2016年01月14日
「ヘル オブ マリアナ」レースリポートby中村龍太郎 【後編】
のこり50kmを残して(とはいえまだ半分)、単独抜け出した中村龍太郎さん、ヘルオブマリアナ2015で昨年の惜敗したリベンジを果たせるのか!? レースはいよいよ終盤です。
39-28Tを使っても80回転以上いかない……。ダンシングもスッカスカ。未舗装路が見えた時の嬉しさといったらなかった。しかし未舗装路を走っているときは「直せよ!ちくしょう!」と思う。
そして再び西側の海岸線へと下る。残りはレーダードームへ向かう道。通称「野犬坂」。飢えた野犬が疲れた参加者を追ってくるという恐怖の道(実際には今年は檻に入れられてました)。90km地点からはじまる3.5kmの上りは、おおよそ平均勾配10%、時間にして15分。長い直線から森に入る。直線で振り返ると台湾の黒いジャージはない。レーダードームが見えていたらモチベーションが上がるのに、最後300mぐらいでやっと見えるというHellさ。折り返してすぐにトヨカツが上がってきた。やはり彼が一番強いか。ちょっと焦るけど、転ばないように慎重に。下ったらあとは平坦でゴールだから大丈夫と自分に言い聞かす……。
ついにゴールのとき
ゴールが見えて後ろを振り返る。白バイがブラインドになっていたので右に左に、いないことを確認しガッツポーズ。ギリギリの逃げ切り勝利なんて人生初。最終的な後ろとのタイム差は18秒。後ろからのプレッシャー、コースの攻略、自分との闘い、そのすべての要素が勝利という形になる。スプリントで何度か勝ったことはあるけどそれとは達成感が全然違う。自分の中でベストレースになると思う。なんにせよキツかった。心が折れていただけに疲労もひとしお。中村さんと勝利を喜びあい、二位のトヨカツと三位のトガワと健闘を称えあう。彼らはどんなことを思って走っていたのか気になるところだ。だが残念ながらお互いに英語ができない……。
レースが終わると自分の部屋に戻り、シャワーを浴びる。マッサージがついているが、汗をかいて、砂を拾ってドロドロのまま行くと、おねぇさんに怒られるのだ。昨年はスタート地点から離れたところにホテルをとっていたのでフラフラになりながらホースでバシャバシャ洗い流した。今年はスタートゴールがホテルの目の前のためすこぶる楽。シャワーから上がってまだ10時だということに驚愕する。スタートが早いので得した気分。早起きは何とやら。マッサージでは昨年と同じ人に揉んでもらう。上半身と下半身を選べるがもちろん下半身。わりと指圧でグリグリやってくるので痛気持ちいい。オレンジとバナナの提供もあり、勧められたのでいただくと「ワンダラー!」と笑いながら言われる。受け取ってからお金をとるフリするギャグは万国共通か。スタート地点に戻るとイシムさんがゴールしていた。続々と選手たちが帰ってくる。足きりタイムがアフターパーティの始まる時間なのでおおよそ7時間が足切。残念ながら昨年途中棄権だった日本人のお二方がギリギリ完走ならず。来年はきっと完走できますね!(プレッシャー)
昨年は芝の上でだったが今年はプールの前でアフターパーティが始まる。表彰者は飛び込むんですよね? と中村さんに言われて、迷う…..。バイキング形式のパーティ。昨年はビール飲み放題だったけど今年はドリンクチケットと引き換えで3本しか飲めないと言われ、イシムさんとブーブー言う。が、結局その方式は崩壊したようで、どんどん自分たちの前にビールが並んでいく。疲れた身体に沁みるビールはうまい。沁みすぎるので注意。
MTBの部から表彰式が始まり、カテゴリーが多いので表彰対象者も多い。とくに地元の人が呼ばれると会場は異常に盛り上がる。イシムさんは年代別で二位! 昨年同様、加工の適当な栓抜きのメダル。この適当さがいいところ。女子のロードも昨年に引き続きグアム在住のミエコさんが優勝。というわけで男女ともに日本人の勝利! 昨年はステージの前で撮った集合写真。今年のステージの前はプール。となるとやることはひとつ。
続々と飛び込む人たち。ジャージを着たままの人もいるし、服を着たままの人も。自分はというとちゃっかり下は海水パンツなのでTシャツを脱いで飛び込む。国も人種も関係ない。同じコースを走った仲間。コースが地獄なので完走するだけで共感できてしまう。DJに合わせてみんなで「Yeah!!」と叫ぶとこれまた気持ちがいい。
写真を撮り終わると、抽選会のスタート。ただの番号を読み上げるだけじゃなくて、レースみたいなこともして、アメリカンとロシアンのペアで、ロシアンが泳ぎ、バトンタッチ、アメリカンはビール早飲み。ビール早飲みもドボドボこぼれていたし、適当な勝負。勝者を決めたのに賞品を譲り合う。そりゃビール一ケースは持って帰れねぇ。
パーティーも終わり、部屋に戻る。帰る準備をしなければならない。輪行袋に包まなきゃ……と思っていたらふつふつとこみ上げる眠気……。それに委ねてお昼寝……。起きたのは夕飯出発30分前。急いで包む。SCICONに包むのもだいぶ早くなった。夜は昨年と同じ焼肉店「将軍」。店員さんが焼いてくれる肉をサンチュに包んで齧る。中村さんとイシムさんと勝利の美酒を味わう。あまりビールが好きではない僕だけど、ASAHIが一番うまいと感じた(勝者補正有)。
二軒目は男子リレー優勝のロミオに誘われていたバーに。彼のいるバンドが演奏するとのこと。日本の曲もやるとのことで行かない手はない。ちょっと大人びてウィスキーのロックを頼んだけどまだまだ早すぎた。HELL OF THE MARIANAS Tシャツを着ていると現地の人にとても良くしてもらえる。バーではオーナーの方に一杯奢ってもらい、ピザもいただいた。このピザが殺人的にでかく、そしてうまい。何も食べていなければ喜んで食べていただろうが、焼き肉を食ったもんだから二枚が限界。残すのも申し訳ないのでお持ち帰りにしてもらった。次の日の朝に食べたけど、胃がもたれた。ロミオとの約束の日本の曲はサザンの「波乗りジョニー」。自分もうろ覚えだったけど歌えたのでマイクの前で歌わせてもらった。韓国人も日本人もアメリカ人もみんな入り乱れて踊る。こういうお酒の席は本当に楽しい。タクシーに乗ってホテルに戻って速攻で就寝。
レース翌日はサイパンを満喫
日曜日は朝一でマニャガハ島へ。朝食べたピザが身体を重くしているが、船を見て心は軽くなる。頑張れば泳いでいけそうな距離(言ってみただけ)を船で向かう。自分の前に座っていたお客さんが自撮棒で写真を撮ってたのでついポーズとって入ってしまった。後からわかったことだけど、棒を持っていた女性はロミオの奥さんだそう。何も知らずに偶然写真を撮っていたのだとか。島狭い。マニャガハ島につくと、「THE 南国」な世界。
いくつかのアクティビティコースがあると日本語で説明があった。我々はボートシュノーケルをチョイス。昨年はグロットにて真っ青な世界を見たが、今回は大海原に出て魚を見る。ポイントにたどり着くと「ウミガメがいるよ!」と教えてくれる。自分たちが入った時には背中を向けて遠くに泳いで行った……残念。波がそこそこあるため海水が割と口の中に入ってくる。ガイドが披露してくれた口で輪っかを作るやつ。いつかはやってみたい。船に上がると、少ししかいなかったのにどっと疲れが。昨日のレースもあるが、やはり普段感じない水の抵抗は大きいようだ。
島に戻り、腹が減ったのでハンバーガーを食べる。ピザの胃もたれはどこへやら。12時に出発する便で本島へ。次回は一日いたいところだ。バナナボートとかも乗ってみたい。飛行機の便が16時なので昼ごはん(ハンバーガーもどこへやら)。先日東京に進出した「タコベル」へ。KFCと同じ店内にあり、セットのドリンクを頼むとコップだけくれる。つまり飲み放題。右から甘い、甘い、甘い、甘い……全部甘い系。さすがです。昼食後は空港に向かい成田行きにチェックイン。
昨年3位に甘んじてからリベンジを誓って一年、新たに送られた台湾からの刺客3選手を抑えての勝利に浸りながら2泊3日の弾丸海外遠征は帰国の途についた。
中村龍太郎
イナーメ信濃山形所属。フルタイムワーカーながら2015年度全日本タイムトライアルを制した、強豪レーサー。ロードレースのオフシーズンもシクロクロスレースに積極的に参戦し、年間出場レースは50を越える。Mt.富士ヒルクライム2015でも優勝を果たしている。
ヘルオブマリアナが行われたサイパンは2015年8月2日に大型台風の直撃を受け、大会自体の開催も危ぶまれましたが、地元島民の努力と日本を含めた海外からの支援によって早期回復を遂げました。2016年も12月3日(土)の開催を予定しています。中村龍太郎選手と同様にカレンダーの12月2日(金)に青丸、3日にHOMと記入しましょう。マリアナの地獄が待っている!
ヘルオブマリアナ http://www.hellofthemarianas.com/ (大会ホームページ)、https://www.facebook.com/HOMRace/ (大会フェイスブックページ)
写真提供:中村滋(マリアナ政府観光局)
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。