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2022年10月19日

自転車とアウトドアの新たなハイブリッド! 南アルプスでサウナやヨガも体験! 「CYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alps」

10月16日、初秋の南アルプスで「CYCLE ADVENTURE Fest. in Minami-Alps (サイクルアドベンチャー・フェスin 南アルプス)」が開催された。本格的なヒルクライムを走る区間もありながら、大自然の中でテントサウナやヨガなどのアクティビティも体験。e-Bikeに乗れば、どんな人でも楽しめる新たな魅力満載のサイクリングイベントとなった。

スポーツを通じて地域活性化「やまなしスポーツエンジン」第1弾イベント

コースは、普段はマイカー規制される南アルプススーパー林道(林道南アルプス線)を走る片道20km(往復40km)。折り返し地点の広河原では、食事のほかサウナ、ヨガ、トレッキングなどのアクティビティも体験できるという。

山梨県 長崎幸太郎知事

イベントを主催する山梨県の長崎幸太郎知事は「山梨県はスポーツとこの南アルプスのようなすばらしい地域資源を戦略的に活用して、地域活性化につなげようという目的のもと、『やまなしスポーツエンジン』という組織を立ち上げました。このイベントはその第一弾で、日本を代表する南アスプスを舞台に行う実証事業です。今後もこうしたイベントや自然を活用したアウトドアアクティビティを作り上げていって、スポーツを楽しむなら山梨に行こうと思っていただける地域を目指して頑張っていきたいと思います」と挨拶。今後のスポーツイベントづくりへの強い意気込みを表された。

やまなしサイクルツアーガイドのみなさん

開会式では、「やまなしサイクルツアーガイド」の任命式も行われた。今イベントでもサポートライダーとして参加者の先導などを務めてくれた。

今回は、来年以降の本格開催を目指したプレイベントとして開催され、関係者やインフルエンサー、サポートライダーをふくめ約100人が参加。自転車You Tuberけんたさんらの姿も見られた。

レンタルのe-Bikeも多数用意され、ざっと半数ぐらいはe-MTBタイプでライド。一方のアシストなし勢は、マウンテンバイクやグラベルバイクが多く、ロードバイクも少数派ながらいる。僕は、一緒に走った編集部ヤマケンが「ロードでも大丈夫っすよ」というので、自前のロードバイクで参加した。

心配された天気も、山の稜線から日差しや青空が見える好天に恵まれた。スタート地点の芦安第2駐車場は標高870mぐらいあり、早くも木々の葉が少し黄色く色づいている。とはいえ、思ったよりも気温も低くないので、アームウォーマーや薄手の長袖ジャージでスタートできそうだ。

最初にして最大の難関… 夜叉神峠までヒルクライム!

コース前半3分の1は夜叉神峠(実際の夜叉神峠は登山道の途中にあるので、正確には夜叉神峠登山口)まで、上りっぱなしのヒルクライム。スタートしていきなり勾配15%前後の激坂が立ちはだかり、ろくにウォームアップをしていない心臓が口から飛び出しかける。しかし、300mほどで右折して南アルプススーパー林道に合流すると、5%前後の勾配に落ち着き、ほっと一息。

それでも、またさっきのような激坂が現れるかもしれないとビクビクしていたが、その後は5~10%程度の坂が続き、心拍を上げすぎないようにマイペースでゆっくり上っていく。Mt.富士ヒルクライムやグランフォンドピナレロ八ヶ岳を走っているようなサイクリストなら、さほど無理せずとも上れるだろう。舗装も比較的きれいなので、この区間は軽いロードバイクの方が楽かもしれない。

もちろんe-Bikeに乗っているみなさんはもっと軽々とした走りで、何十台も抜かれていった。一般の自動車は入ってこないので、仲間同士で並走しておしゃべりしながら走ったり、景色のいいところで止まって写真を撮ったりと思い思いに楽しむことができる。

ようやく標高約1400mの夜叉神峠に到着。スタートから6km強で500mちょい上ったので、平均勾配は8%ぐらいか。そう考えると、まあまあきつい上りだったかな。ここにエイドステーションが設けられ、水やスポーツドリンクを補給できる。

「南アルプススーパー林道」を自転車で走れるのはこの日だけ!

普段、この夜叉神峠までは自転車やオートバイなどの二輪車は上れるが、ここのゲートで二輪車も交通規制されている(通行できるのは、バス、タクシーのみ)。つまりこの先の南アルプススーパー林道を自転車で走れるのは、このイベントのときのみということだ。

ここからの道は緩やかな(たまにちょっときつい)アップダウンをこなしながら、標高1600m前後まで上っていく。ヒルクライムでかいた汗で体が冷えないようにウインドブレーカーなどの防寒着があると助かる。

冬は雪や凍結も多い道なので、舗装がひび割れたり、段差があるところも少なくない。コース全体を通してオフロード区間は1カ所、数10m程度だが、路面の荒れ具合を考えるとマウンテンバイクやグラベルバイクの方が機動力がありそうだ。

また夜叉神峠を出てすぐ長いトンネルが2本あるので、前後ライトは必須。トンネル内に水たまりもあるので、滑らないように気をつけて走っていく。その後も、大小のトンネルがいくつも続く。

スタートから約9km地点、2つ目の長いトンネルを抜けたところに御野立所(おのだちしょ)という絶景ポイントがある。天気もよかったので日本で2番目に高い山・北岳をはじめ南アルプスの山々が間近に見え、多くの参加者が写真を撮っている。この先も山々や滝、川などを眺めながら気持ちよく自転車を走らせ、折り返し地点の広河原山荘に到着した。

サイクリストだって「チルアウト」してもいいのだ!

広河原付近は標高1500mちょっとあり、より木々の葉も色づいている。とはいえ、空も晴れ渡り風もないので、暖かい秋の日差しが感じられる。

野呂川にかかる吊橋を渡った先が、このイベントの目玉であるアクティビティ会場だ。入るとすぐ飲食ブースのテントが並んでいて、地元・南アスプス市の飲食店やお菓子屋などがアウトドアフードやスイーツを振る舞っている。

一番人気だった甲州ワインビーフと桃源ポークの串焼きをはじめ、甲州手打ちそばと鳥もつ煮、ルンダン風カレー、すももフルーツロール、シャインマスカット大福、甲州レーズンなど挙げればキリがないほどのグルメが盛りだくさん。いわゆる自転車イベントのエイドステーションとは一味違う本格的な料理が楽しめた。

会場ではDJが音楽を流し、テーブルを囲んで料理や会話を楽しんだりと最近の言葉でいう「チルアウト(chill out=のんびりする)」な、ちょっとおしゃれでリラックスした時間を過ごすことができる。まるで音楽フェスやグランピングのような空間だ。

一息ついたら、アウトドアアクティビティへと向かう。今回はテントサウナ、ヒーリングヨガ、ヒーリングトレッキングの3種類から事前に申し込んだひとつに参加。編集部ヤマケンはテントサウナ、僕はヒーリングヨガを体験した。ちなみにアクティビティに使う替えのシューズ、着替えなどは運営スタッフが預かって運んでくれるので、ライド中は身軽に走れる。

ヒーリングヨガは、トレッキングコースの途中の森の中にヨガマットが敷かれていて、インストラクターの女性が指導してくれる。普段はライド後のストレッチもさぼりがちなので、木漏れ日の中で呼吸を整えながら体のあちこちを伸ばすのは気持ちよかった。ヨガマットの上に、ハラリハラリと落ち葉が舞い落ちるのも季節を感じられた。

唯一の静的アクティビティのテントサウナ。開放的な渓谷の空間に数張り設けられたサウナという構図はシュール。テント内には大人でも4人ほど入れそうだ。地元で栽培されたハーブを浸した水をストーブの上の石にかけるとスチームサウナを楽しめた。サウナ初心者の筆者は数分でオールアウト。すぐさま野呂川から引いた天然水のプールでクールダウン。これを数回重ねる熟練者の姿も。どちらかというと副交感神経に訴えかけるものだが水風呂=プールとの組わせで脚と頭はスッキリ。思いがけない親和性の高さは今後ブームとなるか!


結局、食事やアクティビティと広河原で2時間ほど時間を過ごした。他の自転車イベントでこんなに長時間留まることはまずないので、新たな体験だった。

帰りは、同じコースを戻る。路面の段差にビビりながら下っていたら、太いタイヤの自転車に抜かれまくっていつの間にか単独になってしまったが、無事ゴール。参加者には、地元名産の渋柿の一種で疲労回復にも効果があるという「あんぽ柿」などが振る舞われた。

自転車イベントというと、走ることに8割~9割ぐらい重点を置いたストイックなものも多いが、今回のように食事や他のアクティビティの楽しみにも5割ぐらいウェイトを割いたハイブリッド感は新鮮な楽しさがあった。正直、遠くから遠征して往復40kmって“物足りないかな”とも思っていたが、体験してみるとこれはこれでアリだなという気分になった。

趣味のジャンルを超えて楽しめる可能性

グラベルバイク、e-Bikeといった新しいジャンルの自転車で楽しめるフィールドを提供しているのも、大きなポイントだ。根っからのサイクリストにとっては走りがいのあるコースである一方、e-Bikeに乗ればサイクリングや運動に親しみがない人でも山岳コースを楽しんで走れるし、自転車にはあまり興味ないけど気軽にいろいろなアウトドアを楽しみたいという人にも魅力的なイベントとなれるポテンシャルを感じた。

やまなしスポーツエンジン事務局の渡辺一秀課長は「アクティビティに参加している方も笑顔が見られたので、喜んでいただけてよかった。(来年の開催に向けては)今日のオペレーションを踏まえて、人数などの規模感を決めたい。開催時期は紅葉もひとつのキーになるので、自然を楽しめる温暖な季節がいいと思っています。来年開催されれば全国の方に来ていただいて、宿泊して温泉や食事なども一緒に楽しんでもらいたい」と呼び掛けていた。

関連URL:南アルプス市 https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/
やまなしスポーツエンジン https://www.pref.yamanashi.jp/sports-sk/sportsenjiniinnkai.html

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