2016年01月30日
3モデル インプレッション VOL.8/GIANT TCR ADVANCED SL 1(スタンダードモデル)
GIANT / TCR ADVANCED SL 1
フルモデルチェンジを果たしたTCRアドバンスド SL。遠目からみると前作と大きな違いは感じ取れないが、カーボンレイアップからフレームの設計までまったくのニューモデルだ。特徴はフレーム剛性はそのままに、軽量化と快適性を向上させたこと。シートポスト一体型フレームながらも900g(Mサイズ)、数値にして12%の軽量化に成功。シンプルながらも秘めたる性能の新型TCRアドバンスドSLをインプレッションしてみよう。
TCR ADVANCED SL 1■フレーム:Advanced SL-Grade Composite VARIANT ISP■フォーク:Advanced SL-Grade Composite、Full Composite OverDrive 2 Column■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラDi2■ホイール:ジャイアント・SLR20■完成車実測重量: 6.7kg(ペダルなし)■カラー:ブラック×オレンジ■サイズ:680(XS)、710(S)、740(M)、770(ML)mm■価格:600,000円(シマノ・アルテグラDi2完成車、税抜)、300,000円(フレームセット※カラーは異なる、付属品:ライドセンス、OD2カーボンスペーサー、税抜)
剛性を保ちつつも軽量化に成功し、さらにライドクオリティを高めた“オプティマイズド チューブ シェイビング”ヘッドチューブ。
必要最小限の素材とデザインで構成したフロントフォークは機敏な動きを実現。
スムーズな配線のインターナルケーブルルーティング。
独自のステアリングコラムサイズのオーバードライブ2は継続している。
新設計のバリアント インテグレーテッド シートポストは、ディファイのDフューズの“快適性”と、これまでのTCR ベクターシートポストの“エアロ+剛性”を融合。
パワー伝達性能を高める事に注力したパワーコアBB。より丸みを帯びたデザインとなりよりタフになった。
ライドセンスというANT+&Bluetooth対応センサーをチェーンステーにあらかじめ搭載することで、シンプルな外観を保てる。
万人にオススメできる軽量バイク◆菊地武洋
コストパフォーマンス重視のバイク選びをする人にとって、ジャイアントほど魅力的なブランドは少ないだろう。なかでもTCRアドバンスドSLは抜群である。わずか60万円の完成車で、ここまで身のこなしの軽いモデルを他で探すのは至難の業だ。しっかりとした土台(フレーム)に、精度の高いパーツが積みあげる。このシンプルにして重要なテーマを高次元で両立させるには、残念なことに想像以上のコストがかかる。それ故、本来は『60万円もする!』が『わずか……』になってしまう。その代わりと言ってはなんだが、古くから言われる「持って軽いよりも、乗って軽い」を見事に実現している。精巧さは最高級モデルのSL0と比べれば見劣りするが、費用対効果で考えるなら、軍配はアドバンスドSL1に上げたい。コストの話を別にしても、SL1の実力は高級車のそれである。オリジナルタイヤには改良の余地があるものの、ホイールの性能が飛躍的に向上している。標準仕様で装着されるSLR0はリムまでジャイアントで作られるようになり、軽さとともに精度も向上している。本業のフレームでなくても、自社工場で造ると性能が向上する辺りが、今のジャイアントのレベルの高さを物語っている。レーサーとして求められる性能を高いレベルで満たしているので、トップレーサーでも不満に思うことはない。苦手なコースはないが、ペダルを踏んだ力があますことなく推進力に変わるヒルクライムでは輝きを増す。コントロール性もライダーに従順なので、初心者からベテランまでオススメできる1台だ。ジャイアントの3モデルの中では圧倒的にいいと思う。
こだわりのフレーム設計を貫くヒルクライムバイク◆小高雄人
ジャンアントの他2モデルと比べても、ダントツの登坂能力をもっているバイクだった。ダンシングでもシッティングでも高トルクで踏んでいくと、気持ちよく上りを駆け上がる。峠をガンガン走りたいヒルクライマーにおすすめしたい。とはいっても剛性が最適化されているので、ガシガシ踏んでもあまり脚にこなそうな感覚があったのも◎。フレームに対して、フォークがクイックな挙動を見せ、とてもレーシーに感じる。振動吸収性はけっして高くはないが、不満がつのるようなことはなかった。トップチューブがシートポストに近づくにつれ細くなっていくので、ぺダリング時にフレームに太ももが当たるストレスがない点も良かった。また、インテグラルシートポストを採用するフレームは年々数を減らしているが、TCRアドバンスドのトップレンジは一貫して同形状を貫く。ライダー自身のポジションが定まっていれば、シートポストとフレームの剛性がバランスが統一されていることが走っていて感じられる。
軽さが走りに大きく影響する◆山本健一
新型TCRアドバンスドSLは以前試乗する機会を台湾でいただくことができたが、そのときと一寸も変わらない印象だった……。プレスローンチともなると少なからずとも舞い上がってしまったり、期待値の加減もあったりする。……というと環境で印象が変わるのか? と思わせてしまうが、できるだけ冷静に務めようとしている努力はわかってほしいし、できるだけバイアスはかからないように務めている。だから、今回のように落ちついた環境で再び試乗するのが密かに楽しみであった。お膳立てされた台湾でのライドで感じた印象と同じく、非常に軽快で嫌いなヒルクライムが楽しく思えるバイク。まさに重量の軽さが走りの軽さに直結しているのだ。ホイールはトータル・パフォーマンスを考慮した自社製のカーボンホイールで、これもまた繊細な味付けの立役者である。足回りが運動性能に強く影響するのは周知だが、スペック上でもハイクラスなホイールであることがわかる。とはいえ、軽量バイクであるがゆえにやや腰高なイメージ。ステアリング性能は高く、コントロール性は高いといえるが、ハイスピード走行には慣れておきたいところ。とくにレースに出るために使うことを想定しているなら、訓練をしておくことでレース本番で肝を冷やすこともないはず。
(写真:和田やずか)
ジャイアントのお問い合わせ先:ジャイアント TEL:044-738-2200
http://www.giant.co.jp/giant16/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。