMA】メッセンジャーによるメッセンジャーのためのフェスとピストクリテが横浜で開催
初となるメッセンジャーの日本選手権が11/19、横浜・赤レンガ倉庫イベント広場にて行われました。その名も都市型バイシクルフェスJCMC=Japan Cycle Messenger Championship。翌年にはこの横浜で世界大会であるCMWC=Cycle Messenger World Championshipの開催を控えており、そのプレ大会とも位置付けています。ストリートカルチャーとアート、そして自転車が融合した少しポップなイベントで、赤レンガ倉庫というカジュアルな場所ということもあり大盛況となりました。
2023年には横浜で世界大会を開催
前回大会の 2022 NYC(世界選手権)のデリバリーレースでは日本人選手のちかっぱさんこと宮本 康平さんが世界チャンピオンに輝いており、この来年に日本・横浜で開催されるメッセンジャー世界選手権に向けて大きな弾みとなっています。
このメッセンジャー大会にはトラックバイク(固定ギア)の自転車が用いられています。そもそもはトラック競技場で使われるブレーキのないスピード競技用の自転車ですがメッセンジャーやストリートのカルチャーとの親和性も高く、好んで使われています。
トラックバイクは本来のストイックなレースからこうしたカルチャー系まで幅広く愛さる魅力があるようです。その理由はシンプルであるがゆえなのでしょう。
かつて道路交通法に抵触するようないわゆるノーブレーキでの走行がクールとされており社会問題ともなりましたが、現在においてはそのような無法者はほとんど見られません。メッセンジャー界隈の関係者は「ああいった過去があったことは事実でそれは否定はできませんが、だからこそ正しい自転車の乗り方や楽しみ方を啓蒙したい」と話します。ネガティブな過去を受け入れて、新しい文化を創生したいものです。
こうした大規模な大会が開かれたのは初めてということで「メッセンジャーの同窓会」と関係者の方は話します。「黎明期からのメッセンジャーが一堂に介していて、すごく濃いコミュニテイでした」。そう話すように何年も前から存在しているような非常に熱い盛り上がりと、熱烈な応援が印象的でした。
イベント最後のYOKOHAMA CRITはあの選手がゲスト参戦
日本最速のメッセンジャーを決定するデリバリーレースや、カーゴバイクレース、さらにトリック系という複数のイベントが行われ、トリとしてトラックバイクを用いたクリテリウムレースが行われ、およそ60名の選手が500mのトリッキーなコースで順位を競いました。
接触や転倒というエキサイティングなシーンも。それすら受け入れ、走り出すライダーに賛美を送っているシーンが度々見られます。スポーツマンシップと同類の清々しさがありますが、「落車を楽しむ」というカルチャーにはしたくないものです。
そしてスペシャルゲストに、アジアチャンピオン・オリンピアンでプロサイクリストの橋本英也選手が参戦。見事なコーナリングと、スピードを披露して優勝を遂げました。
主催をしていたのは104サイクリングの児玉利文さん。現役のプロ競輪選手ながらショップを経営し、さらにこうしたピストクリテ『sfiDARE CRIT』を開催。主に岐阜を中心とした関西圏で行われています。児玉さんは過去にニューヨーク・ブルックリンで開催されたレッドフック(ピストクリテリウム)を見て、衝撃を受けたといいます。そして現在ではご自身が発起人となってクリテリウムレースを運営しています。
「普段のイベント開催ではすべてsfiDARE CRITスタッフのみでやっているので大変な苦労がありますが、今回のJCMCの中のイベントとして行いました。
JCMCからも歓迎をしていただいて非常にありがたいです。
やっぱり岐阜でやっていたとしても知名度や広がりは少ないです。以前、大阪の梅田で開催しましたが、反響がありやっぱりアーバンでやらないとダメだと実感しました。その上ガチでやらないと人は来ないし、自転車に触れていない人たちに見せようとしたらこういうスタイルになります。
そういった意味でも横浜は関東を代表する観光地ですから最高のシチュエーション。
来年は世界大会CMWCが横浜で開催されますが、そこではエントリーの枠も増やせると思いますので、また参加する機会を設けることができると思います!
これをきっかけに増えると思います(参加者も)。でも『ノーブレーキ問題』というのもつきまとっています。このテーマはメッセンジャーの間からも出ていますが、『好き勝手やってしまった』当事者意識という負い目があると感じています。しかし啓蒙するという立場的にもちょうど良いと思っています。デリケートな問題ですので、慎重に対応していきたいと思っています。
ともあれ、競技として熟成していきたい。エキサイティングな上におしゃれですよね」
児玉さんは“地方でやっても効果が少ない”と忌憚ない意見を述べています。こうしたイベントは、エキサイティングな内容から時には落車などの場面もあり、地域や自治体の理解を深めるには時間がかかるかもしれませんが、こうした都市部で行うからこそ完成形であるということが今回のイベント開催で証明されました。「カルチャー」として受け入れられるのは時間がかかりますが、熱意溢れる地道な活動はいずれ実を結ぶのではないでしょうか。
関連URL:sfiDARE CRIT(スフィーダレクリット)/ 104サイクル https://www.104cycle.com/
JCMC https://jcmc2022.jpbma.org/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得