2019年04月17日
イベントヒストリーVol.2 グランフォンド ピナレロ 八ヶ岳
ファンライドイベントの歴史を振り返る本企画。前回の富士チャレンジ200に続き今回は、「グランフォンド八ヶ岳」が誕生に至った背景をレポートいたします。
国内メディアとしては初めての取材となった「カンパニョロ グランフォンド」の記事
「大きく移動する」醍醐味
2004年6月。月刊ファンライド編集部はイタリア北部で開催された「カンパニョロ グランフォンド」に参加した。富士チャレンジ200の開催から2年、「公道の長距離レース」を模索していたところに「イタリアには市民マラソンのような自転車イベントがある」との情報が入り、早速、体験取材を敢行したのだ。
メイン種目の「グランフォンド」は208km、もっとも短い「コルト(ショートコース)」で92km。4つの峠を越える山岳コースに、ヨーロッパや北米、中東など20カ国から老若男女3,600人のサイクリストが挑んだ。主催者によれば「グランフォンドは90年代に生まれた比較的新しいイベント」とのこと。数千人規模の大会も珍しくないという。ちなみに「グランフォンド」とは「大きく移動する」という意味。参加者同志が励ましあいながら峠を越え、補給所でパンをかじり、ゴールをめざす。実際に参加して、「自転車だからこそできるダイナミックな移動」がこのイベントの醍醐味だということがよくわかった。
第1回大会のコースマップ。平坦のまったくないタフなコース設定だった
「交通ルールを守る」イベントとして開催
帰国後すぐ編集部は会場探しに奔走したが、公道を利用するだけに難航を極めた。当時(2005年ごろ)はレースを除けば「ロングライドイベント」と呼べるものはまだ数少なかった。そんな時代に、ショップ単位での長距離イベントが増加し、草の根的にロングライドイベントが広がりを見せていく。ショップイベントは交通ルールを守って実施している。編集部はグランフォンドの開催を「交通規制」を前提に考えていたが、ショップイベントにヒントを得て、比較的交通量が少なく、ロケーションにすぐれた八ヶ岳山麓(山梨県北杜市)での第1回開催にこぎつけた。2009年10月4日のこと。イタリア取材から5年の月日が流れていた。
手探り運営の初回大会。サイクリストの自主給水などコース上では応援の輪が広がった
励ましあってゴールをめざそう
富士スピードウェイなどのサーキットと違ってコースは公道。警備配置などの安全対策のほか、八ヶ岳山麓の「味」を楽しむ補給所も用意した。距離は110kmのグランフォンドと、44kmのグルメフォンドの2種目。初回は1381名でスタートしたが、コースがあまりにもきつすぎた。健脚な人でも厳しいアップダウンにビギナー層は疲労困憊。その後コースは何度も見直しを加えたが、第1回大会最大の「発見」は、選手同志が励ましあって坂道を上り、給水所スタッフが声援を送るといった「コミュニケーション」が繰り広げられたこと。2004年にイタリアでみたグランフォンドの原風景と重なる光景に、「自転車で大きく移動する醍醐味」こそがこのイベントのコンセプトであり、自転車そのものの魅力だと再認識した。コースは変わったが、このコンセプトは第1回大会から変わっていない。
名物「海岸寺の上り」。今年からはe-bike(電動アシスト)の参加もOKだ
八ヶ岳に広がる共感の輪へ
昨年は台風の接近で中止になってしまったが、今年は本国イタリアで開催される「グランフォンド ピナレロ」との連携を進め、共通デザインによるオフィシャルジャージを企画するなど、新基軸を打ち出したこのイベント。天気がよければ360度の大パノラマを体感できる景観が最大の魅力だが、そこはやはり「グランフォンド」。達成感には必須の「峠越え」もきっちり用意。最長113kmの道のりは決してやさしくはない。
一方今年は土曜日にガイド付きのグルメフォンドを開催し、ご家族での泊りがけ参加が楽しめる設計とするなど、より多くのサイクリストが参加しやすい種目設定に変更している。
2004年にイタリアで見たこのイベントの「価値」は、タイムでも順位でもなかった。「走りきること」こそがグランフォンドの価値であり、そのために参加者はトレーニングに励み、仲間とともにゴールを目指していた。日本にグランフォンドがやってきて10年、毎年秋に八ヶ岳山麓で繰り広げられる「サイクリストの共感の輪」に、ぜひとも加わってほしい。
◆グランフォンド ピナレロ 八ヶ岳ホームページ
http://gf-yatsugatake.jp/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。